なんか、今年も頑張るみたい。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
年始は実家に帰り、これでもかとダラダラしていた。
食っちゃ寝してたので、ちゃんと量ってはいないけど体重は何キロか増えてるはず。
でも、関係ない。だって今日から仕事始め。
すぐに窶れ・・・・・・いや減るだろう。
新年一発目だからね、少し大がかりに行こうかな。
仕事部屋で書類を確認。
そして移動。
レベルは3。罪状は窃盗罪。罪人はこの年末年始の人混みを利用して何十回とスリを繰り返していた。他にも空き巣なども発覚、レベルは複合刑で引き上げられたもののレベル3か。
財布がなくなると困るよね。お金は勿論、カードとかも止めなきゃならないし、貯めてたポイントカードとかあったり、免許関係が入ってると本当に面倒。
多目的執行室に入る。
広い室内、その中央。
すでに罪人は椅子に座らされて手足を拘束、完全に固定されていた。
「お待たせ、今回君を担当する執行人だよ。さっそく始めようか」
食っては寝ていた僕だけど、さすがに起きてる時は暇だったからね。
色々工作してたのさ。
「君、随分お金が欲しかったんだね。それじゃあ、僕からお年玉をあげよう」
用意したのは、カーテンレールのようなもの、大きめの鉄球が6個、あとはネオジム磁石っての数個。
普通に鉄球を並べて、端をぶつけると一番逆側だけが動く。
この時、ぶつける側にネオジム磁石を挟むと、加速が一気に増す。
蓮華ちゃんに解説させるとすると。
「ガウス加速器ですね。あれは原理的にはですね、鉄球と磁石の質量を同じmと考えた時、衝突する入射弾の速度、飛び出す射出球の速度をそれぞれVaVbだとすると、反対した速度Vで、運動量保存の法則が成り立ち、そして位置エネルギー、運動エネルギーは、磁石に接触する時マイナスUa、その減少分が衝突直前の運動エネルギー二分の一mva二乗でうんたらかんたら・・・・・・」
なるほど、つまり磁石に対する位置エネルギーが鉄球の運動エネルギーに変換されるって事ってわけだ。
てことで、罪人の顔に向けてこの装置を取り付け始める。
ニュートンのゆりかご的なやつにしようかとも思ったけど、鉄球を天井からつり下げるのは大変そうだったし、中央に罪人の頭を置いたとしても結局力の伝わりは同じだからあんまり意味はないよね。今度5人同時執行とかあれば、足から吊してやってみてもいいね、あれなら法則的に成り立つはず。
「さ~て、行きますよっと」
レールに沿って鉄球が並べられ、端に磁石を置いてある。
終着は罪人の顔面、レールの先端を男の顎に固定する。
「そ~れ」
手前の鉄球を思いっきり押して転がす。
鉄球は勢い強く磁石に接触。
瞬間、逆側の鉄球が一気に加速。
その鉄球が男の顔に向かって。
「ふぎゃばああああっっっっっ」
衝突、鼻が潰れ、鼻血が飛び散った。
「新年早々、財布を奪われた人はたまったもんじゃないよ。出鼻を挫かれその一年暗い気持ちでスタートだよね。僕も親戚にさ、お年玉あげたけどね、その子はスマホを見ながらこっちも見ずに受け取って、あ、どうもってな感じさ、いやいや、例えばだよ、5千円稼ぐのにどれだけ大変か、バイトでもしてれば分かってるはずなのに、こちとら身を削ってだよ、眠いってのに、必死に働い・・・・・・あ、ごめん、関係ない話になっちゃった」
ま、こっちの罪人限定のお年玉ならいくらでもあげるよ。
「てことで、もう一回行こうか」
再び、鉄球を並べ直す。
「もう来ないでねぇ。あんまり手癖が悪いと、今度は指全部切り落としちゃうよ~」
鉄球を握る。
まるでボーリングの球でピンを狙うように。
力を込めてレールの上を転がす。
その力量は。
別の運動エネルギーに変わり。
高速で真っ直ぐ。
「ああああじゃああなあなっぁぁ」
男の顔へと。
執行を終え、自室に戻る途中。
殺菜ちゃんの部屋を通り過ぎようとした時。
「じゃあぁ」「あばぁ」「ばぁああぁ」
防音の部屋を飛び抜けて悲鳴が聞こえてきた。
そっと、扉を開けて中を覗くと。
〈殺菜活躍中〉
「いぇいっ!」
「あがやぁ!」
「いぇいっ!」
「がぁああっ!」
「いぇいっ!」
「どゃばっ!」
凄い、殺菜ちゃんの掛け声と罪人の悲鳴で、餅つきの掛け合いになってる。
「屑こらぁっ!」「あひゃあっ」
「ゴミこらぁ!」「やあぁあっ」
「糞こらぁあ」「びゃふぁっ」
うんうん、殺菜ちゃんも新年から飛ばしてるね。
これは見習って僕もお仕事頑張ろう。




