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なんか、一緒に作ったみたい。

 朝、仕事場についたばかりで少しボーっとしてると。

 突然、部屋のドアが激しく叩かれた。


 一瞬、びくっと体を跳ねさせて、扉を開けると。


「リョナッち、リョナッち、ついに完成したっす! さっそく今日使うっすよ!」


 息を切らせた殺菜ちゃんがいた。


「えっ! 例のあれ! おー、出来たんだっ!」


 朝の低いテンションが一気に上がった。

 

「リョナッちも仕事があるっすから、昼休みに合わせてこっちの執行をずらすっす! 見に来て下さいっす!」


「うん、わかったよっ!」


 そうかぁ、ついに仕上がったのか。あの装置。

 

 ここ数日、殺菜ちゃん仕事が終わってからコツコツ作ってたんだ。

 それを僕も手伝ってたの。


 どんな装置か。それは勿論、執行で使用するやつさ。


 

 そして、僕の昼休み。

 場所は拷問士共用多目的執行室。この広い室内にいるのは現在5人。


「もぐもぐ、ある程度準備は終わってるね」


 僕はパンを頬張りながら、隣の殺菜ちゃんに話しかける。


「そうっすね、あとはこの装置を設置するだけっす」


 あんパン片手に、もう片方で書類を確認。


「ふむもぐ、ふむもぐ、学生達による集団暴行か。対象は三人、レベルは全員4」


 サークルなどの飲み会で女子を酔わせて集団でわいせつ行為。それも余罪多数。 

この大学、なかなか有名な所じゃないか。相当頭がいいはず、入るのも大変そうなのに、それもこれで全部パーか。


 男達は各自、目隠しのみの全裸で床に打ち付けてあるポールに縛られている。両手を上に手足をがっちり固定。


「さて、さっそくこの殺菜スペシャルボリューム5を男達に向かい合うように設置するっす」


 少し距離を取って、テーブルの上に装置を取り付けた。


 殺菜スペシャルボリューム5。 

 自動リールとラジコンのプロポを掛け合わせて作った、ようは強力な巻き取り装置。

 ラジコンの送信機を使用する事で、細かい加減が可能に。

 

「お高いのなら色々細かい設定もできるんすけど、なんせ自腹なのでそこは工夫っす。ドラグも調整したので、いよいよ実戦す」


 いきなり使うわけではない、僕達は何度もシミュレーションを重ねてデータを取った。

作る途中も配線が逆で回転が変わったり、色々苦労はしたけどね。

 装置に繋げるのはバッテリーと・・・・・・。


「この糸を、竿に・・・・・・」


 装置から伸びる糸を、あ、そっちの竿なのね。

 これ本来マグロも釣り上げられるほどのポテンシャルを持ってる。

 あれはドジョウだけど。


 殺菜ちゃんは、〈あーだこーだした〉。


「都合良く返しがあるっす。これをキュッと締めて・・・・・・」


 殺菜スペシャルと男の一部が繋がった。

 今はだらんと垂れ下がっている糸が床を這う。


「な、なんだよ、何する気だ・・・・・・」


 目を塞がれた男には今の状況が判断できない。震える声でそう訪ねる。


「あ? お前は今から魚だ、人の言語を喋るな」


 プロポを持った殺菜ちゃんがそう言い放ち。

 静かに息を吸い込んだ。


「おらぁぁぁあああああああ、今から執行を始めんぞぉぉぉっ! 魚に置き換えるのも失礼なこの塵屑どもがぁぁぁっ! 泣き叫ぶ準備は出来てんのかっ、あぁぁぁ!?」


 装置とプロポ、そして自分自身にスイッチを入れる。

 殺菜ちゃんの声で男達の体が跳ねた。僕の全身にもビリビリと伝わる。

 これがレベルブレイカーすら凌駕する特級拷問士殺菜ちゃんの本来の姿。


 プロポのスロットルレバーを指で押し込む。

 すると、それに連動してリールが勢いよく回転。

 巻き上がる糸はすぐにピンと宙を張り。

 

〈お仕置き中〉


「あぎゃあああああああああああおおおおあおああ」


 同時に悲鳴、〈お仕置き中〉 


「ひぎゃああぁああああああああああああああああああ」


〈お仕置き中〉


引き裂くように。


〈お仕置き中〉


「ふっぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁっっ」


 室内に木霊する絶叫。


「ちっ、もう少し時間かけたかったが。まぁ、いい具合に(あれがあーなったから)良しとすっか」


 男の繋がれている床に赤い水滴が垂れる。


「次は(宇都宮の名物)だ。ここは特に痛ぇぞぉぉ」


(殺菜ちゃんあれをあーする)。


「そ~らぁぁぁぁあっ!」


〈殺菜ちゃんお仕置き中〉


「ぐふかあああああああああああああああぁあ」


(あれがあーなったっす)。


「おらおらおらおら、まだまだまだまだ、終わんねぇぞぉぉぉ! 次はどこだ、どこに引っかけようかっ!」


 〈殺菜ちゃん活躍中〉


「・・・・・・こいつはこんなもんか。ちっ、レベル4だからな、本当は首に巻き付けてぇけどよぉぉぉ、あぁ、糞がぁぁああああ」


 殺菜ちゃんは、怒りながら吊られた男をポールから解放する。

 拘束具が外され床に体が落ちる。まさに地面に打ち上げられた魚のように、男はほとんど動かずピクピクしていた。


「おらぁぁ、てめぇえっ! 次の執行の邪魔だからこっちこいやぁぁぁっ!」


 そう言い、殺菜ちゃんは手にした手鉤を男の口に突っこむと、フックの先端を頬に貫通させ引っ張り退かす。まさに海から引き上げる魚みたい。


 隅に退かすと、冷凍マグロのように恐怖と痛みで固まっている男の体を足で踏みつける。


「ああああああ、てめぇらはよぉぉ、リリースする事になってる、悔しい、おかしい、だけど法がそういうなら従うしかねぇっ! せっかくキャッチしたのにリリースだっ! せめて放流先で悪さできねぇほど頭に叩き込んでやるっ!」


 この子達は、勉強だけしてきて、大事な事を教わってこなかったんだね。

 ここまで磨いてきた宝石を、もっと輝き出すはずだったのに、自ら叩き割ったか。


「折角よぉぉ、一つに打ち込んで来たんだろうっ!? ならそれを武器にしろやっ! なんでも、なにか一つでも、一生懸命やってきたのなら、それは魅力になるんだっ! 人を惹きつけるんだっ! それなのにっ!」


 殺菜ちゃんが、男から離れる。


「だけど、もうなにもかもお終いだ。今のお前らは塵屑以下だわ」

  

 小さく、本当に小さな呟き。


「ちっ、おい、待たせたなぁぁあ、今度はお前らだぁぁ、同じだ、同じくらい苦しめ、痛みを知れ、私が教えてやる、お前らが受ける痛み、お前らがやった痛みをっ」


 殺菜ちゃんが次に移ったみたい。

 今回みたいなのってなんなんだろうね、受験などのストレスから解放された事でハメを外したのか。それともエリート意識が悪い方向に働いたのか。女性側も見極めが必要だね、危機管理を持って隙を見せないようにしなきゃ。

 もっと見ていたいけど、そろそろ休憩時間も終わる。

 僕は僕で、午後から執行がある。

 

 パンも美味しかったし。

 殺菜ちゃんは相変わらず凄かったし。


 よし、僕も頑張ろう。

 久しぶりの殺菜ちゃん執行。

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