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おや、態々出たというのに。(対殺人凶団、それぞれの急)

 こんにちは、蓮華です。

 国家認定犯罪者ハンターをやってます。

 さて、今回私の獲物・・・・・・いえターゲットは。

 

 殺人教団。これもちょっと違いますか、狂団、凶団ですかね。この子達は私の街で随分好き勝手暴れてくれました。

 これは、ちょっとお仕置きをしなければですね。

 

 なので、あぁ、面倒ですが、この部屋を出るとしましょう。





 死巣子よ。もう偽物のせいで無茶苦茶。

 一応ルマは意識を戻したけど、これは一旦治療が必要かも。

 とりあえず仕切り直しましょう。天使探しも1から。

この街で一番高いタワーの展望台に退避。

 今回は、全員爆破させてお終いよ。

 ここからならこの街を一望できる。

 同士はまだいっぱいいるし、あの天使もどきも後で必ず滅してあげる。


携帯を取り出す。

 一斉に指示を送る。同時にそこら中から爆発が。

 大混乱、大惨事。この街はもう戦場のように。

 ・・・・・・なるはずだったのだけど。


「・・・・・・あれ」


 どこからも音が聞こえない、どこからも煙が上がらない。どうして、なぜ。

 スマホを見る、確認すると圏外表示に。

 え、おかしい、この町のど真ん中で電波が通じてない?


 疑問を抱いていると、表示が急に切り替わり音が鳴り響く。

 着信、この携帯は指示を送るだけの一方通行、なのに。


「・・・・・・はい」


 わき起こる疑問の数々。警戒はしたけど、それを解消したいという思いが勝った。

 身構えながらも応じた電話の主は女だった。でもそれは聞き覚えもなく。


「あ、こんにちは、はじめましてですかね。私蓮華と申します。突然ですが、貴方の全てを乗っ取りましたので、ご報告までに」


 疑問は解消されるどころかさらに増える。


「・・・・・・どういう事かしら、乗っ取るとは、ちょっと意味がわからないわ」


 電話の主は微かに笑ったような気がした。


「えっと、死巣子さん。貴方は卑怯者です。自分の手は一切汚さず。貴方がこの日を選んだのも必然でしたね。この街で行われる学生による全国大会。絶対この参加者だと思ったんですよね。自分だけは疑われないように、例え掴まっても言い逃れできるように、色々淺知恵を働かせていたようですが全部無駄でしたねぇ。個人の情報さえ分かれば後は簡単です。貴方のその電話、立ち上げたサイト、なにもかももう私のです。私が貴方です。というわけで・・・・・・」


 今度は完全に笑っていると確信できた。


「貴方はもう抜け殻ですよ。私は抜け殻には興味はありません。だから、もうご自由にしてください。この街から去るのも良し、さらに抵抗を試みるも良し。ですが、もう遅いかもしれませんね」


 なに、なんなの、この女。私はうまくやってきた。慎重に、目的を完遂できるように、だからこの女の言ってる事は全部出鱈目に決まっている。


「貴方がトップだってのも分かりましたし、同士とやらも全て把握できたので、もう会う必要も無くなりました。今のうちに急いで街を出た方がいいです。あの二人から逃げられたら・・・・・・ですけど」


 一方的に話して、本当に、なんなの、この女。私に逃げろですって。

私はこの世界を清浄なる大地に、主に選ばれた、大いなる使命を、それをただの人間が、この私に。


「もう一度名前を聞かせてもらっていいかしら? この瞬間、私達殺人教団の次の救済者は貴方に決めたわ。いついかなる時も、いつ体が破裂するか分からない恐怖に怯えながら過ごせばいいわ」

 

 私がそういうと、女はまた笑った。これで何度目。それが見下されているようで、本当に癪に障る。


「次があるとは思えませんが、楽しみにしてますね。あ、でも私中々外にでませんけど、ふふふ。あぁ、名前でしたっけ、これも意味があるとは思えませんが・・・・・・」


 そういうと女は一呼吸おいた後。


「蓮華です。国家認定の犯罪者ハンター。周りの皆さんは口を揃えてこういうんですよ、深緑深層のマーダーマーダーって。では、またお会いできればいいですね」


 女は最後にそう残し、電話は切られた。その直後、表示はまた圏外に。


 私は思わず携帯を地面に叩き付けた。


「どうしたの、死巣子・・・・・・一体誰から・・・・・・」


 ルマも普段見ない私の態度に驚いてる。自分でもそうよ、こんなに怒りを覚えた事はないわ。私はつねに一番だった、なにをしても、なにをやらせても、それはそうだわ、だって私は選ばれた特別な、人間というカテゴリーのさらに上の存在で。


「ルマ、一旦戻るわ。蓮華と言ったわね。必ずよ、必ず、私の目の前で・・・・・・」


 その時、扉が開いたの。


「お、いたいた、やった。うくく、これは姉御に褒められる」


 一人の少女が私達の背後に。

 この子は確かさっきあの場所にいた子ね。その時は二人だったけど、今は一人。


「姉御言ってたのだ、こいつらは爆弾を巻き付けてないって、でも、殺しちゃ駄目だって、うくく、今はって・・・・・・」


なんて目かしら。これはさっきの天使もどきと・・・・・・。

 あれ、この子こそ・・・・・・もしかして。




 蓮華です。

 ふう、とりあえずこれで一段落ですね。

 私は、電話をしまい振り返りました。


「ありがとうございました。私一人ではここまで迅速に動けなかったでしょう」

 

 その場にいたのは、少年というには色気が漂い、少女というには精悍な。


「いえいえ、うちの者にも絡んだようでしたので、お互い様ですよ」


 会話の相手は、殺人鬼連合を統べるシストさんです。

 ちょっと、彼? に手を貸して頂きました。少々範囲が広くそれをカバーするには手が足りませんでしたので。正攻法では、人命優先とか言いながらグダグダになって余計に被害が増えたでしょう。


「これから妹の退院祝いなんですよ。盛大に行うつもりでしてね。良かったら蓮華さんもどうです?」


「ふふふ、お気持ちは嬉しいのですが、ご遠慮しておきます。多分、私が行ったら皆さんに殺されちゃいますからぁ」


「はは、そうですか。そうかもですね。残念ですが、まぁ機会があったらまたその内」


「ええ、次はどんな用件でお会いするか分かりませんけど」


 彼? は肩書きさえ違えばいい友人になれたでしょう。

 ですがこの現世ではそれは叶いそうもありません。



     ◇


 ほいほい、葵だよ。

 最後を締めるのはいつも私達なの。


 円ちゃんは見事に彼女達を捕らえてきた。私が最初に見逃したのはこれを見越して。

 蓮華ちゃんが動いたって分かったから、その時点で私達の仕事は一つだけになった。私は円ちゃんに色々教えなければならない。今回はいかに相手を見つけるか。どう動くか、どう考えるか、それを予想して欲しかったの。追い詰められたあの子達が何をして、その時どういう状況を作るか。


「姉御、ここは?」


 今日、円ちゃんを連れてきたのは。

 

「あの人が、とこの おさむさん。御年92歳だよ」 


 街から少しだけ外れた山の中。ここは蓮華ちゃんのテリトリー外。


「あぁ、なんだ、人形娘。お前が他の奴連れてくるなんて珍しいのう」


 一応、プレパブ小屋があって廃品工場の体をとってるの。

 廃棄処分の車やバイク、鉄や電化製品に囲まれてる。


「この子が前話してた円ちゃんだよぉ。その内ここに顔を出すようになると思うからよろしくね、ほら、円ちゃん、挨拶しなきゃ」


「あ、あ、切り裂き、円、なのだ、です。よろしくく」


 ぎこちなく頭を下げる円ちゃん。


「ふん、礼儀はちゃんと教えとくんだな。そんで、今日のはあれか?」


 理さんが目を移したのは。


 両手を縛られた少女達。


「うん、そうだよぉ」


 彼女達を歩かせる。台の近くへ。


 少し段差を上がり、大きな機械が小気味良い音を立てて可動していた。

 覗き込むと、いくつもの金属製の大きな太い刃が両サイドからきっちり噛み合いながら回転している。

 破砕機。太い金属の刃で、自転車、タイヤ、自動車でさえ、この中に入れれば巻き込まれてすぐにその姿は無くしてしまう。ま、ようは巨大なシュレッターみたいなものだね。


「何か言うことあるかな?」


 彼女達はもう抵抗する気配はない。ここに来る時も円ちゃんに素直に従っていた。


「言う事はありませんが、出来れば手だけでも縄を外してくれませんか?」


 何か企んでるのかな、とも思ったけどこの状況じゃ何もできないよね。

 だから、言われた通りにナイフで二人の縄を切ってあげたの。


「ありがとうございます。それじゃあ・・・・・・ルマ」

「ん、そうだね」


 すると二人は自由になった両手を相手の体に絡めていく。きつく、きつく。


「では、お好きに」


 祈るように膝をついて、お互い支え合いながら向き合い抱き合い。


「円ちゃん、仕上げだよ」

「ういうい」


 円ちゃんがその体を足で押す。

 二つで一つの体は転がるように、落ちていった。



        ◇

 


 混ざる。私達の体は一つに。

 肉と血と骨が。

 

 最後に本物の天使様に出会えた。

 ルマとも一つになれた。


 使命は全うできなかったけど。


 私はそれなりに満足よ。


 獣の牙が肉を裂き、骨を砕き、血を啜って。


 一緒に旅立つの。

 綺麗な世界へと。

 二人で。

  

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