なんか入れ替わったみたい(映画見た記念回)
初期の初期から大好きだった監督さまの映画見てきたので記念に。本編とは関係ありません。
本日珍しく二回更新。
ある日起きたら葵ちゃんになってたの。
なにもない白い部屋。辛うじて確認できるのは小さな冷蔵庫くらい。
僕はそこで目を覚ましてたの。左目が見えない。体中の違和感。
うまく体を動かせない。
この体は半分欠損してるんだ。僕が取り除いた。
これは夢か。そうだよね、よりによって葵ちゃんとは。
もう一回寝よう。次に起きたらこの悪夢も終わってるだろう。
◇
ある日起きたらリョナ子ちゃんになってたの。
理解は後回し、とりあえずベットから飛び上がって服を脱ぎはらう。
「きゃー、わぁー、すごい、慎ましいっ! わぁあああ、ツルツルーー」
体中を触りまくる。感触を楽しむ。骨ぼったいい、でもちゃんと柔らかいぃ。
「これは夢だね。極上の。よし、そうなれば覚めるまで散々楽しもう!」
お楽しみは夜だね。いっぱい道具を買い込んで。
うふふ、やばい、やばいんだよぉ。
私はしばらく全裸で部屋をうろうろしてたの。
◇
姉御―、姉御―。
声がする。目を開けたら見知った顔が見えた。
「ん、あれ、たしか、君は切り裂き円・・・・・・」
・・・・・・うわ。まだ覚めてないぞ。この夢。
姿は葵ちゃんのままだ。
「今日は、あれだ、映画見にいく約束だ、なのに、寝坊するなんて、姉御らしくないっ」
「・・・・・・もう一回寝たい。そしたら覚めるだろうか、この悪夢」
「なにいってる、早く、早く、いくのだっ!」
横でこう五月蝿いと三度寝はできそうにないね。
仕方ない、この夢付き合ってやろうじゃないの。
◇
ここが執行局かぁ。
罪人としては入ったけど、こうやって堂々を入り口から入れるのも凄いね。
折角拷問士というレアな職業体験できるならやっとかないとね。
鏡で色々見てたらもうお昼近くになっちゃった。
中に入ると、トートバックをかぶった女が近づいてきたの。
「ちょっと、リョナッち、まずいっすよ。めっちゃ遅刻してるじゃないっすか。しかも連絡もしないで。どうしたんすか、こんなの天城さんに見つかったら・・・・・・」
「ん、天城さんて誰かな?」
「なんすか、寝ぼけてるんすか? 筆頭特級拷問士の天城さんすよ。ただでさえリョナっちをよく思ってないのにっ」
「おおおお、これはこれは、随分重役出勤だな、あぁ? おら、言い訳してみろ」
「あぁ、まずいっす、待ち構えてたかのように天城さんがっ」
奥から取り巻き数人を引き連れた偉そうな人が来たの。
あれが天城さんかな。
「おい、天城さんが聞いてるんだ、早く答えろっ!」
「そうよ、やる気あんの、ないなら今すぐやめなさい」
「おい、どうした、言い訳しろや、どんな理由があろうが無断遅刻の理由にならねぇぞ」
あぁ、もう、折角いい気分なのに。五月蝿いなぁ。
「別にないよぉ。もしかして貴方達、リョナ子ちゃんにいつもこういう態度なのかなぁ? だとしたら・・・・・・」
じっと三人を見る。頭で考える、この人達をどうやって殺すか。
言葉には出さないけど、目で訴える。
私のイメージ、流れ込んでくれたかなぁ。
「・・・・・・う、お、おい、なんだ、その目は・・・・・・」
目が合ったのも一瞬、三人は即座に顔を逸らした。
「ちっ、ちゃんと局長に報告しておけ、次やったら知らんぞ・・・・・・」
天城さん達がそそくさとそう言って去って行ったの。
「・・・・・・むぅ、リョナッち、本当にリョナっちっすよね? なんか今日はこう禍々しいというか、まるで凶悪犯罪者みたいな・・・・・・よくわからないっすけど嫌な感じっす。私それ嫌いっす」
あれ、近くにいたのにこの子には通用してないね。むしろ嫌悪感から敵愾心を向け出した。 危険な香り。この子の前ではうまく演じないとやばそうだね。
◇
映画館に来たの。
平日だったけどそこそこいるね。
「なに見るんだっけ?」
「シン・バジラか、マウ・・・・・・ソロス・・・・・・霊廟に秘められた愛、どっちかだ」
「じゃあバジラにしよう」
「う、うん。私もそっちがいいのだ、あれ、でも姉御はマウなんちゃらの方がいいって言ってた、このマウなんちゃらってなんだ?」
「マウ・・・・・・? いや、知らないなぁ」
「え、姉御に質問したらすぐに答えが返ってくるぞ、どうしたんだ、知らないなんて、姉御がいうわけ、ない」
「え、そうなの?」
「この前も、時間依存ハートリー=フォック方程式ってのを教えてくれた。お陰であれだ、ばっちり理解したの、だっ」
「え、時間依存のなんだって?」
「時間依存ハートリー=フォック方程式、なのだっ、静的なハートレー・フォック方程式の解である複数の平均一体場の間を、時間依存性をもつユニタリ変換で結ぶことによって平均一体場の形状の時間変化を記述するやつだっ!」
なにスラスラ言ってんだ、この子。これは流すしかない。
「あっ! バジラそろそろ開場みたい、飲み物も買わなきゃだし、急ごうか」
「ん、そうか、なら急がなきゃだ、ポップコーンも買うの、だっ」
さすが葵ちゃんは物だけは知ってるなぁ。それよりもこの切り裂き円もなにげに凄いんじゃなかろうか。
◇
「罪人、入ります!」
「どうぞ~どうぞ~」
うふふ、執行だよ。レベル3とか言ってたね。
殺していいのかな?
「失礼するっす」
まず縦に裂いて中身をぶちまけようとしたんだけど。
さっきのトートバックをかぶった子が入ってきたの。
「なんか、今日のリョナッち、おかしいんすよね~。不安定な状態の執行は危ういので私がちょっと見てるっす」
「あ、そうなんだ。じゃあとりあえず、お腹の中身を取り出すよぉ」
「はぁ、なにする気っすかっ! レベル3すよ、死んじゃうっす!」
「え、駄目なの?」
「そんなのレベル6とかでもいきなりやらないっす! やっぱり今日のリョナっちおかしいっす!」
そう言うとトートバックの子が私の手から鉈を奪い取った。
「もう、今日は私がやるっす。ちょっと休んでてくださいっす」
あらら、折角いい機会だったのに。
トートバックの子が吊された男と向き合った。
次の瞬間。
私の全身がざわつく。
自分でも萎縮したのが分かった。
「おらぁぁっぁぁ!!! お前、ここに来た意味分かってんだろうなぁぁぁぁ!」
さっきまでとは雰囲気がまるで違う。激しい言動に驚いたのではない。
豹変したのは言葉以上に中身。
そうか、拷問士ってここで切り替わるのかぁ。
この子も特級なんだよね。
私や他の犯罪者よりつねに上にいなくてはならない、その覚悟や気迫は本物。
怖いねぇ。対岸側にはこんな子もいるのか。
◇
映画の帰り。
「あ、猫だっ! わー、やばい、可愛いっ」
小さい黒猫。捨て猫かな。いや首輪してるね。あぁ、尻尾がピンと立ってるぅ。
少し怯えてたけど僕が微笑むと、猫の方もこちらに寄ってきた。
「えっ、なんだ、いつもなら猫とか犬とかめっちゃ、姉御から逃げていくのに・・・・・・」
「あ~、可愛い。ソフィが一番だけど、この子も可愛いっ」
「ど、ど、ど、どうした姉御。そんな女子学生みたいな・・・・・・」
優しく撫でていると。
あれ、この子、よく見たら至る所に怪我が。
「あぁ、ごめんなさいね。うちの里美がご迷惑を・・・・・・」
いつの間にか背後に女が立っていた。
女は乱暴に猫を掴むと、籠に押し込む。
「ふふ、やっと見つけた。これは、ちゃんと教育しなきゃね・・・・・・」
女は一礼してその場を後にしようとする。
だけど、僕はそれを引き留める。
「ちょっと待って。その子、怪我してる、しかも放置されてるね」
直感だよ。この飼い主はおかしい。それに本当に可愛がってるならあんな扱いはしない。
「なに? 私は飼い主よ。これは私のものなの、なにか文句でも?」
「あるね、ペットというのは飼い主しだいで生き様が決まる。不幸になる子を見過ごせないな」
「なに、なんなの、貴方も私を責めるの、あの人のように、私を裏切った、だから、この猫にあの人を奪った、女の名をつけて、毎日、毎日・・・・・・ああ、貴方もなのね、貴方も・・・・・・」
女は急にカーターを取り出し、僕に向けた。
子猫についていた小さな傷の数々はもしかして。
「姉御、下がってるのだ、こんなの姉御がやるまでも、ない、のだ」
僕も相手も反応出来なかった。切り裂き円は素早い動きで、女の足を払う。
手を踏みつけカッターを蹴り上げる。
そして女の横にしゃがむと、指を一本握りしめ、そして力を込めて折り曲げる。
「あぎゃぁぁぁ」
「姉御に刃物を向けた。全部、折る、折ってやる」
また一本、また一本とへし折っていく。
「があぎゃっ、ひぃぃぃっ! いだいああい、やめ、やめぇえ」
「いやいや、ストップ、ストップ、やめやめっ」
「ん、なんで止める? いつもなら、もう充分だよ~なんていいつつ笑いながら反対の手の爪を剥がしはじめるのに」
「君らは鬼かっ!」
いや鬼だった。
「一応正当防衛ってことにしてあげる。この女はもう少し詳しく調べたほうが良さそうだね」
後日、女が猫に元旦那の浮気相手の名前をつけて虐待していたのが判明する。
この時の勘は正しかったって事だね。
◇
よし、玩具をいっぱい買ったよ。
うふふ、これ入るかなぁ。うふふふ。
あとは動画も残しておかなきゃ。
あぁ、今夜は寝れないよぉ。
◇
嫌な予感が凄い。
体がブルブル震える。
お願いします。次に起きるときはちゃんと元に戻っていますように。
帰るなりすぐに布団をかぶる。
そして。
目が覚めると。
朝日がカーテンから差し込み。
愛するソフィもすぐ近くにいる。
見知った部屋の中。
良かった悪夢は覚めたんだ。
がばりと起き上がると、なぜか僕は全裸で。
ベットの周りには色々器具が散乱していて。
床には三脚と共にビデオカメラが。
さーっと血の気が引いていく。
僕が葵ちゃんになってたなら、逆に僕の方が・・・・・・。
あわわわわわわわ。
落ち着くのに大分時間は掛かったけど。
その後恐る恐る確認した映像は・・・・・・。
「うふふふふ、すっごい、この突起、この太さ、うふふ、いくよ、いくよぉ。・・・・・・ん、あれ、なんだか急に眠気が・・・・・・これからいいと、こ、な、の、に・・・・・・」
裸で飛び跳ねてた僕、ていうか入れ替わってた葵ちゃんが急にベットに倒れた。
僕が眠り戻ろうとしたことがこっちにも作用したのか。
どうやら危機一髪だったみたいだね。
ちゃんと、あれも健在だ。
もし、後少し遅かったら、僕の体はあの変態殺人鬼に蹂躙されていただろう。
とりあえず、服を着たら。
あの馬鹿を。
このすっごい突起のついた太いもので。
思いっきり殴りにいこうと思ったの。
それにしても人多かったですね。嬉しい反面少し複雑。




