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あのね、迎えにいくの。。(対殺人鬼連合、葵の番外2)

 こんにちは、葵だよ。

 今、円ちゃんを迎えに敵の本拠地に来ているの。

 今は廃墟と化した地下鉄後。

 片手にはすでにナイフを、もう片手にはボストンバックを。


 私がついた時には数体の死体が転がってた。

 これは先客がいるって事だね。


 死体は(カリバさんの活躍によりえらい事に)

 こんな事をするのは一人しかいない。


 ヴィセライーターのカリバおば様しかね。


 多少想定外とはいえ、予定に変更はない。

 

 敵を知り己を知ればだよ。

 あっちの戦力は把握済み。

 私が殺した銃花って人についてきた特殊部隊ヘリオガバルスの数人。

 そして、リョナ子ちゃんの先輩が引き抜いた特級含む拷問士が数人。

 後は、最年少レベルブレイカーの白頭巾レッドドット。


 この中で面倒なのがヘリオガバルスの数名かな。

 後は、どうにでもなるよ。


 ここの死体は見た感じ拷問士っぽいね。

 肉体的に貧相。武器もいまいち。

 仲間の拷問士で特級は銃花って人と金糸雀だけ。

 一級や二級じゃ、カリバおば様とは対峙できない。

 あれとまともに目を合わせられるのは拷問士なら特級か、同じレベルの殺人鬼だけだよ。

 

薄暗い空洞。

 しばらく進んでいくと。

 どうやら、追いついちゃったみたい。


 また数人が倒れてる。

 その中心には。

 真っ黒な闇そのもの。


「・・・・・・あら?」


 血で赤く染まった二本の包丁を手に。

 彼女はこちらに気づいた。


「あら、あら、あら、あら、あら、あら、あら、あら、あらぁぁぁっぁ?!」


 目が合った瞬間、彼女は即座に私の前に走り寄った。

 顔と顔がくっつくくらいに近づける。

 細い糸目が、そして口も笑うようにゆっくり開いた。


「あらあらあらあらあらあらあらあら、これはこれは、奇遇ね、これは奇遇だわぁぁ」


 互いに凝視。この時点で相手は私を飲み込もうとしている。

 少しでも隙を見せたら噛みつかれる。


「いい? いいわよね? 食べていいかしら? どこからがいい? 生きたまま、腹を割いて、まず内臓を・・・・・・顔は最後ね・・・・・・天井を見ててね、ずっと、私が腹に顔を突っこんで臓物を・・・・・・クチャクチャと・・・・・・その間、貴方は天井だけを黙って見てるの、自分が食われてるという感覚の中・・・・・・」


「ねぇ、おば様」


「ん~~~~~~~~~? 何かしら、足先からがいいの? でも駄目よ、私が決めるの、コースの順番は、全部、全部、いままでもそうよ、その子、その子で一番いい部位が違うのよぉ」


 私はバックのチャックを開くと、床に投げ捨てたの。


 私の行動に一瞬警戒したおば様だったけど。


「取引だよぉ」


 バックの中から転がる西瓜みたいな丸い物。


 人の(うふふ)。


「・・・・・・どういう意味かしらぁ?」


 続けざまにスマホを取り出し、カリバおば様に画面を見せつける。


「・・・・・・・・・・・・っ」


 本当は違う目的でもってきたのだけどここで使っちゃおう。


「どう? 凄いでしょう。理想的な体だよ。綺麗だよね、息を飲むくらい・・・・・・」


 見せた画像は、銃花さんの死体。体の方だよ。(うふふ)はないけど。

 全裸で映るその体は、どこをとっても素晴らしい。これもう完成品だよね。私も手を入れる箇所が見当たらない。


「これの(うふふ)が、あれだよ。どっちもあげる」


「・・・・・・・・・・・・目的はなにかしらぁ?」


 極上の餌を見せつけられ、どうやら興味を示してくれたみたい。


「私は円ちゃんを連れて帰りたいの。邪魔をしないで、そして協力して。そっちも同じようなものだし別にいいよね?」


 このおば様にはかなり屈辱的な事しちゃったからね。ここで頷くかは微妙なライン。

 でも。


「もし断るなら・・・・・・」


 ありったけの。

 心の、体の、脳の、心臓の。

 絞るように出し尽くす。

 

「私の全てを出し切っておば様に抗うよぉ」

 

 睨むとも違う。恫喝や威嚇とも違う。ただ私というものを分かって貰うの。

 この先の未来を明確にイメージできるように。


 目だけは別に、いつもどおり微笑む。


「・・・・・・いいわぁ。ここで共倒れってのも馬鹿馬鹿しいものね。それに貴方は私をそう思わせるだけの材料を見せたわぁ」


 私に向いていた包丁の刃先が下がる。

 どうやら助かったみたい。

 ふふ、お互いだけど。


「ちなみに、この人達は?」


 これヘリオガバルスの隊員かな。本職とはいえ外に銃火器は持ち出せないはず。

 となると大型ナイフが関の山。


「さぁ? あっちの仲間でしょ? さっきいた人達よりは幾分ましだったくらいかしらぁ」


 特殊部隊といっても実戦経験は皆無。肉体的に優れていてもしょせん人だしね。

 刃物で簡単に血が噴き出す。

目の前にいきなり猛獣が現れたらどうすることもできないか。


「そっちも場所は把握してるのかなぁ?」


 私は勿論円ちゃんの位置は分かってる。私達は元々蓮華ちゃんの監視下にいるからね。どこにいようがすぐ見つかるの。ま、抜け道はあるけど。


「シストのお友達の場所はわかるわぁ。だからすぐに乗り込んだのだもの、逆に貴方はなにしてたの? 相手は拷問する事が目的よぉ、すぐにでも助けなきゃだわ、少しゆっくりしすぎじゃないかしらぁ」


 確かに本来一刻も争う事態だったよね。でも、元々の性格と後から蓮華ちゃんに教えてもらった情報で多少の余裕はできたの。


「まぁまぁ、その理由はすぐにわかるよぉ」


 足を進ませる。もうすぐだね。

 もう少しだけ待ってて。

 お姉ちゃん、すぐに行くから。



 奥へ、奥へと。


 入り組む通路を歩く。分かる、近づいてるのが。

 扉が見えた。

 あの中に。

 円ちゃんがいる。


 施錠はされてなかった。すんなり開いたのは地下で無茶させないためか。

 ここまでいくつもカメラはあったの。

 私達の存在はすでに知られている。


 開けた瞬間、扉の影から斧が振り下ろされる。


 金糸雀。特級拷問士で元殺人鬼。


 殺し屋なら別だけど。

 

 同じ殺人鬼が相手なら。

 

 そこでの勝負は、最初で決まる。


 瞳が交差する。金糸雀の蒼い目が私の目に飛び込んでくる。


 異常者同士での明確な差は。


 簡単な事。


 どっちがより異常か。


 それだけ。


 呑み込むか、呑み込まれるか


 振り抜く、ぶつかったのは視線とは別のもの。


 ナイフの刃先がスローモーションのように金糸雀の喉に入っていく。

 血が絡む。肌と肌が離れる。蒼い瞳の真ん中がだんだん大きく。


倒れたのは相手のほう。

 喉に手を置き狂ったように湧き出る血液を抑えている。


「ああ、あ、あ、はあ、は、は、は、は、は」


 短く言葉を出しながら、意志とは関係なしに体が暴れだす。


 状況把握。


 部屋には、椅子が横に四つ並べられており、それぞれに人が座っていた。


 左から、眼球アルバム、沙凶とかいう子、叶夜ことキラープリンス、そして円ちゃん。


 円ちゃんは意識がないまま、俯いている。

 眼球アルバムは、顔半分から血が流れていた。でも視線はこっちに目ははっきり開いているね。

 キラープリンスは逆に目を瞑って微動だにしていない。


そして中央、多分沙凶って子。

 多分なのは、(先輩の活躍による状態)。

 まるでミカンの皮を剥いたよう。

 

「あ・・・・・・あ・・・・・・あ、ああああああ、ああああ」


 その(元カリスマ特級拷問士の所業)。


 やったのは、勿論。

 椅子の後ろに立っているカリスマ拷問士。隣にはレッドドットもいるね。


「どうも、どうも~」


 軽く挨拶。


「動くな」


 先輩さんが円ちゃんの首元にメスみたいなのをあてがう。

 レッドドットは眼球アルバムに同様の行為。


「あ、それは意味ないよ。だって人質って生きてるから意味があるんだよ。殺しちゃったら貴方達も死ぬよ」 


「私は元特級拷問士だぞ? 殺さずに殺す術は心得ている」


 随分上から物をいうねぇ。

 でも全然分かってないなぁ。


「同じだよぉ、傷一つでもつけたら話合いの余地はなくなる。そしたら構わず殺すって言ってるの。そもそも殺人鬼相手にそんなの通用しないよぉ~」


 私がここに来た時点でもう貴方達の負けなんだよ。

 人材的にこっちはそちらを殺せる。

 そっちはこちらを殺せない。


「ゆっくり来たのは、ここを完全に抑えるためだよ。もう逃げ道はない。全てのルートは塞いだの」


 そしてそっちの優先順位。円ちゃんはすでにかなりのダメージを負っていた。

 相手の目的が拷問なら、円ちゃんをやるのは最後の最後。むしろ介抱すらしてくれるよ。

 となると、無傷な沙凶ちゃん、眼球アルバムが先。

 キラープリンスは年齢的な事や、レッドドットの前例から手は出さない。


 さっさと殺さないから。

 より絶望を与えようと欲張るから。


「条件を出すのはこっちの方だよ。負けを認めるならそこの白頭巾ちゃんだけは助けてあげる」

 

 元から考えていた。いつかは一人になる妹のために。


「ここで人質もろとも皆殺しになるか。円ちゃんを返して白頭巾ちゃんを助けるか、選びなよぉ~」


 先輩さんの活動は善から来ている。

 対して私達は悪意そのもの。


 正義が勝つなんてあり得ない。より残虐で異常な方が強いに決まってる。

 手段もルールも問わないこちらに、倫理や善意がある者がどうして勝ろうか。


〈お姉ちゃん、私がそう簡単にやられると思ってるの?〉

 

 と、いつもの白頭巾ちゃんならそんな軽口も叩くだろうね。

 でも、今はなにも喋れない。

 カリバおば様がじっと見てるから。

 イタズラをした子供を叱る大人のようにじっと、じーっと見つめている。


「ふ、私を殺せばリョナ子は悲しむぞ? いいのか?」


 つい想像してしまった。泣き叫ぶリョナ子ちゃんの顔。涙と鼻水を垂れ流し・・・・・・。

 うふふ、うふふふふ、それはそれで・・・・・・。


「・・・・・・先輩さんは元々失踪扱いだよ。死体さえ見つからなきゃ問題ないよぉ。この世から消えるなら同じ事」 


 先輩さんは、私が円ちゃんを必死に助けようとしてるとは思いもしない。

ただ、邪魔だから消しにきたとそう思ってるはず。

 だからこそ、今交渉はこちらが圧倒的に有利。

 殺人鬼を殺人鬼として見ているから。


「そうか・・・・・・では私の意志はリョナ子に託そう。私のやり残しはあいつがやってくれるだろう。なんせあいつは私が育て全てを受け継がせた最高の拷問士だからな」


「うふふ、元からそのつもりだよぉ。この体は、とっくにリョナ子ちゃんのものだもん」


 こうして先輩さんは円ちゃんの首から手を引いた。

 

「カリバおば様、その小さな殺人鬼を縛ってくれないかなぁ。あぁ、目隠しもね。この先はとてもこの子には見せられない・・・・・・R18指定だよぉ」


 殺人鬼だから、いいように利用して、子供だからって、そう心に言い聞かせながら、でも、これだけ一緒にいて。

 同じものを食べて、一緒に寝て、一緒に起きて、一緒に行動して。

 それなのに貴方のような人が、この子になんの感情も抱かないはずは、なかったね。


 本当に愛情というのは。


 私も人のことは言えないかもね。



 外はすっかりオレンジ色に染まり。


 川沿いを私は円ちゃんを背負って歩く。


 夕焼けが私達を包み込む。


「・・・・・・ん・・・・・・んん」


 お、どうやら目を覚ましたみたい。


「起きたかな、すぐに病院に連れて行ってあげるね」


 有り難いことに応急処置が施されてた。回復させて万全の状態で痛めつけようとしてたのが逆に幸いしたね。お互い血だらけの服じゃ目立つから人気のない場所を選んで大きな橋を目指す。他の妹達が待機している。


「ん、姉御? 私、はどうなった、あれ、たしか、バール女、九相図と・・・・・・」


「うふふ、今はいいからもう少し寝てなよぉ」


「・・・・・・う、ん、姉御の背中、血の匂いがする、なんか、落ち着く・・・・・・のだ」


 再び目を瞑りゆっくりと円ちゃんの寝息が首元にかかる。


 寝顔を見ながら。小さく呟く。


「・・・・・・ごめんね、もう離さないよ。ちゃんと見ててあげるね、もう少し、後少し・・・・・・最後の最後・・・・・・その日が来るまでは・・・・・・」


一緒にいようか。

 双月暦さまに素敵なイラスト書いていただきました!http://pixiv.me/coyomi_f

 pixivのサイト内で作品タイトルで検索しても出てきます!

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