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おや、大将戦ですね(対殺人鬼連合Ⅱ 其の五)

 こんにちは、蓮華です。


 ついに殺人鬼連合のリーダー、シスト君との大将戦。


 私達互いのリーダーはカフェで顔を見合わせておりました。

 頼んだコーヒーを一口、口に含みます。

 

 彼? が提示してきた勝負方法、それはオセロボードキラーの捕縛。

 このハイレベルブレイカー、一度は私が捕まえました。それをシスト君が逃したのですね。


 殺人鬼連合が勝てば、私達は今後一切あちらの行動に目を瞑る。

 私達、昆虫採集部が勝てば殺人鬼連合を無力化。

 そういう条件です。

 

「では、僕はこれで。先に捕まえた方が後ほど連絡するという事で・・・・・・」


 シストくんが伝票を手に取り立ち上がりました。

 それを、私は引き留めます。


「あ、ちょっと待って下さい」


 そういい、私はバックの中から数台のスマホやタブレットをテーブルに広げました。


「ん・・・・・・どうしました?」


 シストくんが私の行動に疑問符を投げかけます。


 その質問、もう少しで返しますね。


 数台の端末を同時に操作。

 それぞれ役割は違います。

 

問い合わせ、取引、根回し、回覧、収集、エトセトラ。


 1分ほどでその内の一台から連絡が。


「はい、蓮華です。あ、はい、ありがとうございます」


 短めの会話。

 そして。


「あ、シストくん、お待たせして申し訳ありませんでした」


 今持っていた通信機器をテーブルに戻します。


「見つけましたよ。オセロボードキラー」


 しばしの沈黙。


「・・・・・・え?」


 私は、固まったシスト君の手元から伝票を取り上げます。

 今の言動に珍しく動揺してるみたいでした。


「これから確保してきますね。ではまた」


 これ2回目なんですよ。

 私言いましたよね、一度捕まえた事があると。

 一度目より二度目が簡単なのは道理です。

 オセロボードキラーの事ならもうなんでも知ってます。

 その行動、癖、特徴、経歴のなにもかも。

 

 お店を出て体を伸ばします。


 さて、ここからが肝心です。


 あれほどの殺人鬼が狩り場に戻ったのです。

 抑制されていた欲望。

 目的も夢半ば。

 となれば彼も必死でしょう。うまく確保できればいいのですが。

 でもロックはかけました。

 

 この町は私です。


 私がこの町です。


この町にいるかぎり私の目からは逃げられません。



私としても適当に情報を集めたわけではありません。

 それとなく目星はつけました。


 シスト君が奴を解放したのは最近でしょう。

 なのに犯罪件数が劇的に増えてるわけではない。

 それどころか・・・・・・。

 逆にそれが当初抱いた違和感。


今の彼の目的は、ボードを完成させることです。途中で止められましたからね。

 最優先でしょう。

 となると、私なら解放されたとして派手には動きませんね。

 彼は死体が欲しいのではない、骨が欲しいのです。

 またすぐに捕まるような真似はしたくない。


 彼は素材自体に拘りはなかった。

 要は人であるなら誰でもいいのです。

 

 殺すのが容易く、失踪しても騒ぎにならない人達。

 というわけで私は大きな公園がある場所に足を向けました。

 

ここで私に緊急の通信が入ります。


 これは絶対とらないといけない。

 簡単にいえば、私の所属する機関、その統轄、国家保安委員からの直の通達です。

 対外諜報活動、国内の防諜、監視。十数の局から構成される主要総局。

 私達、昆虫採集部はその中の一つ。

 衛星、地上と共有なので、圏外でしたとか、寝てましたなんて言い訳が通じないんですね。


「はい、蓮華です」


 このタイミングでですか。

 嫌な予感しかしませんね。


「はい、了解しました。すぐに帰還、待機します」


 嫌な予感というのは当たるもので。

 

 早々に足止めをくらいましたか。 


上から押さえつけられちゃいました。

 一体どれだけの力を持っているのやら。


 部屋に戻れと。そこで指示があるまで待機と。

 そう命令が下りました。


 参りましたね。今の私には手足がない。

一応無事を確認しようとした蛇苺さんとも繋がらず。


この衛星端末自体が私の居場所を特定しています。

 他はともかく、これだけは確実に所持してなければですので。

 この場所からでは30分以内に真っ直ぐ戻らなければなりません。


 私の得た情報などもうすでにかすめ取られているでしょう。

 このまま、戻れば私の負けは決定です。

 でも戻らないと全ての権限を剥奪されかねません。


 う~ん、どうしましょう。

 友達がいないというのも困りものですね。

 こういう困った時に助けを求められない。


 いや・・・・・・。


 もしかしたら私にも友達と呼べる人がいたかも。


 その人なら私を助けてくれるかもしれない。


 どうせ勝てないなら、賭けにでますか。



 数時間後。


 私は殺人鬼連合と最初に対峙した場所に戻ってきました。

この時点では私の待機命令は解かれています。

 

 この数時間で私達の戦闘の形跡はなにもかも消えていて。

 私はしてませんから、シスト君側が手を回したのでしょう。


「あ、先ほどはどうも。おや、それどうしたのです?」


 先に来ていたシストくんが私を見て驚いていますね。

 数時間前とはすっかり印象が変わってしまいました。


「あ、お気になさらず。それはそうと連絡を頂いたということは・・・・・・」


 シストくんの隣には目隠しと手足を拘束され這いつくばってる男の姿が。

 まぎれもなく私が捕まえたオセロボートキラー、その人でした。


「ええ、捕まえました。貴方ならこの勝負、フェアじゃないとかそういう無粋な事は言わないと思いますが。僕の勝ちでよろしいでしょうか?」


 私の情報をそっくりそのまま流用したのでしょうから簡単だったでしょうね。

 先を越されたのは認めましょう。

 ですが。


「文句はありませんよ。どんな力だろうが、それを行使できるならそれは貴方の力です。でも、勝ちを宣言するのはいささか早計ではありませんかね」


 私は天を指刺しました。


 その先にはタワークレーンがいくつかあります。

 その一つ、クレーンの先になにかが絡まり吊されていました。


「ん、あれは?」


 目を細め空を見上げるシストくん。


「あれ、オセロボードキラーですよ」


 シストくんはさらに目を細めました。


「ん、どういう事です?」


「簡単な事です。オセロゲームは一人ではできないって事です。あれほどの殺人鬼、オセロボードキラーを捕まえたのに失踪や殺人件数は減るどころか増えてたんですね。その時点で、私は一つの仮説を立てていたのです。オセロボードキラーは二人いるのではないかと。彼の拠点からもその形跡はあった。そこで私は押収したボードや駒を餌にあぶり出したんです」


 彼らにとってどうしても取り戻したい物でしょう。

 本当は私の元にあるボードを、事前に片割れが隠したようにして情報操作。

 供述を元にしたという体で、彼らしか知り得ない情報や、共通の知識を利用、罠をかけます。 


「それが事実だとして、こうタイミングよく捕まえられますかね?」


「あはっ、別にいつでも捕まえられたって事ですよ。貴方達が最優先でしたので放置してたんです。彼らだけではない、すでに私の網に掛かってる犯罪者はいっぱいいるのです」


「それは不思議ですね。その間、犠牲者は増え続けるじゃないですか。それでも貴方は見て見ぬ振りをしていたと?」


「ええ、そうなりますね。それでも貴方や、眼球アルバム、九相図の殺人鬼、人食いカリバ、キラープリンス、この人達から目を離すほうがずっと危険です。私の体は一つですし、大事の前の小事なんですよ」  


「それなら他に頼むなりやらせればいいじゃないですか?」


「いやいや、なんで私が苦労して得た情報を開示しなければならないのですか。それに無能な方が担当してもし逃げられでもしたらまたやり直しですよ。私は自分が信用する人でないかぎり動かしません」


 まぁ、最小限の監視はしてましたがね。


「・・・・・・はは、やっぱり貴方も狂ってますね。あのカリスマ拷問士が貴方を捕縛対象にしたのも納得です」


む、失礼ですね。こんな善人なかなかいませんよ。


「・・・・・・引き分けですか」


 シストくんが残念そうに肩をすくめました。

 主犯格はあくまでそっちでしょうが、共犯は共犯です。


「ええ、でもこれでまた貴方達は暴れ続けるのでしょうね」


「そうですね、勿論です。大暴れでしょう。貴方はこんな僕達を止めてくれますか?」


「はい、必ず」


 お互い微笑みながら。

 この大将戦はこれで幕引きのようです。


 あとはドールコレクターの件も含めて後始末ですね。

 と、その前に。


 私はある人に電話をかけます。


「あ、私です。先ほどは助かりましたよ。本当にありがとうございました」


 待機命令を受けた私は、そのまま帰還せざるを得なかった。

 しかし、チャンスがあるとすれば数分だけ。

 私の帰還先にほど近い場所にいるであろう友人に助けを求めました。

 彼女は仕事中でしたが抜けだし私を助けてくれたのです。


 途中の女子トイレの中で待ち合わせ。

 端末を手渡し衣服を交換。私はエメラルド色の長い髪をナイフで切り裂き帽子に貼り付けると即席のウィックを完成させます。

私の特徴といえば、緑の髪と白いワンピースです。

 これさえ揃ってれば遠目の一瞬なら騙せます。

 後は、私の拠点を知ってる彼女にそそくさと入り口を通り戻ってもらいました。


執行を中断するなどこの先彼女にとって最大の汚点になる。

 それでも彼女は二つ返事で来てくれました。

 もう涙が出るほど嬉しかったですね。


 髪は相当短くなってしまいましたが、これからどんどん暑くなるでしょう、それにまたすぐに伸びるでしょう。


 

 心地よい風が吹き抜けます。

 されど、なびく髪はありません。

 雑ですが、一話で大将戦が終わるという。次は葵にバトンタッチです。

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