あのね、迎えにいくの。(対殺人鬼連合、葵の番外1)
こんにちは、葵だよ。
今、私は可愛い妹を迎えにいく所なの。
少し邪魔が入りそうだけど関係ないよね。
全部、殺すよ。
残らず殺す。
私の邪魔をするなら皆殺しだよぉ。
歩きながらスマホを取り出す。
同時に連絡。
一斉発信。
「あー、葵だよ。これから一人一人に指示を送るからよろしくねぇ」
葵シスターズの全員を動かすよ。
待ってて円ちゃん。
すぐにお姉ちゃんが助けてあげる。
さぁ、まずは誰にしよう。
やっぱり一番厄介なあの人かな。
二時間後。下拵えは済んだの。
私と対峙しているのは特級拷問士で特殊部隊だかなんだかの人。
あの蛇苺ちゃんとまともに戦える化け物だよ。
私なんか瞬殺されちゃうよね。
まともにやればだけど。
「おい、汐見は無事なのか。もし、傷の一つでもつけていたら・・・・・・」
銃花さんだっけ。ちゃんと一人で来たんだね。
それにしてもすごい殺気だね。
でも、ちょっと勘違いしてるみたい。
「言葉は選んだほうがいいよぉ」
私はスマホを取り出しスピーカーから音を出す。
「ザァァ、ザザアア、銃、花、せん、ザザ、先・・・・・・輩」
特定できないように色々細工してるから音が悪いねぇ。
でもちゃんと声は認識できるはずだよ。
「汐見っ!」
拷問士の情報は本来国家機密だけど私には関係ない。
だから油断してたんだ。情報が漏れるはずないって。
折角蓮華ちゃんの元にいるのに私がなにもしてないはずないよぉ。
特級なら直属の後輩はいるよね。
この受話器ごしの声がそうなの。
「とりあえず、武器は捨てて両手は頭に、そしてそこに這いつくばって」
「・・・・・・・・・・・・」
歯を食いしばったまま銃花さんは動かない。
あれ、なにしてるんだろ、この人。
「あ、ひーちゃん。まず耳切り取っていいよ」
「なっ!?」
私がそう指示すると、受話器からすぐに絶叫が聞こえた。
「イイイアアアアアアア、ザザァア、アアアアア、ザザ、ザザァァアザ」
悲鳴とノイズが混じり合う。
「次は片目を潰して」
「おいっ! やめろっ! 分かった、お前の指示に従うっ!」
「キャアアァア、イダガアアアァオ、ザザ、ヤメエエテェ」
「あ、遅かったみたいだよぉ」
もう。早く言うとおりにすればいいのに。
銃花さんは武器を地面に置き、私の言った通りに地面に伏せた。
それを確認した後、次の行動に移る。
「みんな出てきてぇ」
私が声を上げると奥から数人の男女が姿を現した。
いたって普通の人達だよ。
「(葵ちゃん無茶ぶり中)」
皆一様にビクビク体を震わせている。
「早くしてね。一番遅かった人はペナルティだよ」
私がそう言うと、皆が私の方に顔を向けた。
「あ、あの息子は、流也はっ、無事なんですかっ!?」
「一恵はっ! 娘はっ! 早く返してくれっ」
私は早くしてって言ったのに。
なんでみんなちゃんと言う事聞いてくれないのかな。
「・・・・・・急いで。じゃなきゃどんどん私の機嫌が悪くなるよぉ」
「・・・・・・うぅ」「あぁ・・・・・・」「な、なんでこんな事に・・・・・・」
この人達は即席の人形だよ。
目に入った子供連れを利用したの。
妹達を使ってもよかったんだけど、それだとどんな反撃がくるかわからない。
一般人なら銃花さんもうかつに攻撃できないよね。
「あああああ、ごめんなさいっ、やらなき流也が・・・・・・」
「仕方ないんだ、言う事聞かないと、娘が・・・・・・」
銃花さんはピクリとも動かない。
声を出す事もなかった。
〈一般人活躍中〉
「・・・・・・ぐっ」
銃花さんは黙ってひたすら耐えていた。
凄いね。あんなに(あーされても)声一つ出さない。
「足もお願いだよぉ。動けないように何度もね」
銃花さんを中心に血が地面にどんどん広がっていく。
そろそろいいかなぁ。
「うん、もう充分だよぉ」
私はここで初めて動いたの。勿論、周囲を把握すべく縦横無尽に視線を泳がす。
「じゃ、じゃあ、娘はっ」
「流也をっ、早くっ!」
あぁ、そうだったね。
「約束は守るよぉ」
そう言うと、〈葵ちゃん活躍中〉。
「えっ」「あっ」「んっ」
何をされたか認識する前に男達の体がどんどん傾いていく。
人質はちゃんと解放してあげる。
でも、貴方達を生かすとは言ってないもんね。
通報されると面倒だし、蓮華ちゃんにばれたら激怒するよ。
「さて、色々聞かせてもらおうかな」
私は銃花さんの背中に馬乗りになると、スマホを彼女の耳元に押しつける。
「ひーちゃん、その子の(うふふだよぉ)、できるだけ痛くね」
「くそぉ、貴様ぁあぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ」
銃花さんは穴だらけの体でも激しく抵抗を見せた。
「おお、まだこんなに力があるんだ。でも、いいのかな、そんな事して」
立場をわきまえて欲しいな。
今、この場を支配してるのは私なんだよ。
悲鳴を聞かせながら、質問していく。
よほどこの後輩が大切なのか、銃花さんは素直に教えてくれたよ。
ある程度聞き出せたかな。
じゃあ、もういいや。
「うん、大体わかったよぉ。ありがとう」
私はいうなり、銃花さんの髪を掴むを顔を引き上げる。
〈葵ちゃん活躍中〉
まずは一人。
立ち上がると、スマホを耳に近づける。
「あ、ひーちゃん、もうその子、殺しちゃっていいよぉ」
後は、今の情報を共有。
再び妹達に指示を与える。
どんどん行くよ。
今は使用されてない地下鉄の構内。
本来立ち入り禁止なんだけど。
ここを拠点にしてたんだね。
実は場所は最初から聞くまでもなく分かってたの。
でも相手の戦力を調べたかった。
あっちも私のように定時連絡はしてるかな。
そうなるともう異変には気づいてそう。
足を踏み入れる。
おや。
少し歩いて行くとホームだった場所に点々と人が倒れている。
血があちこちに飛び散ってるね。
近くに寄ってみるとそれは死体だった。
足で顔をめくり確認する。
頬が抉り取られてる。
他の遺体にも目を移すと、やはり所々欠損してるね。鼻とか耳とか。
「もしかして・・・・・・」
私と違っていきなり乗り込んだんだね。
相手側を調べずに。
あっちも仲間の居場所は分かるもんね。
猪突猛進、凄い自信だよ。
丁度良いね。これは利用させてもらおうかな。
これで少し楽ができそうだよ。
せいぜい殺し回ってね。
私に手も足も出ずに負けた。
ヴァセライーターのカリバさん。
3776メートル。多分なろう内でもっとも高い場所から更新した回です。




