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おや、やっとゆっくり話せそうです。(対殺人鬼連合Ⅱ 其の四)

 こんにちは、蓮華です。

 私は今、全力で走ってるんですねぇ。

 

 昆虫採集部と殺人鬼連合の戦いの中、リョナ子さんの先輩率いる第三勢力が介入してきたからです。

 なぜか私まで捕縛対象みたいでしたので逃げてきましたが、どういうつもりでしょう。


あの中で私が唯一まともな善人だというのに。


 なにぶん急な衝突でしたので、逃走ルートは確保していませんでしたが、ここら辺の地形は裏の裏まで把握しております。私が今通ってる道は先に逃げたドールコレクターと多分同じでしょう。


 狭い路地を、時に壁を飛び越え、時に隙間を潜りながら前へと進みます。


 すると少しだけ開けた場所に出ました。

 

 そこで目に入ってきたのは、先に円さんを背負って逃げていたドールコレクターの背中でした。

 やはり私と同じルートだったみたいです。

 それはそうと・・・・・・。


 地面には大量の血が。

 背負っていたはずの円さんが見当たりません。

 そしてドールコレクターの近くには壁にもたれ倒れている見覚えのない女性。

 ドールコレクターに目立った傷は見当たりません。逆にこの女性は血だらけですね。呼吸している様子がないのでもうすでに死んでいるようです。


 一体ここでなにが。


「・・・・・・これ、どうなってるんです?」


 私が声をかけると、ドールコレクターはゆっくりこちらに顔だけ振り返りました。


 

 ゾク・・・・・・。


 

いつも微笑んでる可愛らしい顔は微塵も見せず。

 全身が凍りつくような感覚。

 これは・・・・・・。


「・・・・・・円ちゃん。連れて行かれちゃった」


 小さく呟き。その目はどこか虚ろで。


 先輩さん側には別の仲間が複数いて待ち伏せされてたって事でしょうか。

 

「三人いてね。流石に円ちゃんを背負ったままじゃ無理だから降ろしたんだけど・・・・・・」


 一人がドールコレクターを足止めして、残りの二人が円さんを連れ去ったと。


「・・・・・・蓮華ちゃん、ごめん。私少し抜けるよぉ」


 〈葵ちゃん、お怒り行動中〉


「うふふ、早く向かえにいってあげなきゃ」


 一瞬の出来事で私は声も上げられませんでした。

 いや、私は彼女に恐怖を感じていたのかもしれません。

 なにかに押さえつけられているかのように動けない。

 これ、相当お怒りのご様子ですね。


「可愛い妹が待ってるはずだよぉ」

 

 もう相手は死んでいるのに手は止まりません。女の体をどんどん傷つけていきます。

 判別不可能なほど顔を切り刻めると漸くドールコレクターが立ち上がりました。

 そして再び背を見せます。


「・・・・・・一人で大丈夫なんですか?」


 愚問でしたが、一応聞いておきます。


「一人じゃなきゃ駄目だよぉ。蓮華ちゃんがいると調子がでないもん」


 でしょうね。ドールコレクターにとって私は鎖です。ついでに暴走しがちな円さんも彼女の足掛けでしょう。彼女は本来シングルプレイヤーですから。


「相手は殺人鬼や特殊な方々が混じり、実際どの位仲間がいるかわかりませんよ。勝算はあるんですか?」


「うふふ、それは向かいながら考えるよぉ」


 本来目を離すわけにはいかないのですが。

 私もこれ以上あちらの勢力には邪魔されたくありません。


 ・・・・・・仕方ない、解き放ちますか。


 この人ならずモノを。


「終わったら連絡ください。その時はこちらも終わってるでしょう」


「は~い。お互い頑張ろうね」


 血で染まったナイフを握りながら。

 ドールコレクターはそのまま奥に歩いていきます。

 闇が彼女を飲み込むように。


 しかし、彼女は自分のリスクになるなら、たとえ円さんでも簡単に切り捨てると思ってたのですが。

 どうやら、リョナ子さん同様、円さんもまた彼女の中で特別な存在になっていたのでしょう。


 さて、私は私の仕事をしますか。


 ドールコレクターを見て、私も少し血が騒ぎ出しました。


 

 数時間後、シストさんから私に連絡が来ました。

 ぜひ、お互い一人で会おうと。

 

 条件を飲むも飲まないも、私はもう一人です。


 それに彼? は理由はわかりませんがなんだか信用できる気がします。

 総合的に考えて相手の条件をのみますか。


 では、参りましょう。

昆虫採集部と殺人鬼連合の。

 一騎打ちの大将戦です。


 

待ち合わせは駅前のカフェでした。


 シストさんは言った通り一人のようで、先に席へ座っておりました。

 私は注意深く周りを伺いましたが仲間はいなそうですね。


ワンピースと合わせた白い日よけ帽子を脱ぎます。

 汗ばんだ頭がクーラーにさらされ気持ちが良い。


「あ、先ほどはどうも。お待たせしちゃいました?」


「いや、僕も今来た所なので、お気になさらず」


 簡単なあいさつを済ませ、私は対面に座ります。


「そちらは大丈夫だったので?」


「いやぁ、目黒さんと叶夜、そして沙凶ちゃんが連れていかれたみたいです。蛇苺さんはうまく逃げたみたいですよ」


「そうですか。こっちも円さんが捕まってしまいました。今、ドールコレクターが追ってますが・・・・・・」


「おや、それは少し問題かもですね。実は、うちもメンバー奪還に母さんが向かったんですよ。解毒が済むやいなや立ち上がって怒り狂い手がつけられない状態でした。なので殺しまくる対象を与えて少し頭を冷やしてもらおうと思ったのですが。本来の怒りの矛先はドールコレクターなので二人が鉢合わせしないことを願うしかありませんね」


「そうですねぇ~。あの二人が暴れだしたら私達じゃどうしようもありませんし」


 そんな感じで呑気に話合う私達ですが。


「ま、あちらは任せておいて大丈夫でしょう。それで私をここに呼んだということは、そういう事ですよね」


「ええ、勝負を決めるためにも大将戦をやりたいなと。そちらが勝ったら僕達はもう一切殺しをしない、自首してもいいです。逆にこっちが勝ったら今後一切僕達に関与しない、でどうでしょう?」


「・・・・・・まぁ、そうなりますかね。どうせ無理矢理捕まえても証拠不十分で釈放ですし。相当大きな後ろ盾もあるみたいですしね」


 レベルブレイカーを自由にできる時点で私と同等、もしくはそれ以上の力が作用してます。


「了承してくれて感謝いたします。では、さっそく勝負内容なのですが・・・・・・」


 シストくんの素性は分かりませんが、まさか殺し合うわけじゃありませんよね。そんなタイプではなさそうです。

 ここで注文していたコーヒーが運ばれました。


「以前、僕が執行局の一時拘留施設に閉じ込めれたのは知ってますよね? 実はあの時、一人のレベルブレイカーと交渉しました」


「ほう?」


「その相手は、オセロボードキラー。貴方ならよくご存じかと思いますが」


「・・・・・・・・・・・・ふむ」


 オセロボードキラー。オセロボードと同じマス目、六十四人の殺害を計画。実際半分の三十二人まで殺しました。犠牲者の体の一部を使って駒を作成。彼の部屋からはオセロのボードに乗せられた丸い骨が三十二枚。片方に色づけされたいたのは血液、時間がたって色は赤からどす黒く変色して、まるで本物のようでした。

 間違いなくドールコレクターや人食いカリバ並の異常者。


 よく知ってますよ。だって彼を捕まえたのは私なのですもの。

 

「僕はそのオセロボードキラーをですね。逃がしたんですよ。自由を与えました」

 

 動揺はしません。冷静に彼の顔を見つめます。

 私には脱獄したなんて情報は入ってませんよ。

 あんなのが逃げたと分かったら世間は大混乱でしょうね。だから必死に隠してるのでしょうか。関係各所の非難もすごい事になりそうです。


「・・・・・・その話が本当だとして、一体どうする気ですか?」


「そこで勝負なんですよ。先にこのオセロボードキラーを捕まえた方が勝ちでどうでしょう?」


 なるほど、そういう事ですか。

 ですが、そちらが圧倒的に有利だろうかと思うのですが。


「僕は逃がしはしましたが、その後は全く関わっていません。だから、彼が今どこでなにをしてるかは分かりませんよ」


「それを信じろと?」


 もし、匿ってたとしたらその時点で、私の負けです。

 

「ええ、これはもう信じてもらうしかありませんね」


 真っ直ぐ私を見つめる目、嘘をついてるようには思えませんが、確証はなんらありません。

 ですが、もしシスト君のいうとおり全く対等の勝負だとしたら。


「良いでしょう。受け入れます」


 逆にそちらに勝ち目はありませんよ。


 だって私は深緑深層のマーダーマーダー。


 国家認定の犯罪者キラーなんですから。


 次回はリョナ子の話にするか、もしくは殺戮のドールコレクター編のどちらかです。

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