なんか殺人ゲームみたい(本編とは無関係)
ネタが思いつかないのでお遊び回。この回の登場人物はみんな初対面です。
古い洋館。
今宵、この場には7人の少女が集められていた。
長いテーブルに座る少女達。蝋燭の光だけが室内を朧気に照らしている。
なんかよく分からないけど僕はここに呼び出された。
細かい経緯はこの際省こうと思う。
しばらくするとスピーカーから声が聞こえ始め。
〈皆様、この度は私の企画したゲームに参加くださりありがとうございます〉
なにかゲームをするみたいだね。
なんだろう。
〈早速ですが、貴方方7人の中に、殺人鬼が2人混じっております。殺人鬼は凶悪です。見つけ出さないと殺されるでしょう。そこで殺人鬼じゃない方は協力して殺人鬼を見つけ出してください。逆に殺人鬼の方はバレないように皆殺しにしてください、はい、以上です〉
うわ、とんでもない事をさらっと言い出したよ。
「まずは雑談タイムからです。この時間で殺人鬼だと思う人を一人決めて頂きます。話し合いが終わったら自分が殺人鬼だと思う人の名前を投票してください。そうですね、最初に自己紹介からお願いいたします」
ふむ、なるほどね。
話し合いで怪しい人物を探り、そして排除していけばいいのか。
対面や左右を見渡す。
ぱっと見、なんか変な人が多いかも。
自己紹介は端から順に行った。
「私は殺菜っていうっす。ま、言っときますが、私が殺人鬼ってのはありえないっすね。世の中で一番嫌いな単語っすわ」
制服姿で頭にはトートバックをかぶっている。左目の部分に穴が開いていて、そこから目が覗いていた。見た目的にかなり怪しい。言葉とは裏腹にこの子が殺人鬼なのかもしれない。
「私はドク枝よ。見たとおりエレガントでしょ。こんな私が殺人鬼なわけないわ。だってどんなに抑えてもこの高貴な雰囲気は漏れちゃうもの」
高飛車にそういう彼女は毒マスクをかぶっていた。高貴さは微塵も感じない。この人もかなり怪しい。毒マスクて。よくわからないけど、この人は別の意味でやばそうだね。そもそも少女でもなさそうだ。
「私は蛇苺。一応いっとくと殺人鬼ではないよー。似て非なるものさ」
兎のマスクをスッポリかぶってる。体の曲線がとても美しい。かなり鍛えてる感じ。でもこの人もなんか怪しい。兎のマスクて。
「わたしゃ、お千代ってもんだ。好きなものはラヴァプリだわさ。新シリーズのシャイニングもわたしゃ応援するよっ」
確実に少女じゃない人がいる。でも眼光はこの中で一番鋭い。伊達に長く生きてないね。ラヴァプリってなんだろう。
「わ、私は、あ、あれだ。切り裂き円っていう。特技は人殺しだっ。あ、今の嘘、嘘。えっとなんだ、あれだ編み物だった。ん、いや、違う、違うのだ、なんだ、その目は、私じゃない、ないぞっ」
まず一人。殺人鬼を見つけたみたい。名前からしてこの子だね。切り裂きって。眠そうな顔、ギザギザの歯。黒と赤のストライプカラーのゴスロリ少女は、言った後に顔を隠して手をブンブン振って否定していた。
「私は葵。よろしくだよぉ」
金髪で眼帯をしているゴスロリ少女その2。うん、この中では一番まともそうだね。ニコニコしていて好感も持てる。この子が一番殺人鬼の可能性が低いかも。
最後に僕の番だね。
「僕はリョナ子といいます。趣味は寝る事です。座右の銘は、明日できる事は明日やる、です」
参加者のほとんどが顔を隠しているけど、僕は素顔のまま。
こうして自己紹介は終わった。
はっきり言って全員から死臭が湧き出てる。でも殺人鬼は2人だけみたい。
早速ゲームが始まった。
「では、話合いからだね。まず殺人鬼だと思う人を指さしてみよう」
僕を含む全員が切り裂き円を指さした。
「はっ! なんだ、さっき違うっていったっ! 私じゃないぞっ! 違うっ!」
切り裂き円は汗をダラダラ流しながら必死に否定している。
「じゃあ、今まで何人殺したのかなぁ?」
「ん、あれだ、50人は軽くいってるはずだ。いや、違う、30人、いや、そうじゃない、0人、ホント、マヂマヂっ!」
よし、やっぱりこの子を指定しよう。まず間違いない。態々疑われるような言動をしてもこのゲームでは意味がない。
〈皆様、では殺人鬼だと思う方を紙に書いて投票してください〉
こうして最初の投票が終了。
〈決定いたしました。本日、殺人鬼をして追放される方は・・・・・・〉
本当はドキドキする所なんだけど、もう結果は分かりきっていた。
〈切り裂き円さんですっ〉
宣言された途端、円は座っていた椅子ごと開かれた床から落ちていった。凄い仕掛けだなぁ。
「くそっ、今度、顔を見たら、あれだ、絶対、殺してやぁぁぁぁっぁぁぁああ」
落ちながら切り裂き円はなんか言ってたけど最後聞こえなかった。
〈さて、では皆様、今夜は部屋にてお休みくださいませ。この場に殺人鬼がいた場合犠牲者がでます。しかし、実はこの中に1人、一般人、殺人鬼の他に殺し屋がおられます。殺し屋は自分からは人を殺しませんが、1人だけ殺人鬼の襲撃から守る事ができます。その方の気まぐれに期待いたしましょう〉
なんと、殺人鬼だけじゃなくて殺し屋までいるのか。そしてその人は自分の判断で一人だけ守ってくれるみたい。円は追放したけど、彼女が当たりでも殺人鬼はもう一人混じってるからね。円がもし殺人鬼じゃなかったら今夜の犠牲者は2人。いや、殺し屋が守ってくれてたとしたらそれも分からない。なかなか、奥が深いかも。
殺人鬼が襲撃にくるかも。そう思えば普通は寝れるわけがないんだけど、睡眠薬入りの飲み物か催眠ガスか分からないけど僕はその夜ぐっすり眠ってしまった。
そして次の日の朝。
また同じように席につく。
でも、昨日とは違って1人足りない。
〈皆様、おはようございます。残念ながら犠牲者が出てしまいました。ドク枝さんがそれはもう無残な姿で殺されておりました。シーツは真っ赤に染まり、内臓が引き出され、足と手が変な方向に曲げられていて・・・・・・〉
わお、なんて惨い殺され方をされたんだ。これはなんとしても殺人鬼を特定しなくては。
この時点ではまだ殺人鬼が何人いるか分からない。殺し屋が守った可能性もあるからね。でも、僕は切り裂き円は当たりだと思う。それを踏まえて次の話合いに臨もうと思う。
〈さて、話合いを始めてください。制限時間は5分です〉
さて、そうは言ってもなにから話合おう。
「うふふ、それじゃ私からの質問だよぉ。この中で殺し屋って誰かな?」
眼帯の葵ちゃんが始めに声を上げた。
一瞬、その場が止まる。
殺人鬼にとって殺し屋はかなり邪魔な存在だ。真っ先に排除したいはず。だが一般人としても消えてもらっては困る。
しかし、誰も名乗りでない。それはそうだね、だって名乗ったら殺人鬼に真っ先に狙われるもの。
「誰もいないねぇ。それはそうだよ。だって殺し屋は私だもん」
にこやかに。さりげなく彼女はカミングアウトした。
む、彼女が本当に殺し屋なら生かしておかないとならない。
でも、嘘をついてる可能性だってある。それだと本物の殺し屋はどうするだろう。
ここで本物が名乗りでたら葵ちゃんが殺人鬼だった場合まっさきに排除対象だ。だから言いたくても名乗り出ないだろう。逆にこれ殺人鬼にすれば。となると、あれ、もっと考えなきゃ。
「ちなみに昨晩は殺菜ちゃんを守ったよ。同じ人は連続で護衛できないみたいだから今夜は違う人かなぁ」
「ちょっと、待つっす。それ言ったら、私が殺人鬼に狙われるじゃないっすか」
「あら、ごめんだよぉ。それは思いもつかなかったよぉ」
「ちょっと、待ってよー。彼女が嘘ついてるって事もある。素直に信じるのもどうかなー」
蛇苺が異論を唱える。しかし、顔色一つ変えない彼女が嘘をついてるとはなんとなく思えない。指摘されても全く動揺する様子もないし。
「まぁ、こういうのはあれだよぉ。あんまり喋らない人が怪しいんだよねぇ」
葵ちゃんが最後にそう告げ、そのタイミングでブザーが鳴り響いた。
〈皆さん、時間になりました。本日の投票を始めます。殺人鬼と思う方の名前を書いて投票してください〉
あ、もう時間か。
短すぎてよく分からないなぁ。葵ちゃんは自分から殺し屋を名乗ったけど、本当か嘘か分からない。それでももし本物なら排除するには僕達一般人のリスクが高まる気がする。とりあえず他の人にしよう。
そうなると、誰にするか。そういえば葵ちゃん最後に喋らない人が怪しいとか言ってたね。
〈決定いたしました。本日、殺人鬼をして追放される方は・・・・・・〉
今回はちょっとドキドキするね。僕だったらどうしよう。
〈お千代様です〉
「はっ? わたしゃ違うぞっ、おいおい、助けて、シャイニングゥゥゥゥゥ」
お千代さんが床から落ちていく。なんだかんだで一番目が据わってた。気迫がこの場の誰よりもあったし、死臭がこの中で一番してたからね。少女でもなかったし。
〈さて、では今夜はお休みなさいませ。もし殺人鬼がまだ残っていたら無残に殺され永遠の眠りにつきますので〉
普通なら眠れないだろ。でもこの夜もなにかの作用でぐっすりだった。
そして翌日。
〈皆様、おはようございます。残念ながらまた犠牲者が出てしまいました。蛇苺さんがそれはもう無残な姿で殺されておりました。シーツは真っ赤に染まり、首は取れかけており、口には切り取られた臓器が・・・・・・〉
兎マスクの蛇苺さんが殺されてしまった。
ん、待てよ。普通なら守られてないはずの殺菜ちゃんが殺される可能性が高いはずでは。
それだと・・・・・・。
「あれ、私が殺されると思ったんすけどねぇ。なんでだろ、不思議っすね」
トートバックをかぶってるから表情がわからない。
「あれぇ。それはおかしいよぉ。私が殺人鬼なら無防備な殺菜ちゃんを狙うもん。でも殺されないって事はあれじゃないかなぁ」
そうだね。葵ちゃんがいう通り、殺されない理由は一つ。殺菜ちゃんが殺人鬼だった場合の事だ。
今、この場には僕を含めて3人。
「ちょっ、ちょっと待つっす。言いがかりっすよっ! 私は一般人すっ!」
「私は昨晩はリョナ子ちゃんを守ったんだよぉ。蛇苺ちゃんの方が狙われたのかあぁ」
「違うっすっ! 何言ってるんすかっ!」
ここで選択を誤ったら次に殺されるのは僕だ。
どうしよう。
〈時間になりました。投票をお願いいたします〉
トートバックをかぶってる制服の少女か。
眼帯の金髪少女か。この子はとにかくニコニコしていて可愛いぞい。
よし、見た目の怪しい方にしよう。
〈決定しました。選ばれたのは・・・・・・〉
僕だったりして。
〈殺菜さんです〉
名指しされ。その瞬間、殺菜ちゃんが椅子ごと床から落ちる。
「わ、私じゃないっすぅぅぅぅぅぅぅ」
こうしてこの場には2人だけが残った。
―――僕はまだ気づいていない―――
〈今夜で最後です。明日の朝を迎えた時点で2人とも生きていれば一般人の勝ち。もし誰か殺されたのであれば、殺人鬼の勝ちです〉
ふむふむ。葵ちゃんが殺人鬼だったら僕は殺され、生き残れば葵ちゃんはいう通り殺し屋だって事だね。
―――蛇苺さんが殺された時点で気づくべきだったんだ―――
「うふふ、大丈夫だよぉ。私は殺人鬼じゃないから。今夜はゆっくり眠ってね」
「うん、僕も殺人鬼じゃないよ。だから、明日はお互いおはようって言えるね」
今夜はちゃんと眠れそうだね。
なにはともあれ生き残って良かったよ。
その夜。僕の部屋に近づく人影が。
コツリ、コツリと足音。
でも僕はすっかり寝込んでいてそれが耳にはいる事はなかったの。
次はちゃんと拷問します。。




