おや、これがプロでしょうか。(対殺人鬼連合Ⅱ 其の二)
殺し屋集団ハイレンズ。
そのボス、蛇苺さん。
以前、ある案件でドールコレクターと激しくぶつかった殺し屋です。
その時は、双方かなりの被害を出しました。
ドールコレクターは妹達を、蛇苺は幹部達を。
一線級の殺人鬼達を瞬殺するそのたしかな技量。
ドールコレクターと張り合う知能も持ち合わせ。
敵になればこれほど厄介な人はそうはいません。
ですが。
今はその彼女の雇い主が私なのです。
シストさんが南米から態々こちらに呼んだという双子の殺し屋、ヘルナンデス姉妹。
おそらく、蛇苺さんの対抗馬として用意したのでしょう。
ですが。
それはあまりにも・・・・・・。
「うほ~い、蛇苺さんの登場だよ~、で、どれ殺せばいいの?」
私の後ろから無音で現れたのは蛇苺さん本人。
兎の仮面をかぶった女性。
黒いタンクトップとショートパンツから見せる素肌はとてもしなやかで。
鍛え上げられた身体がギュッと内包されております。
「あ、お疲れ様です。えっと、あの褐色の双子をお願いします。あれを処分して頂ければと。できれば、楽には殺らないで欲しいのですが・・・・・・」
私がそう告げると、蛇苺さんが親指を立てました。
「オーケー、オーケー。じゃあさくっと終わらせますか」
蛇苺さんがゆっくり中央に歩いていきます。
その間、ドールコレクターは円さんを、シストさん側がカリバさんとタシイさんを回収。
それに伴い、ヘルナンデス姉妹も中央へ。
「ナンダ、マズオマエカ」
「オマエ、ドウギョウカ?」
知名度でいえば自分達の方が圧倒的に上。
ただでさえ2対1。
姉妹に過信があったとしてもおかしくありません。
それが一瞬の油断を生んだのでしょう。
それを見逃す蛇苺さんではありませんでした。
あっという間とはこういう事です。
短く息を吐き。
刹那、蛇苺さんの太股に血管が浮かび上がります。
筋肉が凝縮、それは凄まじい瞬発力を。
「ア?」
「ン?」
ナイフだったのか。銃だったのか。
それは今になれば分かりません。
ヘルナンデス姉妹が武器を取り出そうとした時には、すでに蛇苺さんが目の前にいました。
「イガッ!?」
「フガッ!?」
蛇苺さんが飛びながら二人の首に腕をかけます。
なんて説明すればいいでしょう。ライアットを空中でやるような感じです。
走り幅跳びをするようなフォームで、自分の腕を相手の首に巻き付けて、そのまま自分も地面に滑り落ちる。相手を地面に背中から叩き付けながら。
確か、あぁ、そうです、ネックブリーカードロップ、そんな技名でしたね。
「ガガガアッ」
「フガアガア」
思いっきり背中から落とされ、双子の姉妹は数秒、呼吸が止まります。
蛇苺さんは倒れながらもすぐにその場で宙返りをし立ち上がり。
片足をギュルリと回転、苦しむ双子の顔を見下ろします。
そして。
自身の上半身にくっつくほど、足を天高く振り上げました。
後は、それを顔面目掛けて、落とす。
かかとが顔にめり込み、鉄でも叩いたような音がその場に広がります。
今度は逆の足を同じようにほぼ90度立てると。
同じように、もう片方にも、落とす。同様の音がまた周囲に響きました。
「はい、お終い」
蛇苺さんは両手をパンパンと叩いて埃を落としながらそう言いました。
1分も経ってないのではないでしょうか。
南米から呼び寄せた双子の殺し屋は、もうどちらも白目を剥いています。
これにはここにいた全員が目を見開いてあっけに取られていました。
その視線に気づいたのか。
蛇苺さんは両手を大きく開きます。
「これが君達のようなお遊びで人を殺す欠陥品では真似できない芸当だよ。これ、見てよ。このお腹、腕、足。どうだい、ここまでするのにどれだけの時間と努力があった事か」
指をさすお腹は6つに割れ、無駄な脂肪が一切ない、芸術品のような身体。
「血反吐を吐きながら、毎日毎日毎日毎日、欠かさず自分を鍛え磨く。それは何故か? 答えは簡単、死なないためだよ」
蛇苺さんはプロとしてかなりの自覚と自信を持っておられるのでしょう。
だから、殺人鬼というものをかなり毛嫌いしております。
「弱い者を殺すだけの、ただ狩る事しか頭にない欠陥品共には理解できないかな。あれだよ、よく崖から落ちそうな人を腕一本で掴んで間髪助ける、そんな場面を映画や漫画で見るよね。腕の力だけで人一人の体重を引っ張りあげる。これ君達にはできないよ。両方落ちるのが関の山。でも、私ならできる。この身体ならね」
誰も反論しませんね。私もそう思います。私のこの細腕では無理でしょう。
「君達が死ぬ場面でも、私なら生き残る。極限まで可能性を高める。これが私とあんた達の覚悟の違いだ。この双子の殺し屋は努力が全く足りなかった。だから、私にやられた。私以上に努力していれば死なずにすんだんだ」
天才は努力の上で作られる、ですか。
確かになんのプロでも人一倍うちこむ時間が違いますものね。
「おっと、そういえばできるだけ苦しめろって依頼だったっけ」
蛇苺さんは語り終えると、倒れている双子の足を掴んで持ち上げました。
片手で一人ずつ。それを奥へと運んで行きます。
隅には工事に使う予定の細い鉄パイプが大量に積み上げられておりました。
蛇苺さんは、二人を降ろすと、その長い鉄パイプを引き抜きます。
あれだけでも結構な重量でしょうが、軽々それを掴むと。
「う~ん、上からか。はたまた下からか。二人いるからどっちもやろう」
短い思考、すぐに結論を出した蛇苺さんは、その鉄パイプを。
ヘルナンデス姉妹の片割れの■■■に差し込みました。
「ああがあががががががっさあがはっ、があがっ」
喉よりさらに奥、ある程度進入させた所で、蛇苺さんがその体ごと鉄パイプを持ち上げます。
勿論、片手でです。
さすがの痛みと違和感で意識を取り戻した女は空中で藻掻き出します。
串刺しにされながら必死に逃れようとしますが、その度にどんどん体重の重みで食いこんでいくという逆効果。
口からどんどん■が■れ出し、鉄パイプを伝っていきます。
「じゃあ、今度こっち、と。あ、どうしよう。下はどこからにしよう。前か後ろか」
またも短い思考。こちらもすぐに結論。
蛇苺さんは相手のスカートを引き裂くと、露わになった■■■に。
同じように鉄パイプを■し■みました。
そして持ち上げる。
「ひぎゃあぁぁぁっぁぁぁぁぁあああああああ」
こちらも意識を無理矢理戻され、ですが為す術も無く。
鮎の塩焼き、一瞬そんなイメージが頭を過ぎり。
■き■さったパイプからは、片割れと同様に血がどんどん下へ流れ出ていきます。
「じゃあ、これを並べて立てかけとくよ。しばらくは死なないと思う」
フェンスに綺麗に飾られる双子の姉妹。
体をうねうね悶えさせ、絶叫を上げながら、されど体はゆっくり地面に向かって落ちていく。
普通の人なら思わず目を背ける場面ですが。
さすがにこの場にいる皆さんは誰一人目を離さずこの光景に見入っていました。
「うわぁ、惚れ惚れするねぇ」
「すごっ、ああ、やばい、最高」
「あ、あ、あれ痛そう、ああ凄く痛そう、ああ溜まんない」
「いいね、いいもの見れたよ、目に焼き付けておこう」
誰が誰だかわかりませんが、狂った皆さんは蛇苺さんの行為に全員賞賛の声を上げております。
「今度こそ終わりかな。後は帰っていいかな?」
「あ、はい。ありがとうございました。報酬はまとめて振り込んでおきますね」
何はともあれ。
殺し屋集団ハイレンズ、そのボス蛇苺さん 対 南米の殺し屋ヘルナンデス姉妹の殺し屋対決は。
蛇苺さんの圧勝です。
次はいよいよ。
「ああああ、もうグチャグチャ、もう着替えなきゃ汚れちゃうよ。あんなの見せられたらもう、滾るんだよーーー」
興奮して前に出てきたのは眼球アルバムの目黒さんです。
「うんうん、分かるよぉ。私も土砂降りだもん」
同調するようにドールコレクターも前に。
最狂の殺人鬼ドールコレクター 対 眼球狂いの眼球アルバムさんですか。
互いに人体収集の殺人鬼達です。
「ほらほらほらほらぁ、私達もさ~、遊ぼうよ~、ねぇ、ドールコレクターのアオイィちゃあああん」
眼球アルバムは千枚通りを両手に持ち、それを打ち付け音を立てながら近づいてきます。
「ん~、遊んでもいいけど、この体はリョナ子ちゃん以外触らせたくないからやっぱり拒否するよぉ」
眼球アルバムの誘いに、ドールコレクターはにっこり微笑むと。
「ねぇねぇ、蛇苺ちゃん待って。私もお金払うから、この子倒してくれないかなぁ?」
この場を去ろうとする蛇苺さんに声をかけました。
「ん? 私の依頼主は昆虫採集部だよ。トラブルになるから個人もしくは一団体ずつでしか依頼は受けないの」
「大丈夫、私も昆虫採集部所属だよぉ」
そういうとドールコレクターはカードを蛇苺さんに投げつけました。
「これ、全部使っていいから、お願いね。少なくとも8桁は入ってるよ」
蛇苺さんがこの日3度目の短い思考をした後。
こちらに向き直りました。
「ま、いいか。ついでだし」
おっと、対戦カードが変わったみたいですね。
さすがドールコレクター。キングオブ卑怯者です。絶対自分が不利になるような行動は取りません。
「はぁぁぁっぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ?????」
やる気満々だった眼球アルバムがそう声を上げたのも仕方がありませんね。
急遽対戦が変更になりました。
殺し屋集団ハイレンズのボス蛇苺さん 対 眼球狂いの眼球アルバム。
蛇苺さんは連戦ですが。
ま、問題ないでしょう。
次はリョナ子サイド。




