あのね、復讐するみたい。(前編)
殺人鬼狩りのちょっと前のお話。
私を殺人鬼にしてください。
ある日の事。私と円ちゃんの前に1人の少女が現れたの。
コンビニでアイスを買って、食べながら家路に帰る最中だった。
私達の行く手を塞ぐように前に立った女の子。
「ん~? 君、誰かなぁ」
「なんだ、なんだ、お前っ」
中学生くらいかな。見た感じ私達よりは少し歳下だね。
「私、莉子っていいます。ドールコレクターと切り裂き円さんとお見受けしましたっ! どうかお願いしますっ!」
私達の素性を知っている。だけど、それ自体は別段おかしな事ではないの。
目線は入ってたけど、週刊誌やネットでは私達の顔写真はすでに出回ってたんだよ。
「ふ~ん、それで莉子ちゃんはなんで殺人鬼になろうと思ったのかな?」
敵でもなさそうだね、でももう少し探ってみようかな。
「はいっ! 私、復讐がしたくてっ、だから、だからどうか、お願いしますっ!」
何度も頭を下げる莉子ちゃん。
復讐ねぇ。それ殺人鬼になる必要あるのかなぁ。
「復讐したいなら、知り合いの殺し屋を紹介するよぉ。お金は一生かければ払えるんじゃないかな、やる気があればだけど」
「いえっ! それじゃ駄目ですっ! 私の手で直接殺してやりたいんですっ! 私が・・・・・・やらなきゃ。お兄ちゃんの・・・・・・仇を、私が・・・・・・」
しっかり合わせてきた瞳には涙が浮かんで。・・・・・・どうやら本気みたいだね。
「殺人鬼って頭おかしくないとなれないよ、莉子ちゃんはまともそうだし無理じゃないかな」
私達が殺人鬼ってわかってて声をかけてきた勇気は認めるけど、生まれつき部品が何個も外れてなきゃだし、先天的なものが重要だよ。じゃなきゃ殺人鬼もどきになるだけ。
「大丈夫ですっ! おかしくなりますっ! 狂いますっ! だから、お願いしますっ! ドールコレクター師匠っ! 切り裂き円師匠っ!」
師匠って。別になにも教えられる事なんてないんだけどなぁ。
「・・・・・・円、師匠。うく、師匠、うくく、師匠」
そう思ってたら隣の円ちゃんがうすら笑いしてる、なんか気持ち悪い。
「姉御、姉御、いいんじゃないか? 弟子にしてやろう、あれだ、もしかして使えるように、なるかもだっ」
う~ん。うまくいったら私達の手伝いが出来るってことかな。でも私のシスターズは適当に選んでるわけじゃないしねぇ。
少女はずっと頭を下げっぱなし。私達の返事を待っている。
たしかに決意だけは伝わる。
この手は断っても何度も来そうだよね。
となると。
「わかったよぉ。でも、別になにも師事はできないけどね」
私が了承すると、莉子ちゃんは大いに喜んだ。破顔させ飛び上がっている。
「ホントですかっ!? ありがとうございますっ! 教えてもらわなくても大丈夫ですっ、目で見て盗みますからっ! 師匠、よろしくお願いしますっ!」
そこで私は隣の円ちゃんの肩を叩いた。
「じゃあ頑張ってね。円師匠」
私はこんな面倒な事ごめんだよぉ。
円ちゃんは満更じゃなさそうだし、丸投げする事にするね。
「お、おー、任せろっ、こいつは、私があれだ、立派な奴にしてやるの、だ」
円ちゃんは胸をはって大いにやる気を見せた。
「はいっ、円師匠お願いしますっ!」
「円、師匠、うく、師匠、うくく、よし、ついてこいっ! くるのだっ」
さてさて、どうなる事やら。私はもうここからは知らないよ。
私は帰ってゲームでもしようかな。
二人ともがんばだよっ
それから一週間後。
円ちゃんと莉子ちゃんはなにか色々やってたみたい。
知らないとは言ったものの。一応私なりにざっと調べてみたんだよ。莉子ちゃんが完全に白かもわからなかったしね。
するとこんな感じだった。
莉子ちゃんには歳の離れた兄がいた。
少し前に白昼の路上で殺傷事件があったんだけどその犠牲者だね。
肩がぶつかっただかなんだかと三人の男達に因縁をつけられそのままナイフで切りつけられた。そしてその数時間後搬入された病院で死亡。隣には莉子ちゃんがいて、その目の前で起きた惨劇。歩道にはおびただしい血の跡が残っていた。
三人は俗に言う愚連隊みたいなのに所属していたみたい。
すでに拷問士によって三人は執行済み。十八歳以下って事で全員レベル4。
今はもう自由の身。
それじゃ気が済まないんだね。
自分の兄は死んだのに、相手はのうのうと生きてる。それが許せない。
莉子ちゃんの標的はこの三人か。
果たして円ちゃん達は無事復讐を果たせるのかな。
このグループ、窃盗、暴行、振り込み詐欺、クレカ偽造、なんでもやってるね。
組織じゃないから実態が不透明。メンバー自体も何人いるのか。
円ちゃん達はどうやって探すつもりだろう。
「姉御ー。復讐相手ってどうやって見つける? 見つければいい?」
久しぶりに会った円ちゃんからいきなりそんな事を聞かれたの。
え、この二週間くらい何やってたんだよぉ。
「・・・・・・莉子ちゃんから特徴とか聞いてないの? 顔見たんでしょ?」
「う、う~ん。なんかショックでよく覚えてないって。あ、ただ、あれだ、みんな腕に骸骨の刺青があったっていってたぞ」
「全員が入れてたなら、それがそのグループを象徴するなにかだよ。それだけ分かってるなら、あそこに聞きなよ」
「ん、あそこってなんだ」
こういうとき便利な所があるじゃない。私じゃなくて最初からそこに聞けばすぐなのに。
教えてあげたいけど、この件に私はできるだけ口を挟みたくない。
私が了承したのはこれを期に円ちゃんが成長してくれると期待したからだよ。
ずっと一緒にいられるわけじゃないからね。私がいなくなってもちゃんと一人でできるように。今回は影で見守るよ。
「それくらい自分で考えてね。私はTUTOYAの会員更新してこなきゃだからいくよぉ」
「え~、姉御、困る、どうすればいい、教えて、そんな会員更新なんて・・・・・・あっ」
円ちゃんの頭に電球が光って、そのまま急いで走り去っていったの。
どうやら気づいたようだね。本当にやれやれだよぉ。
これでどこのグループなのかは分かるはず。
そこから特定してくのだけど、詳細の薄い執行履歴だけでは難しいね。
名前は非公開、メンバーは前科持ちだらけだろうし。
それに拷問士が関わると一気に情報を引き出すのが厳しくなる。それは国家機密。
執行した人に聞くのが一番なのだけどそれこそ不可能だねぇ。
リョナ子ちゃんや蓮華ちゃんに直接聞くわけにはいかないし。
他に拷問士に詳しい人は・・・・・・。
「レベル4を三人同時執行? なら特級しかやれんわな。単体ならともかく同時は一級には無理だ」
雑貨屋の地下に来たの。私は拷問士じゃないから進めるのはここまで。扉越しに会話する。
ここからでもビンビン感じるよ。向こう側の人は本当なら私の知る限り一番近寄りたくない。この人ならどんなレベルブレイカーが殺気を放っても涼しい顔をする事だろう。
「同時執行ってのは普通の拷問士なら特級でもやりたがらないわな。ただ一人を除いては・・・・・・」
私はある条件を提示してその拷問士の名前を聞き出した。
これで、後はその特徴を知るだけだね。
今度はリョナ子ちゃんに電話をしたの。
蓮華ちゃんじゃ感づかれる可能性があるからね。
世間話の中でさりげなく話題を振る。
「あ、そういえば、蓮華ちゃんが前に言ってたんだけどね。殺菜ちゃんて拷問士かな。その子と私達が会ったら大変になるって。そんなにやばい子なのかなぁ?」
「ん、殺菜ちゃん? あぁ、そうだね。殺菜ちゃんは犯罪者を塵屑くらいにしか見てないよ。葵ちゃん達にあったらいきなり襲いかかってくるんじゃない?」
「ふ~ん。じゃあ執行も凄そうだねぇ。未成年とかにも甘くないのかな?」
「殺菜ちゃんは容赦ないよ。子供だろうがお年寄りだろうが関係ないだろうね。凶悪な犯罪にもかかわらずレベル4とかで済む場合は、いつも烙印とかいって顔に熱したペンチを押しつけたりするもん」
烙印。なるほどぉ。
「そうなんだ、ありがとう、また今度一緒に夜空の星を眺めようねっ」
「いつ僕と葵ちゃんが夜空の星を眺めた」
相変わらずリョナ子ちゃんは私には厳しいけど、声を聞けただけでも良かったよ。
それに有力な情報も得られた。
さて、円ちゃん達はどこまで掴んでるかな。
数日後。
「姉御、姉御、これ、リコリコとお揃いっ、同じキーホルダー買ったっ、熊のやつっ。雑貨屋でな、これいいなって二人でっ」
復讐はどうした。
ここ最近円ちゃんは莉子ちゃんと一緒にいる事が多くなった。
話を聞くと、評判のお店に行ったり、洋服を見たり、私とはあまりやらない事だね。
「それはいいんだけど、復讐相手は見つかったのかな?」
「う、うん。なんかそいつらのチームは見つかった、犯罪者クラブに聞いて、それは分かったんだけど、あれだ、その三人組が誰だか、わからないって。執行内容は、無理みたい、だ」
円ちゃんは悲しそうに俯いた。一応探してはいたんだね。で、手詰まりになったと。で、買い物してたと。
「莉子ちゃんが覚えてないなら、目撃者に聞けばいいじゃない。白昼の路上だよ。誰かはいるはずだよぉ」
「あ、そっかっ! ん、でもそれをどうやって、見つける?」
「とりあえず、現場の近くのお店に行ってみれば? そこの店員にでも聞き込みしてみなよ。もしかしたら目撃してるかも」
「おー、わかったっ。さっそく、リコリコと行ってみる、のだっ」
円ちゃんはまた急いでここから走り出していった。
あらかじめ仕込んでおいたから、これで円ちゃん達にも三人組の特徴はわかったよね。
ここまで来ればもう特定は容易いはずだよぉ。
数日後。
「どこだ、顔にペンチの火傷後があるやつ、言え、言うのだっ!」
裏路地で円ちゃんが腕に骸骨の刺青をしている男の腹にナイフを刺していた。
「し、知らねぇ。てめぇ、俺にこんな事して、後で・・・・・・ああっあがあ」
再び刺す。男は苦痛で顔をゆがめる。
「わ、わかった、言う、言うっ、それ、レンジ達だ、いつも、夜になればクラブで飲んでるっ」
「どこのバーだっ! 言え、言うのだっ!」
そして刺す。男の腹から鮮血がズボンに染みをつけていく。
「あがあっ、コ、コスモスっ、いだぁぁ、店ぁぁ、もうやめっ」
「ま、円師匠っ、もうその辺で、この人死んじゃいますっ」
手を止めない円ちゃんの腕を莉子ちゃんが抑え必死に止めた。
「リコリコ、もう場所はわかった、だから、もうやらん、のだ、それに殺したら、あれだ、レンレンに怒られる」
腹を数回刺された男は壁にもたれ、そのまま地面に落ちていく。
円ちゃん達は男をそのまま放置してその場を去って行った。
「・・・・・・くっそがぁぁ、顔覚えたからなっ、ぜってぇぶっ殺す、探し出して、メンバー全員で・・・・・・」
男は円ちゃん達の背中を激しく睨み付けていた。
駄目だよぉ。
中途半端にしたら後が面倒になるよ。
殺さないなら。
せめて。
影から様子を見守ってた私は後ろからそっと近づく。
男は、自分にぬっと落とした影で私の存在に気づく。
その瞬間、男の目に横一閃、なにかが通り抜ける。
「あがああああああァァァァァア」
あの二人、自分から名前言ってたからね。このままじゃ喋られちゃうよね。
私は悲鳴をあげ大きく開く口の中に、ナイフを突っこんだ。
後は縦横無尽にかき回す。
口から血が大量に溢れ出す。
「あべぃべああかぁぁばばバっア」
目は潰した、口も潰した。後は・・・・・・。
私は終始無言で男の手を掴むと、手首目掛けてナイフを落としていく。
両手首を切断しよう。
これで、仲間に伝えようがないよね。
あぁ、耳もやっとこうか。これで完璧。
すぐに救急車を呼んであげるよ。一命は取り留められるよね。
私も蓮華ちゃんに怒られたくないし、無駄な殺しはごめんだよ。
ここまでお膳立てしたんだから。
円ちゃん達、ちゃんと復讐するんだよ。
全く、本当に世話が焼ける妹だねぇ。
なぜか次話投稿で直接入力の欄がでない。。




