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空の魔法陣  作者: こまっちゃん
第一章 それは愛でした。
9/15

愛縁奇縁

あいえんきえんには色々な漢字が当てはまり、意味も違ってきます。題名のこれが意味をするのは・・・

 光の(もや)が消えると大きな城門の前にいた。


 煉瓦を積み重ねて作ったであろう城門は悠々と十数mは軽く超えていた。

 色は全体的に灰色に近く、城門の門は橙色であった。

 俺らが唖然としながら歩いてくと、城門の前にはテンプレというか槍を肩に担ぎ銀をメインとした鎧を着こなす見るからに筋骨隆々の巨漢が話しかけてきた。身長が高いのもあるだろうが、彼から発せられる威圧感は古強者を想起させる。ヘルムで顔が隠れてよく見えないからか、より一層強く感じられる。


「よぉ、お前たち。学園入学希望者かァ?」


 今までに聞いたことのないほど厳つい声で話しかけられメイナは若干ビクついている。それを見たおっさんは若干すまなそうにして困惑している。威厳のある風格にその態度はいささかシュールというものだろう。

 …おっさんを誂うのは後にして、俺は必要な情報を聞くことにした。


「門番のおっさん、ここがエディミオンであってるか?」


 俺が若干声音を低くして聞くと、何が気に入ったのかおっさんはさっきまで俺にだけに放っていた威圧を解くと、ヘルムをとった。

 中から現れた顔は意外と整っていて、彫りが深く、頬の裂傷を合わせても格好いい部類に入るであろう。髪は茶髪で見定めるかのような青の双眸がさらに雰囲気を醸し出す。

 おっさんは俺たちのことをまじまじと見つめる。さりげなく手紙を取り出し渡すと、それを一瞥して一つの結論が出たようだ。


「お前たち、シィム様公認のガキどもか?」


 気色悪い笑みでこっちを見つめ、いきなり「ガハハハッ」と笑い出した。遠目から見ればただの危ないオヤジだよ。


「一応そういうことになっている。シィムさんに言われてこの都市の学院で学ぶことになった」


 俺がそう言うとおっさんはまた「ガハハハッ」と笑い出して門の近くにある受話器のようなものに話し始めた。ラ○ュタにでてきそうなあれである。


「シィム様のガキが来たぞ、開けてやれ」


 そうおっさんが言うと門はもの凄い音をたてながら数分かけて開いた。

 俺たちはおっさんに感謝して通ろうとすると、おっさんはまだ何かあるのか俺の肩を手で掴んだ。

 何だ?と思って振り返ると「手紙忘れんなよ小僧」と憎めない笑顔で渡してきた。

 礼を言うと「やめろ、むず痒くならぁ」と言い、その短く切った茶髪頭を掻いていた。

 なぜか俺たちが気に入ったらしく「俺の名前はジストだぜ、冒険者ギルドで働くならよろしくな」と手を差し出してきたので「俺の名前はユウだ。よろしく頼む」と握手して別れた。


 門を抜け中に入ると、まさに中世ヨーロッパ風の建物がズラリと並び、その手前には食べ物を売っている露店などが目に入った。よこでヒナカとメイナが「すごいわね・・・」と感心してるのを他所に俺は歩き出した。

 俺が数十歩歩くとヒナカとメイナはようやく気付き、慌てて俺についてくる。


 (さて、シィムさんに言われたとこまで行かないといけないが……ジストさんに聞いとくべきだったかな。)


 今更ながら後悔しても後戻りは男として気が引けたため、自力で探すことに。


 道中うまそうな串焼きがあったので買うことに。

 お金はシィムさんから袋いっぱいに貰ったためしばらくは困ることはない・・・はず。

 串焼きはキュルスと言う食用魔物の腿肉を特製のタレを使い焼いたものだそうだ。一本2ルド(銅貨2枚)だったので相場は分からないが、十本ほど買って2:2:6で分けて食べている。女子は緊張のあまり食欲がないようで、俺が一人で六本食べることに。

 味はとても美味しかった。やわらかさは饅頭並で、味は焼肉のタレを付けた豚肉といった感じだ。正直レタスが食べたくなるが、この世界にレタスは存在しないため若干気落ちする。


 漸く食べ終えたとこで、露店が減って住宅街のようになってるとこに三階建ての大きな屋敷――冒険者ギルドを見つけた。


 シィムさん曰く、ここの冒険者総支部管理長、つまりギルドマスターに預かって手紙を渡さないといけないらしく俺は早速ギルドの中に入ることにした。


 昔流行った早打ち決闘する映画にありそうな扉を押し入ると、中にはゴツイおっさん達やイケメン青年に小さな女の子まで、様々な人がいた。

 中はたくさんの、木で出来た八人用テーブルを高さ70cmくらいの木の椅子が囲んでいた。

 奥にはカウンターがあって受付は男女問わずに行っていた。

 カウンターの右横に階段があり、左には掲示板と思わしきものにたくさんの張り紙が貼ってあった。

 俺は取り敢えず、真っ直ぐにカンウターにいる、一番空いている所――気障そうな茶髪の男の人がいる所へと向かった。お兄さんは営業スマイルを絶やさずに俺に「初めて見る方ですね。今日はどんなご用件でしょうか?」と聞いてきた。俺は支部長を呼んでくれといったら心地よい返事で「はい、わかりました。少々お待ちください」といってカウンターの後ろにある扉の中へと消えていった。

 俺は小説で読んだ感じで「何様だぁ?」とか言われるのを覚悟していたのだが、案外支部長は暇だったらしい。

 ちなみに余談だが、俺たちは精霊魔術で黒髪を隠して――一度使うと空気中にある魔素で足りるため魔力は減らない――いる。なんでも黒髪の人間は珍しいそうだ……。

 数分したとこでさっきの男の人が戻ってきて、カウンターの中へと催促した。

 俺は疑問符を浮かべていると「支部長が直接会いたいそうです。後ろのお二方もどうぞ」と行ってきたため、俺たちはカウンター横に周り中へと入っていく。……その時にいろいろと視線を感じたが、気にしないでおこう。


 カウンターの扉を開け中へ入ってみると、石で出来た階段がひとつあった。

 どうやら支部長は地下にいるらしく、俺たちは足元に気をつけながらも階段を慎重に降りていく。

 一分程度歩くと扉が三つある空間に辿り着き、男の人は真ん中の部屋へと入っていき中で何やら説明し始めた。

 俺たちが若干緊張した面持ちで待っていると、中から支部長と思しき老人が「入って良いぞ」と言ってきたので、俺たちは扉を開け中へと赴く。


「失礼します」


 中にいたのは見た目から威厳のある白髪の老人だった。

 大きなテーブルの上にいろいろな種類の書類が散乱していて、爺さんの後ろには山積みになった本が高々と並んでいた。

 爺さんは俺たちを見ると微笑んで「ようこそ、シィムの弟子たちよ」と言って手紙を見せる前から当てられてしまった。

 だが爺さんは「手紙を預かっておるだろ」と言ってきたので恐縮しながらも俺は懐にしまった手紙を爺さんに渡す。

 爺さんは手紙の封を切り、中をもの凄い速度で見終わり、さっきのお兄さんに退室するように催促した。

 お兄さんは「ごゆっくり」といって部屋を出ていくのを確認した爺さんは、さて本題に入るかとばかりに腕を組んだ。


「ワシの名はゲルニス・アイツベルトと言う。ギルト総支部長だ。――そしてシィムハットの元相棒でエルフだ」


 ここまで来るとさすがにエルフという存在がわからなくなってきて、疑問を抱くが、まずは自分たちの自己紹介をする。


「俺の名前はユウ・シロサトです。シィムさんは俺の恩人です」

まずは俺が一歩前に出て自己紹介した。


次にヒナカ。

「私の名前はヒナカ・シオカリです。同じくシィムさんは私の恩人でもあり師でもあります。」


最後にメイナ。

「あ、あの、初めまして、私はメイナ・アルケファンで、す。おばあちゃんは親でもあり師でもあります」


 若干メイナが噛み気味だったがなんとか言えたようだ。


 そんな俺たちにゲルニス支部長は孫を見るような優しい瞳で俺たちを一瞥すると、言葉を切り出した。


「さて、本題なのだがお前たちには魔法学院に通うそうだな。学院の校長とは仲が良くてな。お前たちのことはすでに教えといてあるから記述試験は無しでいいそうだ。だが実技試験はあるので構えとけよ。――シィムにはお互い恩がある故の決断だ」


 そう言うとシィムさんとは違った威圧感があるゲルニス支部長に俺たちは礼を告げ、これからどうすればいいのか聞くことにした。


「そうだな……今日は特にすることがないが、お前たちはギルドで働きたいか?」

「はい、できればそうしたいです」


 ゲルニス支部長がそう聞いてきたので俺は間髪いれず返事した。


 ゲルニス支部長は「そうか、そうか」と一言だけ言い。手元にあるベルを鳴らした。

 ベルが鳴り響く。

 暫くすると先ほどのお兄さんが営業スマイルを崩さず「失礼します」と一礼して部屋に入ってきた。


「イーオス、手続きの紙を筆をもってきてくれ」

「かしこまりました」


 イーオスと呼ばれたさっき感じた気障な感じは消えていて、お兄さんは急いで部屋を出ていき数十秒すると紙を三枚と筆を持ってきた。


「手続きはここで済ませてやってくれ」

「かしこまりました。では、御三方のお名前、ジョブ。得意魔法や得意武器、性別を書いてくだされば結構です。」


 そう言うと俺たちにパイプ椅子のような椅子が用意され俺たちはそれに腰 掛けて筆を手に書き始めた。

――気づいたことが一点ある。


「「「ジョブってなんです?」」」


 俺たち三人の一言が面白かったのかゲルニス支部長は吹き出した。

 ゲルニス支部長が笑ってるのは兎も角、イーオスさんまで笑っていた。

 だが不思議と不快感は覚えずに俺たち三人は答えを待った。


 少しの間の後、イーオスさんが簡単に説明してくれた。


「ジョブとは職業のことですね。例えば私なら剣士、支部長なら魔道士。と、こんな感じになります」


 ヒナカとメイナが「ほへー」と感心している。

――だが職業か……俺たちの場合はどうなるんだろうか

 俺がそんなことを思ってるとヒナカとメイナを同じらしく三人で悩んでいた。


 イーオスさんが「自分にあった職業を書けばいいですよ」と言ってくれたが自分にあった職業が……あ、これがあったか。

 俺は職業(ジョブ)の欄に〈魔法剣士〉と書き、ヒナカは〈魔術師〉、メイナは散々悩んだ結果〈魔闘士〉にすることになった。


 若干痛い職業を書いたが、俺らは書類を書き終え、イーオスさんが紙を回収して部屋を出ていき、ゲルニス支部長がギルトカードができるまでギルドの説明をしてくれた。


「ギルドにはランクってのがあって順に、F,E,D,C,B,A,S,SS,EXの九クラスがある。このFからEX(エクストラ)のシステムを考えたのは二代目ギルドマスターで、未だにFからEXまでが何を示すのかわかっていない。ただそういうランクの定義である。としか言えないんだがな。」


 多分それを考えたのは地球から来た人間なんだろうな……アルファベットでランク表記って昔の人は凄いことを考えたものだ。

 ゲルニス支部長は「ハハハ」と笑うと続きを話し始める。


「ギルドには依頼掲示板ってのがあって、そこに貼り出される依頼をクリアすると貢献値が溜まっていき、一定の貢献値がたまるとランクがあがっていく。内容次第では飛び級でランクが上がる者もいる。大体はCになると一人前で、Bになると手練が増える。Aからは二つ名が付く。Sは世界に数十人、SSは世界に数人。EXは二代目ギルドマスターのタクトだけだった。」


 ゲルニス支部長はそこで一拍置き、質問はないか、と俺たち三人を見渡す。

 俺はタクトという人間に引っ掛かりを覚え手をあげようとしたが、それよりも早くメイナが手を上げる。


「支部長、依頼とはいくつでも受けられるんですか?」


 確かにそこは俺も気になった。場合によっては同時解決してランクがすぐ上がるのではないか?と思っている。


「良い質問だ。依頼には期間が設けられていて一人が複数受けることは禁じられている。第一、依頼失敗時には賠償金を払わねばならない。それと、クエストを優秀な奴が一人で独占してしまうとギルドはそいつ個人のモノと言っても過言ではない。逆に一人がクエストを独占して失敗してしまうと賠償額が払えなくなって破産するものの出てくるし、期間が決まってるため、ほかの人が成功するような依頼を一個人が台無しにしてしまっては意味がないからな。他に何かあるか?」


 次に手を挙げたのは意外にもヒナカだった。


「依頼の種類は何があるんでしょうか?」


 それを聞き、ゲルニア支部長は少し渋ってから話し始める。


「魔物討伐、採取依頼、納品依頼、護衛依頼。基本はこの四つだ」

「基本ということは他にもあるんですね?」


 俺がそう言うと支部長はやはり言いたくないのか、真剣な面持ちになる。


「ああ、あるには、ある。――戦争依頼、暗殺依頼だ。暗殺依頼は俺たちの部署では貼り出しを禁止しているが、戦争参加依頼は国から貼り出されるため国の冒険者は全員強制参加なのだ」

「シィムの弟子には危険が及ばないようにワシが直接言っておくから安心しろ」と支部長が微笑んでいた。――やはりというか戦争はどこにでもあるんだな。まさかそれがギルドの依頼で貼り出されるとは・・・赤紙ってヤツか。


 その後もギルドでのマナーやこれからのことを軽くまとめて話してくれ。話が終わると丁度イーオスさんがギルドカードを作り終えて三人分持ってきてくれた。


「ギルドカードの再発行は銀貨5枚を徴収させてもらいますので、失くさないようにお願いします」


 イーオスさんが営業スマイルでそう言うとゲルニス支部長は「とりあえず」と話を区切った。


「お前たちには宿を用意してある。金はすでに宿に払っているから、宿に着いたらゲルニス支部長の知人、と言ってこの鍵を渡せば話が通じるだろう。確か――地図はここにある。」


 支部長はどこまでいい人なんだろうか……いや、シィムさんの知り合いっていい人ばっかな気がする。

 支部長はそう言うと手元の書類の束をあさり一枚を引き抜くと、都市案内図と鍵を俺に手渡してくれた。


「明日の実技試験頑張れよ。多分合格だろうがな。ワッハハ!」


 俺たちはその言葉を背にイーオスさんと一緒にギルドカウンターへと戻った。
























――――――――――――――――――――――――















 イーオスさんに礼をいい俺たちは地図に書かれている宿へと向かうためにギルドを出た。

 ギルドを出て暫く歩くと大きな鳥の像と噴水がある場所へとついて三人揃って安堵のため息をついていた。


「支部長さんいい人でしたね」

と、ヒナカ。


「だなぁ。もっと怖い人かと思ってたんだけど」

と、これは俺。


「いいじゃないですか、優しすぎて困ることはないですしっ。それよりこの後どうしますか?」


 そうメイナが言い、確かに時間が余ってることに気づきどうするか考えた。


「あのっ、私露店とかヤビ君と回ってみたいんで自由行動いいですか!?都市に来るのは初めてでいろいろ見てみたくてっ!」


 そう言うメイナの瞳はきらきらしているように見え、さすがに拒否することもできなかった。

 ただ宿に行くにも時間があるためにこの意見には賛同できるものがあった。


「んじゃ後でここ集合な」

「はいっ」


 メイナはそう言うやいなや、効果音でも付きそうな全速力で走っていってしまう。


 俺たちが苦笑混じりにそれを見送ってやり「俺たちはここでしばらく待つか?」とヒナカに聞くと、いきなりモジモジし始めて「い、いやぁ……ひ、久々にデートなんてどうかなぁ~……?なんて……」と言い出した。聞いてる俺が若干恥ずかしくなりつつも「お、おう」と返答した。

 「!!」が頭に浮かび上がりそうなぐらい燥いでいるヒナカを久々に見て安堵しつつも「可愛いなコイツは」と思ってしまう俺らはバカップル確定だろうか。


 俺はヒナカの手を握ると、自分の顔が若干赤くなるのを感じつつ二人で昼の都市をゆっくりと歩き始める。



 二人は綺麗な月の光に照らされ、昼の道の影には寄り添うようにうつっていた。

























――――――――――――――――――――――――――――






 このギルドの総支部長であるゲルニスはどうしようもない喪失感と期待の両方を抱えていた。


 久々に届いた相棒のシィムハットから手紙には――久々に書いた手紙がこれで済まないのじゃが、アタシはこれから戦場に赴かなければならないからの。もしアタシに何があっても、可愛い愛弟子の三人をちゃんと面倒を見といとおくれ。お前さんが昔のことを引き摺っているのなら忘れることじゃ。あれは仕方のない結末じゃっだ。だから、お前は気に止む必要はない。その代わり、今回はそのような結末にならないよう、頼むぞ。  愛する相棒へ シィム。


「ワシ、いや俺は・・・お前の弟子を今度は守れるのだろうか・・・・」


 数百年前、シィムとゲルニスの間にいた二人の愛弟子の顔が浮かぶ・・・。


 壮年のエルフは何かを諦めたような、それでいて決意の篭った瞳をしていた。


















―――――――――――――――――――――――


















 私は久々にユウさんやヒナカさんを連れてくるべきだったと後悔しています。


 なぜなら今私は―――迷子だからですっ。


 どうしましょう。どうしましょう。広すぎて迷子になってしまいました……。ヤビ君は実体化のしすぎで戻っちゃいましたし……。


 あ、そうだ。近くの人に聞いてみましょうっ!そうしましょうっ!




 思い立ったが吉日という(ことわざ)をユウさんから教えてもらったのを思い出し、早速行動へと移る。

 私が露店に引き返し、さっきの串焼き屋さんのとこに辿り付くとおじさんが人のいい笑顔で「嬢ちゃんいらっしゃい!また食べていくかい?」と聞いてきたので私は二本頼みました。

 二本買ったところで私はおじさんに、聞いてみることにしました。


「あの、鳥の像と噴水がある場所を知りませんか?」

「あぁ~ 〈ケフィス像〉か、あそこならこの露店街をまっすぐ行って、ギルドと反対の方角へ行けばあるよ」


 おじさんは親切に道を教えてくれ私は安堵しました。


「おじさんありがとっ!」

「まいど!」


 私はおじさんに礼をいい、さっき言われたところを走りました。


 走り始めて数分すると私より少し幼い女の子が泣いていたので私は立ち止まり女の子に「どうしたの?」と聞きました。

 すると彼女は「お兄様、と、はぐれた、の」と言い。

 私は女の子を見捨てられず、どうしても助けたくなってしまいました。


「しょうがないっ!お姉ちゃんが一緒に探してあげるっ!」

「ありがとっ。お姉ちゃん!」


 純粋に礼を言う彼女が可愛くて私は背中におんぶすることにしました。

 女の子はキャッキャッと無邪気に笑ってくれて私の心は満たされてました。


(さて、と。ヤビ君聞こえる?)


そろそろ目が覚めているだろう相棒に声をかける。


(おう、聞こえてるぞお嬢)


 私はヤビ君に精霊魔法で彼女のお兄ちゃんを探せるかどうか頼みました。


(あいよ、お嬢のためならなんでもやりまっせ)


 有り難いけど、自分の身は大切にしてね?

 私はそんなことを思い、彼女にお兄ちゃんの名前を聞きました。

 彼女のお兄ちゃんの名前はルケイム・レナントツ・ラッセンフォーク。

 家名が二つあることから彼女は貴族のお嬢様なのでしょう。

 私は彼女のお兄ちゃんの名前をヤビ君に告げ、探索をかけてもらいます。


 彼の、ヤビ君の力は精霊特有の聴覚拡大と〈意思読(メトリー)み〉、〈武装硬化〉の三つで、意思疎通は契約してるから行えてます。

 そんなヤビ君の力のひとつ、意思読みは人の一番強く思ってるモノが読めるようになります。

 お兄ちゃんなら大事な妹を心配するはずっということでヤビ君に頼ってます。


(お嬢、ユウとヒナカっちとの待ち合わせ場所にいたぞ)


 やはり私の想像通りかヤビ君はすぐに見つけてくれました。

私は持ち前の風魔法と身体強化の合わせ技の我流〈加速〉を使い一直線で走りました。


 噴水の近くに行くとユウさんより少し身長の低い藍色のローブを纏った青髪の男の子が必死に名前を読んでいました。


(貴族の方なのに、あんなことができるなんて、すごいお兄さんですねぇ)


 私は素直に感心していました。

 だって普通の貴族ならあんなことは下品と思うでしょうし、したいと思う人はいません。ほとんどが従者に任せるはずです。

 それに比べて、妹思いなんですねっ。


「ナリー!どこだいー!いたら返事をしておくれ!」


 私は彼女を降ろしてお兄ちゃんのとこへ向かわせました。


「ナリー!心配したんだぞッ!」

「お兄ちゃんっ、ごめん、なさいっ」


 お兄ちゃんは彼女を見つけるやいなや抱きしめいていました。

それは彼女も同じだったようで若干涙目になりながらお兄ちゃんを抱きしめかえしてました。


(兄妹ってあんな感じなのかなぁ)


 私はいない兄妹を思い描き一人で耽っていると、さっきの彼女がお兄ちゃんのルケイム君を連れて来ました。


「君か、妹を見つけてくれたのは。ありがとう。感謝する。」


 私は彼の奇行に思わず慌ててしまいました。


「い、いやいや、問題ないよっ!妹さん見つかってよかったねっ」

「お姉ちゃんかっこよかったんだよっ。風の魔法でビューっと走ってお兄ちゃんのとこまで連れてきてくれたの!」

「え、えへへ……」

「そうか、その年で魔法を使うということは……見ない顔だな――失礼だが、君は学院の生徒になる人かな?」


 ルケイム君は妹を背負うとそんなことを言ってきた。


「君も、ってことは貴方も?」

「ああ、そうだよ。そうか、学院で一緒になるかもしれないんだね……ならこれからよろしく、でいいのかな、君の名前はなんていうんだい?あ、最初に自分の名前を名乗るのが礼儀だよね」


 と、ルケイム君は一拍開けて普通の女の子なら見惚れるような笑みで自己紹介をした。


「僕の名前はルケイム・レナントツ・ラッセンフォーク。〝氷の魔道士〟になる男さ。」


 不思議とそばに居たくなる少年。

 特殊属性系統の一つ、氷系統。それを使う一族がいるとは師匠に聞かされていたがまさかこんな出会いをするとは……。


 その後、他愛もない雑談をしているとルケイム君の従者らしき黒い装束を来た、所謂、執事さんが迎えに来ていた。

 少しそれを残念に思ってしまう私がいて、自分でも疑問に思った。

 そんな私の思いを知ってか知らないのか、ルケイム君は「また今度会おうね」と手振ってくれ、私も笑顔で手をふり返していた。


 


 それから十数分くらいしてユウとヒナカが顔を真っ赤にして帰ってきた。

一体何があったのか聞こうとしたけど二人とも揃って


「い、いや、なんでもないんだ……気にしないでくれ」

「そ、そう、ななにもなかったよ、うん」


 と、言ってしばらくうつむいていた。


 とても気になるがあまり詮索するのも失礼かと思って三人で今日泊まる宿へと向かった。



―――また会えるよねっ?






メイナは ふしぎな おもいを いだいた 。

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