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空の魔法陣  作者: こまっちゃん
序章 始まりの初まり
3/15

触らぬ神に祟りなし

 気づくと時間なんてのはあっという間だ。


 特に読書なんてのは一度読み始めるとなかなか止まらない。

 どれだけ時間があろうが本というものは、無遠慮にも時間を忘れさせる。

 一冊や二冊で十分充実感を与えてくれる本は、ジャンルによって違えど、根本的に魅せる物は同じなのだろう。

 小説にあって漫画にはない魅力、その逆も然り。


 人間というのは凄いものだと、若輩ながら熟思う。

 

 自分の想像したモノを、ペンを手に取り書き綴った。

 そしてそれを娯楽として生み出し、世へと広めた。

 石に文字を刻み、紙に文字を書き綴る。

 一見、誰にでもできることだけれども、これほどまでに難しく甘美なものはないだろう。

 

 現代の現実主義者や中世の言葉を知らず生きてきた者からすればこんな紙切れにどれだけの価値があろうか、と思うことであろう。

 だからこそ自分は本というものに興味を惹かれ、また調べるために本を読んでいった。


 本を読んで知識をつけろと現代の大人は口にするものが大半である。また大人は知識というのは理解しないと覚えない、というが無理に理解しようとするとかえって記憶として認識されない。だがそれに比べて小説や漫画というのはどうだろうか。

 偏った知識を覚えることはままあるが、それを正しいものへと記憶しようと自分から調べたりすることもできれば、作者の想像性を手にとって独自解釈をし娯楽へと昇華できる唯一の物とも言える。

 子どもにとって難しい漢字が出てきたら自分から調べる。そして着実に短い文章の中で知識をつけていく。面白いと絶賛の本があれば皆一様に手にとって読み始める。ただの洒落が事細かに文章に書き綴られ子どもはそれに気づくと知らぬうちにクスッと笑い、周りの子に自慢をしつつ本を紹介したりするであろう。


「やっぱりいいよな、本って」


 ふと、誰に言うでもなく俺はそう口にしていた。

 既にここまでは勝手な自論で思い込みに過ぎない。

 自分がそうしてきたように周りがそうするとは必ずしも同じとは限らないだろう。

 前に、この話をした友人には「考え事をして周りが見えなくなって、他人に価値観を押し付けようとするのはお前の悪いとこだな」と言われ、「ああなるほど」と納得してしまったことを思い出す。


 思考に耽っていたところを、耳障りなアラームが鳴り響く音でハッと意識を戻した。

 

 ――どうやら時間のようだ。

 

 俺は学校指定の紺色のスクールバッグの中に少なくない教材と筆箱、財布や生徒手帳があるのを確認して玄関へと向かう。

 玄関で靴を履き、年季の入ったアパートの扉を開け太陽の光を眩しく感じながらも鍵を閉めて階段――自分の住んでるアパートは八つの部屋を上下に割り振った全体的に薄い赤をしていて二階の階段から二番目に俺の部屋がある――を下りる。

 自転車置き場へと向かい、自分の自転車を見つけ鍵の番号「9912」を押して鍵を解除する。

 俺の自転車は深緑色で大きさは27インチ。カゴのある自転車で今時で言うママチャリってやつだろうあか。ただ俺だけがチャリって言い方を知らなくて二輪って言い方を中学三年まで言ってたのは周知の事実でいまだにイジってくる奴もいる。

 俺の学校までは数分の距離しかないが自転車で行くのには、一応の理由がある。

 それは中学の時からの幼馴染で彼女の、四百苅(しおかり)雛花(ひなか)が学校から自転車で二十分のところから通ってるために、俺が二人乗りか、もしくは学校まで談笑しながら登校するというのが毎日恒例になっている。

 なんでもヒナカ曰く「女の子は男の子を待っている側なんだから」だそうだ。

 俺からすれば「待たせる身にもなってみろ」と言いたい。――言ったら言ったで後先怖いことになるから言ってないんだが。

 

 そんなことを考えているといつの間にか住宅街を分け行ってヒナカの家に到着した。

 ヒナカの家は白と灰色をした二階建ての一軒家で母親と二人暮らし。父親に関してはヒナカが生まれた二年後に病で亡くなったそうだ。享年23歳。

 つまりヒナカの母親はシングルマザーとして生きてきたのだがヒナカの両親と俺の両親とが昔馴染みらしくて両親がヒナカの母親、静南(しずな)さんを支援していたりする。

 まぁ昔馴染みといってもお互いに名前が珍しくて、学校で浮いていた仲間同士らしい。

 ちなみに母さんの旧苗字は小休(こやすみ)で静南さんの旧苗字が小鳥遊(たかなし)だ。──最初聞いたときは運命的なものよりも作為的な何かを感じた。


 家のホンを押ししばらく待つと、のんびりした声とともに青いチュニックを着た若い女性がでてきた。


「あら、ユウ君いらっしゃい。毎回ありがとうねぇ。今ヒナカは着替え中だから少し待っててね」


 このほんわかした女子大生みたいな人がヒナカのお母さんの静南さんだ。これでも37歳って言うんだから世の中ホント怖いよな。それと年齢のこと言っても唯一怒らない女性の一人で、なんでも本人曰く「年齢なんてのは飾りであって中身の方が問題なのよねぇ」ということらしい。これを聞いたときはデジャブを感じた。


「ヒナカ~ユウ君きたわよ~」


 喋り方がものすごいほんわかしていて聞いてると、つい眠くなってしまう。恐るべきヒナカの母さん。

 少し遅れて「もう少し待って」という溌剌とした声が聞こえた。

 にしてもくどいかもしれないが、いつ見ても静南さんは若く見える。静南さんは腰まで伸びている黒髪ロングヘアーなのに対してヒナカは方にかかるかからないかぐらいの長さで髪からして静南さんとは対照的だ。

 静南さんがおっとり系のお姉さんキャラだとしたらヒナカは明るい活発少女。でもスポーツ苦手なんだよなヒナカって。

 スポーツが苦手とは言うが、実際は運動神経がいいのだ。だけれど、どこか遠慮がちで、しかも本人がインドア派なのが起因している。


 ドタドタとこ気味良い音を立てながらお待ちかねの少女が階段から降りてきた。


「ごめん、またせたかな?」

「おう、待った。」

「そこは今来たところっていうのが筋だと私は思うんだけど」


 不満げに頬を膨らます彼女が可愛く思えてしまうが、実際にこのやりとりは毎回言葉が違えど、日常通りなのである。

 というよりもさっき静南さんがユウ君来たよ。っていった時点で察して欲しい。なんて言った暁には数時間の無言宣言が発令される。

 数時間には理由があって昼休みになると二人で屋上に行って弁当を食べることになっているためそこで無言宣言は終わりとなる。――俺は弁当を作っていないが弁当に関しては静南さんとヒナカが毎日のように作ってくれる。

 

 だからといって俺は料理ができないわけではない。何分一人暮らししてるもんで料理スキルがないと生きてくのが辛い。毎日コンビニで弁当とか食費がマッハだからな。


「ユウ行こっか!」

 とヒナカ。

「おう」

 と返事する。


「いってらっしゃ~い」


 静南さんが手を振って送ってくれ、俺とヒナカはいつもの道を歩き出した。





──────





 ヒナカと二人で昨日見たテレビの番組がどうだったかなどと話し込んでいたら、車が交通事故を起こしたらしくヤジが集っていたり救急車やパトカーがいつもの道を行き止まりにしていた。


「どうする?」

「仕方ない遠回りしていくか。警察(マッポ)に見つかったら面倒事だけど時間が時間だしなぁ…しゃーない、ヒナカ、後ろ乗れ。隠れ坂から学校に向かう、スカートちゃんと押さえつけとけよ?」

「了解」


 隠れ坂。ヒナカの家から歩いて数十分したところで学校に繋がる裏道があってそこにある坂のことだ。

 この隠れ坂の由来は二つあって坂を越えたところにあるお地蔵さんが坂によって少し隠れて見えるからついたそうな。「だったら隠れ地蔵ってつけろよ」って思ったが俺もそう呼んでるので今更突っ込む気はない。

 もうひとつの理由が周りは雑木林で薄気味悪く普段から誰も近づかない、その為か雑草が入口に茂っていて坂に見えないことからだそうだ。一番目の理由とはなんだったのか。

 

 雑草を分け行って自転車で坂を一気に駆け抜ける。


「おおぉ~はやいはやい~」


 暢気な声で燥ぐヒナカ。それよかいつも思うけどヒナカを乗せて漕いでもあまり違和感がなく、乗せるたびにいつも思うのはヒナカは軽い。でも見た目は細すぎでもなくふっくらしてるわけでもない。たまに背中に感じる柔らかい何かがあたって未だにドギマギしてしまう。本人はユウなら触らせてあげるよ?というのだがヘタレな俺にそんな度胸はなく、このささやかな楽しみのために生きてて良かったと思うようになっている。

 

 約百メートルのなだらかな坂道だったけどそれでも早く感じる。

 素直になればいいのに、と心で自分に毒づく。


 坂道を登り終え地蔵がいるところにつくと、あとは歩いて行ける距離だ。


 ──だがここで、思わぬ事態が起きた。

 自転車を降りてふと地蔵と目が合った。

 地蔵が笑っていた。いつもなら無表情のはずの地蔵が笑っていて、それは無邪気な子どもの笑顔を連想させた。

 地蔵の手が動いたように見えたとこで俺は突如襲ってきた吐き気や眩暈、頭痛に耐えられずその場で蹲る。

 頭をおもいっきし殴られたあとのような鈍痛が襲いかかった。そんな俺にヒナカは気付き「ユウっ!!大丈夫っ!?」と呼びかけてくるが意識が薄れかかってきている。

 

 数秒ほど痛みや眩暈に耐えてるといきなり夢に出てきた少年と少女が仲良くしてるシーンや、居酒屋みたいなとこで酒を酌み交わしている青年とごっつおっさん達のシーンが流れてきたり、見たことある教師が助けを願ったりとごちゃごちゃした走馬灯のようなものが流れさらに眩暈が酷くなる。痛みに耐え兼ねた俺は急いでこの場から離れることにした。

 朧げな足取りで立ち上がるとヒナカがすごく心配した顔で俺に肩を貸してくれる。


「大丈夫?」

「ああ、なんとかな…」


 突如起きたシリアスな出来事に対して俺は地蔵と極力目を合わさず笑顔に努めていた。


(いままでこんなことなかったのに……一体どうしたんだよ……)


「学校着いたら保健室の井ノ瀬先生に見てもらおう?」


 ヒナカが声をかけてくるが若干意識が遠のいていてあまり声が聞こえないが俺は笑顔で「大丈夫」とだけ答えた。果たして答えがあってるかどうかはわからない。


 地蔵から一定の距離を置くと徐々に痛みは引き眩暈は既になくなっていた。

 遠くから地蔵を見ても普段通りに無表情で遠くを見据えている。

 

 俺は不思議に思いつつも痛みがなくなって、寧ろ体が軽くなったような気がしていた。








――――――――――――――――――――――――――――――――








 さっきまでの出来事が嘘のように思えて仕方がなく俺達は学校につき二人揃って教室に入った。

 教室に入ると小学校の時からの腐れ縁の相川(あいかわ)(あきら)が屈託のない笑みで手を振っている。

 俺はさっき起きたことはヒナカに口止めしているため多分大丈夫だろう。 噂好きのアキラに知られると面倒くさいことこの上ない。


 俺は教室の壁側にある自分の席―――アキラは俺の前でヒナカは俺の横―――に座ったとこで、アキラが話しかけてきた。


「オッス、ユウ。今朝お前んとこの近くで事故があったそうだな」


 流石というべきかコイツにはもう知れてるらしい。

 ま、俺もその話を振ろうとしていたのだが。


「ということは隠れ坂から来たんだな」

「よくわかったな」

「そりゃあそこの道が事故ったら近道の隠れ坂通るんじゃねぇか?」


 まぁそれは当たり前か。近道があるのに態々遠回りしてくような人は少ないだろうな。


「でよ、その事故ったってのが生物講師の榎原(えのはら)らしくてっさ。見ただろ榎原先生愛用の四駆のランクルだって」

「いや、事故ってるのは見たが車がどうこうよりヤジが多くて車まで見えなかったよ」

「さいですか」


 そんな話をしていると学校お決まりのチャイムが鳴り、担当の教師が入ってきた。

 担当の見た目がゴツイ。とにかくゴツイ。これほど筋骨隆々が当てはまる人間を俺は他に知らない。

 青ジャージを着込んだ教師の竹原(たけはら)信尚(のぶひさ)は、普段と違い若干面持ちが暗かった。

 生徒たちもそれを察したのだろう。皆一様にだまり、教室ないがしんと静まり返る。


「いいか、よく聞いてくれ。皆にとても残念な話がある。知ってる奴も中にいるとは思うが、生物学を教えている榎原先生が、事故で、お亡くなりになられた。それによって本日の授業は中止とする。悲しいとは思うが―――」


 それを聞いた一部の女性生徒が泣き始めたり、男子生徒までも面持ちは暗くしている。これに関しては榎原先生は意外と生徒うけが良く。見た目から癒し系などと呼ばれていることは俺の学校では有名だ。だが俺はあまり関わったことのないため悲しみを感じない。

 それはヒナカとアキラも同じようで三人揃って演技紛いなことをしている。

 普通の人から見れば激怒されても仕方ない行動だが、俺たち三人はそれよりも大事な人を失っているために、他人にあまり関心がなくなっているせいなのかもしれない。

 俺は父さんの方の祖父母と友人を。ヒナカは祖母と父親を。アキラは兄貴と従兄弟を。これだけ聞けば暗くなってしまうが、既に俺たちは踏ん切りはついていると自負している。他の人から見ればそれこそ強がりでしかないわけだが。


「―――だ。悲しいだろうが皆、体育館へ移動するぞ」


 竹原の話が終わり学年の雰囲気が暗いままは俺たちは体育館へと向かった。














―――――――――――――――――――――――――――――――――









 校長の長い話が終わると各自解散という形で、俺たちは帰路へと着いていた。

 アキラは中学の時から電車通いのため校門で別れている。

 

 今朝の一件から隠れ坂を通らずいつもの道を歩いている。

 しばらく無言のまま歩いていると、痺れを切らしたのかヒナカの方から話を振ってきた。


「今日は短時間でいろいろあったね……」

「ああ、確かにそうだな。俺が地蔵の近くで倒れ、今朝事故ったのが榎原先生。俺が倒れたのはまだいいとして、榎原先生は亡くなってしまったんだもんな……」


 なぜだろう。今の地蔵って言葉に引っかかりを覚える。


(……そうだ、あの時確かに俺は見た。榎原先生が助けを乞うところを。一瞬で定かではないが……なぜ今になって……ッ!?)


 だが俺の思考もそこで止まった。―――なぜなら坂道にいたはずの地蔵が笑顔で目の前にいるのだから。


「きゃーっ!!」


 ヒナカから可愛らしい悲鳴が上がるがもはやそれどころではない。

 今、目の前にいる地蔵の存在が疑問を呼ぶ。

 地蔵がどうしてここにいるのかが不思議でならない。

 

 俺が唖然としていると、地蔵が浮かび上がって徐々に近寄ってくる。


「ミィ――ミィツケタァアア。ケケケッケケケケケッ」


 俺は震えていた。足だけではなく、多分魂そのものが。

 奴に近づくな。頭から警報がずっと鳴り響く。

 俺は自転車を蹴飛ばして急いでヒナカを連れて走ろうとした。

 すると突然、動機が激しくなった。なぜかわからない。いや、正確にはわかっているのだがわかろうとしたくないと頭が叫んでいる。

 そんなことはお構いなしに地蔵が迫ってくる。一歩々々、ゆっくりと。

 ヒナカは震えていてどうにもならない。二人揃って動けない。


「俺たちが何をしたって言うんだッッ!!」


 気づくと俺は糾弾していた。

 だが周りに人の気配は、ない。住宅街の真ん中で叫んだはずなのに人っ子一人として見当たらない。

 すると地蔵のような何かは、その笑みを狂気の笑みに変えこう告げた。


「クケケケ、オマエタチハ、アソコデ――石碑ニ触レタ、ヨナァ?」


(石碑…――まさか爺ちゃんが言ってたのはこれのことだったのか!?)



 ―――石碑に触れてはいかん。何があってもだ。

 

 

 あの時俺はそのことを忘れていた。爺ちゃんは俺のあの思いを触ってないと感じたのか。


 地蔵の顔は徐々に酷く歪んでいった。そしてその顔を見たと同時に俺はなぜか昔触った石碑の言葉を思い出す。


──   ツ  。


 一文字ずつ。


──   ツ タ。


 確かに。


── ィィツ タ。


 思い出していき…


──ミ ィ ィ ツ ケ タ。



 俺は自分に鳥肌がもの凄い勢いで立ち、嫌な汗が止めど無く流れているのを実感した。

 それはヒナカも同じようで二人で先ほどよりも体が震え始めた。今までに感じたことのない感覚が襲いかかってくる。──俺ら死ぬのか。

 そう思うしかないほどの寒気と吐き気、そして頭痛。

 自分が何を言って何を考えてるかもわからなくなるほどの焦燥感。


 あの時感じた暖かい温もりは俺たちを守ってくれた守護霊か何かだったのであろうか。


 地蔵に似つかわしくない人間の男性ほどもある青い腕が、ずぼっと生えてきて気持ち悪さが倍増する。

 その気持ち悪さに追い打ちするかのように、地蔵はお経みたいなのを唱え始める。いや、既に地蔵ではなく、ただのバケモノだ。

 地蔵の口が静かに動き出す。


「エガゥae、ルuiiベ、ホウeiaラ、アuuaア、キュビアiie、グルゥボボo、アッベルeeo、デeoo。」


 よく聞きとれない。

 唱え終わると地蔵は狂気に似た笑みで、ニタァと笑い、手を上に掲げそのまま真下に振り下ろした。

 迫り来る気色の悪い歪な形の腕が、眼前に迫る。


「ケケケッ、ケケッケケケッ、ケケケケケケケケケケケケケケケケケケッ」


 地蔵の気味の悪い笑い声が響き渡る。

 ───終わったと直感的に思った。

 だが、次の瞬間、


「〈ど――許せ。世界を超え我が――を継ぎし者。我は――人にして〝―――〟。最後の――を持ってして―――を―る。どうか、――に――を。……エリュエス〉」


 ――言葉が降ってきた。

 途端に視界はグニャリと捻れ、俺たちの頭上で空色をした幾何学模様の円陣が幾重にも出現している。

 俺たちは抗うこともできず、そのまま二人揃って暗闇へと呑まれていった。


「ヒナッッ!!」


 咄嗟に叫び、ヒナカへと手を伸ばす。

 闇が覆う世界で、


「ッ!─────コレダケデモクラエッ!」


 最後に見たのは驚愕の色に染まる悪魔(・・)の顔と、紫色に明滅する二本の線だった。

 


















触ったら神に祟られたッ!

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