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空の魔法陣  作者: こまっちゃん
第一章 それは愛でした。
14/15

試験開始-〈下〉-



「我を呼ぶとは珍しいな」



 嗄れた声と共に現れた一匹の白狼。堂々と居座っているその姿は幾千の戦を乗り越えてきた古強者を想起させる。

 白く、儚く、そして勇ましい。

 地球では、絶対にありえない光景を幾度と見てきたが、白狼が喋る姿には何故か懐かしさが感じられる。

 どこかで聞いた声音とその独特の訛り。いやそれ以前に少しの哀愁を感じている自分自身に驚く。


「なにか事情でもあるのか?主人(マスター)よ」


 口を開く。

 それは獣や人は当然と思える動作だが、どうしても可愛らしく見えてしまう。

 喋るもふもふ…ヒナカは完全にもふもふに魅せられていた。どうしようもなく、もふもふしたいという気持ちが胸を、(からだ)全体を、這い回る。

 

「ええ。今回の入学試験の腕試しとして貴方を呼んだのよ。」

「ほぉ、そんなことに我を呼ぶとは、我と張り合えるぐらいの存在であるか?」

「そうよ。あの子の名前はヒナカ。もしかしたら貴方以上かもよ?」

「ふっ、面白い。見せてもらおうか」


 アーティはひと呼吸置き、ヒナカと白狼は視線で合図を促す。


「では始めるわね?――双方、準備を」


 そう言うとアーティは線の真上に立ち、双方を確認して先程と同様の合図を示す。

 パンっと照明弾(実際は何らかの属性魔法)が放たれ、本日二度目の戦闘は開始された。

 はじめに動いたのは白狼。

 白狼が一声吠えると自身の体の周りから淡い光が漂い始め、魔法陣が層となって組み上げられる。

 十、二十、三十……。

 組み上げられた魔法陣は全て白狼と同じ白色。

 ヒナカは目を凝らし、魔法陣をよく観察する。地球のライトノベルやアニメで見たものと同様の円形状のモノではあるが、なかに描かれてる模様は八の字。

 ただの八の字ではない。文字によって繋がれた線が八の字に見せて、

 

「観察したとこで見抜けまいよ」


 組み上げられた魔法陣から無数の剣が飛び出し、ヒナカ目掛け飛び交う。

 白のローブをなびかせ、ヒナカは〝その場から姿を消した〟。

 無数の剣はヒナカが先程までいた場所に深々と刺さり、白い光の粒子となり消滅した。


(どこへ行った…?)


 魔力の波動を白狼は感じていなかった。

 風もなければ空気の振動もない。嫌なほどに無音な世界に一匹だけ取り残されたような錯覚を味わう。

  

「まったくもう。怖いなぁ」

「ッ!?」


 のんびりとした声音のヒナカが白狼の後ろに立っていた。

 白狼は一瞬の驚愕の後反転し、バックステップで距離を置いたあと先程よりも多く剣を具現させ、しかしそれが無意味であると理解せざるを得なかった。狙った場所には〝既にいなかった〟のだから。

 

「どこだッ!」


 大声を上げるほどに、今まで冷静でいたはずの白狼は取り乱していた。

 殺気、と呼ばれる勘に近い感覚は訪れず、音も気配も全てが無だった。

 ヒナカと呼ばれる少女からは、およそ戦意と呼べるものが見受けられなかった。

 しかしそれとは違った何かが白狼の背筋を駆け巡り、思考が、なぜかプライドまでもが危険信号を響かせていることに若干の戸惑いを感じてしまう。


「ッ」


 突如として白狼の背中に何かに重みがかかる。

 アーティとは違ったされど女性特有の匂いが漂い急いで、後ろを振り向く。


「もっふっもふぅ~」


 ヒナカが白狼を抱きしめ毛並みを撫でている。

 その事実だけで白狼は既に無理解の世界へと意識を推移してしまう。


「ぷっ……アハハハ。これは傑作ね」


 アーティが涙目になって笑う。状況が掴めず混乱している気高き白狼と、子供のように無邪気な笑い声を上げている女性。それはとてもシュールな光景だろう。

 

「これは、どういうことだ……?」


 やっと出た言葉は恐る恐るといった形が如実に現れていた。

 アーティは、珍しく苛立ちが表に出ている白狼に無邪気に、そして冷酷に告げた。


「――ハクラ。貴方の負けってことよ」

「―――」


 ハクラと呼ばれた狼は、重すぎるわけでもなく決して軽くもない少女を背にして、もはや気高い狼としての威厳などなくただの犬と成り果てた白き英雄は、静かに涙を流した。


「こんな屈辱があってたまるか……」




 


 

 こうして二試合目は呆気ないヒナカの勝利という形で終わった。





―――――――――――――――――――――――――――――









「なんだ今のは…………?」


 試合観戦の終わり頃、ブレロの開口一番の言葉がこれだ。

 十数メートル離れたところでは尊敬していた元英雄のハクラが俯き、少女に成すがままにされている。いくら以前よりも力が劣るからといってあっけなく負けるとは想像だにしていなかったことだ。

 ブレロはそれよりも気になることがあった。それは少女が行った行動だ。

 獣に触りたいという意思はわかなくもないが、それよりもだ。あの瞬時に、しかも静かに消えた動作に魔力の波動を感じることはできず、それどころか気なども感じなかった。

 ブレロの研究者としての探究欲がそんな言葉を漏らさせた。


「あれは走っただけですよ」

「……はい?」


 呆れたように告げるユウだが、ブレロはユウが告げた言葉の意味がわからなかった。


「走っただと…?魔力もなしに無音で瞬時にだと!?どうやってだ!!」


 つい今の行動が信じられず、早口でまくし立ててしまう。

 自分が肩で息をしている……それにブレロは己の行動の意味を悔やんだ。

 ユウはそれを気にした様子など微塵もなく、むしろ実に少年らしい笑みを向けた。


「ブレロさんは見た目と裏腹で声量大きいですね。少し感心しました」

「そんなことに感心されても嬉しくはないが……」

「ハハハ、すみません。若い男性とこうやって話すのは何分新鮮だったもので」


 ブレロはとうとう自分のしたことを恥じた。

 それと同時にブレロの目が捉えたユウは、少年らしい笑顔を向けているが、その瞳の奥はなぜか濁っているような気がした。それはバラバラに()められた()め絵のようでもあった。


「あれは俺たちの居たせ、国にあった技能みたいなモノの一部でそれの応用って感じです。一応、企業秘密ってことで。……といってもヒナカが契約している精霊のおかげなんですけどね」


 ブレロのそんな気持ちは露知らず、ユウは先ほどの質問教えてくれる。内心では焦りまくっているユウではあるが。


「えっと、このことはあまり人には言えないので察してください」


 少し気落ち気味に答えるユウ。ブレロは気になって仕方がないが先ほどの言動から自重する。

 暫くの重い沈黙が流れたが、そこに闖入者が現れる。

 

「もっふもっふだったよ!」


 空気が読めないことに定評(?)のあるヒナカが戻ってきたようだ。

 笑顔で言うヒナカとは対照的に、どこか魂が抜け出たような白狼、いや、ハクラが沈んでいた。

 

「おつかれさん」

「いっえーい」


 軽くハイタッチを交わすユウとヒナカ。その姿はまるで学園祭のようなノリである。


「ふふふ。良かったわね、ヒナカちゃん。さて、次はメイナちゃんね?」

「は、はい!よろしくお願いしますっ!」


 間延びした口調のアーティとは真逆の口調で返答をしたメイナ。


「メイナちゃんは私が相手するわ」

「はい!……はい?」


 イントネーションの違う「はい」にユウとヒナカは少しツボってしまったあたり、やはりお似合いなのだろう。

 そんな二人を差し置いて意を唱える者が一人。ブレロだった。


「なぜ、学園長が直々に?私でも十分に」

「いいのよ。同僚の孫娘ですもの、気になって仕方がないのですわ……あと、任されてるのでね」


 次は言わせないわよ?と悪魔らしい微笑みは美貌とあいまって幻想的だった。とはユウとヒナカ談。


「――失礼しました。では私が合図役をさせてもらいます」

「ありがとうね。では舞台に移りましょうか、〝メイナ〟」

「は、はぃ…………」


 まったくの悪意のない言葉の最後に刺のある言い方。これにメイナは渋々頷くしかなかった。






―――――――――――――――――――――――――――――





 こ気味良い音が響く。

 それは三度目の合図だった。

 先ほどのあっけない試合とはかけ離れた、(おびただ)しいほどの魔力。

 それはメイナではなく、アーティから発せられるモノ。

 進もうとしても、若干とはいえ蹈鞴(たたら)を踏んでしまうのは仕方がないことであろう。――それほどの圧倒的な存在なのだ。

 シィムハットもそうであったが、やはり歴戦の英雄は覇気も素晴らしいものがあるとヤビはつくづく思う。

 合図の前に召喚されたヤビは主人であるメイナとの魔力循環を済ませ、大剣を構えている。大剣の名は〈大地を揺らす鳴動の剣イグセリオン・オークス〉。メイナの身長の二倍は超える大きさで、鉛色の刀身の真ん中に一本の赤い亀裂のような線が描かれている。見るものが見れば魔剣と称すであろうその大剣は小さなヤビとは不釣り合いに見える。

 対するアーティは紅を基調としたドレスに扇子を持っているだけ。

 ――先に動いたのはメイナだった。

 魔法ではあるが詠唱はなく、名前もない。後者はともかく前者は魔法使いとして異端であろう。これはヤビの精霊としての力により言霊を必要としない働きのおかげだ。

 篭手(こて)を付けた両手に炎を纏ったメイナは、その小柄な体型に似合わない力強さを見せる。

 連続して行われる拳の打ち出し、おまけとばかりに回し蹴りを放つが全てをアーティの扇子に受け止められ、果てには受け流された。

 瞬時に後退し入れ替わるようにヤビがアーティに剣戟を食らわす。後ろに下がったメイナは言葉を紡ぐ。


 豪炎の憑代(フレイム・ハント)


 両腕を真紅の炎が包み込む付与魔法。元はシィムハットの得意分野である付与魔法を、独自に改良したものだ。

 徐々に包み込まれるその炎の拳が、男のロマンを誘う。

 だがそれだけでは終わらない。神秘的な輝きを保つ翼が具現し彼女を包み込んだ。まるで天使のようなその翼は、見るものを魅了する存在感を秘めていた。

 ――どうやら、最初から本気で行くらしいご主人に、前で攻めながらもありったけの力を注ぎ込む。

 ヤビは隙を見てメイナのとこへと後退する。

 二人がちょうど前後で重なる形で揃うと、やがてその二人は〈同調〉を始める。

 精霊とハーフエルフの美しい奇跡。

 ヤビとメイナが重なるようにして生まれる、真の姿と真炎の世界。


「〈私は翔ける。炎を纏って、熱き意志を持って。誰にも負けない。誰にも邪魔させない。不敗にして不敵。故に私は翔ける。ここが私の戦場だから〉────── 《天空を翔けし焔の天使(ウリエラ・テンペル)》」


 ――刹那、空間が爆ぜた。

 爆ぜたという他、表現ができない。爆風が起こり、そして地面が抉れ衝撃波がアーティを襲うが、さも当然の様に横に振った扇子で衝撃波を相殺する。

 宮廷魔導士十数人ぐらいまで到達したであろう魔力の奔流に少しだけ気圧されたアーティだが、その顔から笑みは絶えない。

 アーティは自然と笑っていた。目の前の魔力操作がまだ未熟ながらも、圧倒的な威圧感と才能の片鱗を見せてくれるメイナという少女が微笑ましくもあり、その魔法に魅せられていた。

 先ほどの二人にも驚かされてはいたが、メイナも引けを取らないぐらいだとアーティは思う。

 

 目の前にある炎の円柱に自然と目が行く。高さが20mある大きめの施設とは言え、天井に穴があくほどだ。

 黄色や橙色の炎で構成された炎柱が衝撃波とともに掻き消え───



 ――現れたのは炎の天使だった。

 そうとしか表現できないアーティは自分を恨めしく思う。

 だけれどその輝きは素晴らしいものだった。

 少女の二倍はあろうかという大きさの両翼。両手には炎を(たぎ)らせつつも一本の大剣を握っている。

 もはや別人と言って刺し違えないメイナがそこにいた。

 セミロングだった髪は腰辺りまで伸びたロングヘアーに変わり、幼さのある顔立ちは消え大人びた雰囲気を漂わせている。

 それを助長するかのように、握られている大剣は〈大地を揺らす鳴動の剣イグセリオン・オークス〉ではなく〈全てを燃やす灼天の剣(ウリエ・ノヴァリオン)〉に変化していた。それは炎そのものが剣になったような姿で、見惚れるような神々しさとともに見るものを圧倒する威圧感を放っている。


「それがあなたの力なのね……シィムハットの孫とは言え血は繋がっていないはずですわよね…」


 扇子で口元の驚きを隠す。流石に何年も生きてはいるが、この年の少女から出る魔力の比ではない。


「…そして精霊との同調ですわね。正直驚きましたわ」


 余裕のある笑みは既に消えたが、強者の笑みは消えない。


「おばあちゃんに「もし昔の馴染みと戦うことがあれば全力で戦いなさい」と言われていたので、これが私が出せる限界の魔法です」


 発せられた声音は女性でも低い部類であろう。先程までの少女らしい声の高さはすでに無く、少しの威圧感を含んでいた。


(シィムハットめ、厄介なことを。いくら結界が張ってあるとは言え、これほどの力では、学生の中にも気づくものがいるかもしれない…少し結界の強度を高めなければいけない。それに油断もできないですわね。これはシィムハットの若い頃と同じか──もしくはそれ以上かしら)

 

 精霊と一体化している相手には余裕など見せられるわけがない。

 少し本気を出さなければいけないですわね、と内心毒づくアーティ。

 

「――〝我、先人の知恵の紐を解く。無力な我に汝の加護を。〟!!【全てを包む神の加護レ・ボーゲイン・フォーウス】」


 両手を交差させ紡ぐ純人族の魔法詠唱(・・・・)はユウとヒナカには聴こえない。この世界の純人族が発する独特の発音は、鳥のさえずりよりも遥かに綺麗で美しい。

 純人族にとって詠唱は〝言霊〟を使い、魔法という現象を起こす鍵。魔法は人それぞれによって呼び名は違い、詠唱方法も変わる。

 想像力と魔力適性こそが、純人族の強みなのだ。

 

 完成した魔法はドーム状の光となり、〈実技演習場〉を包み込む。


「さぁ、舞台は整ったわね」


 高齢とは思えないその可憐さから発せられる確かな凄みに、審判としてたっていたブレロを始め、ユウとヒナカも緊張した面持ちになる。

 扇子を相手に向け、アーティはさらなる詠唱を紡ぐ。


「――〝我、先人の知恵の紐を解く。無力な我に世界の蒼水の導を。〟【大地に荒れ狂う大津波(タイダル・ウェーブ)】」


 ぐるぐると回転しながら蒼色の魔法陣が出現し、詠唱を終えたと同時に魔法陣から出現した水の奔流がメイナに向け(ほとばし)る。

 地面を揺るがす轟音と荒れ狂う水流。その水の動きは速く、鋭い。常人が走った速さなど目ではない。

 

それでも水流は、彼女(メイナ)に届くことはなかった。

 ジュゥという音で水が高温に熱され、瞬時に蒸発している。

 青みがかった水はメイナの目前で急激に白と成って霧散する。

 

「…行きます」

「――ッ!!」

 

 その一言がどれだけ重圧感を放っていたことか。世界有数の実力を持つアーティを震わせるほどのプレッシャー。

 気を引き締める。

 だが、少女を見据えようとした次の瞬間、目の前の少女の姿は炎で揺らめき消える。

 

 ──陽炎。


「ハッ!」


 掛け声とともに轟音が響く。空間そのものが灼けるのではないかと錯覚するほどの熱風が襲い、咄嗟に簡易式の水壁を作る。

 しかし、すぐに蒸発し霧散する。

 なんという熱気だろうか。これが本当に少女が発するレベルのものなのか。


 晴れた景色を見つめた時、アーティはすぐに構えを取ろうとしたが、すでに燃え揺らめく炎の剣が数メートルという距離まで迫っていた。


(間に合わなっ――――)


 言い終わらないうちに爆発に似た衝撃音が再度ドーム内に響き渡る。

 衝撃音だけではない。

 アーティが数十メートルも先の壁にぶつかり、壁には亀裂が入って砂埃がたつ。

 抉れた地面。漂う霧。濡れた地面と、日照り上がった地面。

 審判であるブレロはここまでただ無言。驚き恐怖し、言葉が出ない。アーティに声をかけようとするが両者の気にやられて、冷や汗がだらだら流れ落ち、呆然と立ち尽くすことしかできない。

  

「――シッ!!」

「……ッ」


 静寂。だがそれを破るかのように砂埃が舞う中から短い呼気とともにアーティが、細型直剣(レイピア)を左手で握りながら突撃してきた。

 まさに雷光と言うに相応しいスピードに、戦慄が全身を駆け抜けた。メイナはその場で翻して躱し、後退する。そのまま追撃をしてもいいが、それだと殺してしまう可能性がある。

 満身創痍とまではいかないが、口を切ったらしく口元からは血が滲み出て、色鮮やかだった真紅のドレスは土に塗れて変色している。のだが、ドレスには傷一つ付いていない。

 それに気づいていないメイナは「さすがにやりすぎたか」と呟く。本来の彼女であればこれに気づくが、それと同時に自分のやらかした行動で今頃倒れていてもおかしくはない。どうやら〈同調〉では性格も変わるらしい。言わば〈戦闘狂(バーサーカー)〉状態。


「まさか私がここまでしてやられるとは。シィムハットの孫娘だとしても異常ですわね――〝我、先人の知恵の紐を解く。無力な我に汝の癒しを。〟【光射す輝き(ウェッラヒーラル)】」


 唱えた詠唱は治癒魔法を発動する鍵。

 起動した魔法からはベールのような光が出現しアーティを包み込む。二秒ほどで光が消えると、戦う前のアーティの姿がそこにあった。


「――ブレロ、私の負けですわ。固まってないでシャキッとしなさいな」

「はっ…え――?」


 ブレロは訳が分からずといった風に間抜けな声を漏らした。

 やれやれといった感じのアーティは左手に握るレイピアを〝扇子の形に戻した〟。


「メイナちゃん、文句無しの合格よ。うん、全員合格ね。…元に戻っていいのよ?」


 戦いが呆気なく終わったことに呆然としているメイナ。ワンテンポ遅れて〈同調〉を解除する。

 熱気は冷気へと代わり辺りを冷やしながらメイナは元の姿へと戻る。

 

「――すみませんでしたっ!」


 元に戻っての第一声がこれである。

 どうやら戦闘狂としての記憶はあるらしい。トリガーハッピーのような状態だったのだろう。


「いいのよ。まったく問題無いわ。試験合格おめでとう。――ようこそ我が学園へ」


 両手を広げて言うアーティの笑顔はとてもご高齢には見えなかった。とは三人の正直な感想である。

 それが本人に知られたかどうかはまた別のお話。


 こうして学園生活の幕が開いた。

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