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空の魔法陣  作者: こまっちゃん
第一章 それは愛でした。
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悪縁契り深し

 俺たちは鳥の像のある広場を後にし、今日泊まる宿へと地図に従いながら向かった。


 どこか中世ヨーロッパをイメージさせるこの都市の中を歩くこと数分。

すでに露店街は見えなくなっており、代わりに石やレンガをメインに作られた屋敷が見受けられる。

 周囲も段々暗くなっている。

 それと同じくして都市のあちこちの家で、ランタンと思わしき証明に明かりを灯すのが外から伺えた。


 住宅街のような場所を抜けたとこで、今度は〈防具屋〉〈武器屋〉〈本屋〉〈道具屋〉〈鍛冶屋〉などと書かれた店達がズラッと並んだ場所へとたどり着いた。

 一軒一軒が大きい。だが、その店たちが並ぶ道の奥に一際大きな屋敷があり、屋敷の上に看板らしきものが二つ見えそこには〈コーネス料亭〉〈都市中央区宿屋〉と書かれてあった。


 どうやら俺たちが泊まる宿はここのようだ。


 遠くから見ても大きいと思えたが、近づくと予想よりも大きかった。


 一見するとただ単にデカイログハウスでしかないのだが、よく見てみると石や木を合わせて作ったのが見て取れ、壁は木の板を組み合わせて作っているようで、要所々々に組み合わせの痕が見える。


 本日二度目の「ほへ~」が女性二人から出たとこで、俺は木の扉を開け中へとはいる。


 中に入ると空間は広く、奥は食堂のようだ。

 右手の方にソファーが数個有り、その中心に大きなテーブルがあった。どうやらそれは待ち受けや住人たちの話し合い場所らしく、マントを羽織り剣を携えた青年たちや、鎧に身を包んだ女性やおじさんたちが話し合っている。

 次に左手の方には、ギルドで見たときとは若干違うカウンターと階段があり、カウンター上にベルがあるだけで無人だった。

 俺たちはカウンターの方へと行き、ベルを鳴らした。……多分、これでいいんだと思う。


 ベルを鳴らすと茶髪のイケメンなお兄さんが眠たそうに出てきて、この都市は茶髪が流行っているのか?などと思いつつ、支部長に言われた通り鍵を見せて「支部長の知人です」と言った。

 すると青年は一瞬表情を変えたかと思うと笑顔になり、「では、403号室になります。案内しますので付いてきてください。」とカウンターから出て右側の階段へと俺たちを誘導する。

 石造りの階段を三回登って着いた場所で俺は驚いた。

階段はまだ続いていたが、それよりも奥行きの広さに驚く。

 部屋はなんと六部屋しか無いのにも関わらず、扉一つ一つの間隔が広く、およそ十数mはあるのではないか?と思った。

 俺たちは一番奥の「403号」と書かれた部屋に辿り付き、青年は説明を始めた。


「鍵はここの部屋の開け閉めに必要ですので失くさないようにお願いします。尚、朝食・昼飯・晩飯に関しては一階にある食堂でお出ししますので時間にはお気を付けください。では、ごゆっくりどうぞ」


 青年はそう言うと、イーオスさんに負けないぐらいの綺麗な一例をして俺たちから離れていく。

 俺たちは礼を言うのを忘れたことに若干罪悪感を感じたが、一日の疲れがたまっているのか早く寝たかった。


――それよりもまさか、女二人に男一人でワンルームだったとは……。


 俺は後ろの女性陣が気にしていないようなので、先に言われた通り支部長から預かった鍵を使って木の扉をあけた。



「嘘だろ……」

「これは……」

「ふぇぇ……」



 俺たち三人はそれ以上の言葉が出なかった。


 扉を開け目に映ったのは、この世界では見るのが珍しいと言われた、豪華な作りのシャンデリアのようなものに奥に四つのベッド。さらには真ん中に五人座れそうなソファーが三つ有り、それが大きな黒いテーブルを囲んでいて、そのテーブルの上にはこの世界の果物と飲み物が置かれていた。


 俺たちは「部屋間違えてませんか?」や「支部長どんだけいい人なんだよ」と思いつつ中へと、声のでないまま入っていった。

 中へと入って三人がそれぞれのベッドを決めると、俺は肩に背負っていたリュック――中には元の世界の制服と持ち物、シィムさんから貰った本が数冊入っている――をベットの横に起き、いち早く先に倒れこむ。


「すごいな……フカフカだよ……」


 シィムさんの家にもふかふかのベットはあったが、それとはまた違った弾力性と暖かさが服の上からでも伝わってきた。


 俺がそんな声を漏らすと、ヒナカとメイナは男(俺)がいるのを無視して外套や上着を脱ぐとベッドでジャンプし始めた。俺は極力それを見ないように――言ってなかったがヒナカは中くらいでメイナは胸が大きい部類に入るためそんなことをされると目のやり場に困るわけで・・・――寝ながら外套と靴を脱ぎ、天井を見やる。


「ふぉ~ふっかふっかですよっ!」

「だねぇ!」


――二人が楽しそうで何よりです。


 暫くすると飽きたのか二人はベッド横になり、唐突にこんなことをいってきた。


「そういえば、ユウさん一人だけ男ですよね……きゃっ///」

 とメイナがそんなことを言ってきたので


「今更かよッ!」

 と返しておいた。


 するとヒナカは誇らしげな顔で

「ユウは私を襲うのかしら?」

 と挑発してきた。


 それに反応したのかメイナが顔を赤くして

「ふ、不潔ですっ」

 と言ってきた。


「ふふふ……良いではないか~良いではないか~」


 何かを思い出したのか、いきなり何処かの悪代官のようなことを言い始め、手をわきわきさせている。


 「さっきのは冗談ですので助けてくださいっ」と助けを求めてきたが、確かにこれ以上は健全な男子故に欲望が抑えられなくなるため、ベットから降りヒナカを止めに入る。


「はなせっ やらせろっ!」


 と言われたので離してやると、そのまま床に大胆なキスを決めていた。

メイナがそれを見て笑い、ヒナカは若干涙目で「ひどいよぉ」と言っていたが気にしない。……いや気になるんだけどね。


 そんなやり取りが数十分続き、二人とも燥ぎ疲れたのかもうすでに寝ていた。


「晩飯どうすんだよ……俺も疲れたし明日の朝でいいか」


 二人に布団を掛けてやり、この幸せを感じながら俺もベットへと潜る。


 寝る前になぜか胸騒ぎがしたが気のせいだと思い、明日へと思いを馳せる。















―――――――――――――――――――――――――――――――









「ケケケケッ」

 

 暗闇の中で薄気味の悪い悪魔(・・)が笑っていた。


「チクショォ!あと少しで殺せたのにヨォ!またお前が邪魔するのカァッッ!」


 憤慨したように叫ぶ悪魔。


「――ナァんちゃってェクヒヒ」


 笑い、歪んだ。


 三百年前も昔に敗れた時のことを憤慨しつつも、嬉しさに笑う。それは異様な姿だった。

 青白い額についた弾痕(・・)は、未だ消えず残っている。昔、勇者に撃たれた部分がうずうずしている。


「キッヒヒヒヒィ。だがァ呪いは施したからヨォ…悔しいでしょうネェ、タクトよォ?」


 今はいない、かつて銃剣と呼ばれた物を片手に悪魔軍や帝国を蹂躙した――三百年前、勇者(・・)として召喚された男、八重樫(やえがし)匠人(たくと)に向けて狂気の笑みを浮かべる。


「タクトよォ?予想はツいていたみてェだが、まさか転移魔法でコチラに飛ばしてくれるとは寧ろアリガテェんだヨォ。テメェのせいで人生とか言うモノを無茶苦茶にサれたヤツが可哀想だよナァ?キッヒッヒヒヒヒヒ!!…確かテメェは俺たちを蹂躙するときにこういったよナァ?」


 

 少しの間を空けて、悪魔は笑う。

 最高に歪んでいて、最高に素晴らしい笑顔で。




「――イッツ・ショォタァイムッ」


 その言葉が意味するのは――――























「いつでも貴方の目の前に、デリバリー☆お地蔵さんっ!」に憑依していた悪魔登場です。





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