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前代未聞な精霊使い   作者: 夜魔
第一章 新入生対抗戦編
8/11

06 二人チーム!?

 最初の試合は、決着方法が余りにも規格外だった為、各方面から様々な賛否両論(否定多し)が寄せられたが、学園長の言った、

「先程の試合にはルール違反に値する行動は一切無かった。これを覆すと言うのは審判を勤めた教員に対する侮辱行為であり、このルールを定めたルミナス精霊院に対する抗議である」

 の一言で沈静化した。


『だが、今後はもう少し普通にしろ』

「分かってますよ。だけど、あんな速攻で攻撃すれば潰せる様なチームに対してあれ以外の選択肢は有りません」

 明らかに反省していない俺を見てエレーネ教師はため息を吐く。

『まあ、いいだろう。これで奴も態度を改めてくれれば良いんだが……』

「無理ですね」

 あんなプライドの塊が更生するとなったら、言い訳しようの無い状態で一対一でやらせて為す術も無くやられなくては無理だろう。

「しかもアレは貴族の三男坊でしょう?どうせさっきも親に頼んで猛抗議したのではないですか?」

『聞いていたのかと問い詰めたくなる程に当たっているな……。最後まで五月蝿うるさかったので、最終的に学園長が停学を匂わせてようやく諦めた』

「それでも最後まで喚いていたんでしょうね」

『本当に見ていたのでは無いのか?』

「ソンナワケナイジャナイデスカ」

『ごまかすならもう少しマシなごまかし方をしろ』

 我ながら見事な棒読みだったと思う。

 正確には俺が見たのでは無いのだがな……。

『ところで良いのか?ピンチだぞ』

「貴女には言われたくないですね」


 そう。

 現在は準々決勝の真っ最中であり、先程コッペリアルが倒されて残りが俺とアイネの二人になった。


「全く……浪速があんなに早くやられるとは……」

 開始3分後に見つかって囲まれてさようならした時には頭が痛くなった。

『因果応報と言う奴だな』

「違います。あいつが馬鹿だっただけですよ。――全く……相手の位置くらい把握して動けよ……」

 しかも囲まれた理由が隠密行動してたら相手の目の前に出てしまったという何とも間抜けな話だった。

『それでは、頑張ってくれたまえ』

(言うだけ言って逃げたな……)


 さて、ここから逆転するのにはどうすればいいだろうか?

(こちらは護衛騎士一人精霊使い一人の二人、向こうは護衛騎士二人精霊使い二人の四人……)

 普通に考えたらもう『詰み』だが……。

(まずはアイネに連絡だな……)

「アイネ、無事か?」

『余り無事じゃない!大ピンチ!そっちは?』

「戦闘中かな?」

「手前、さっきから誰かと話してるかと思ったら通信していたのか!戦いながらとは随分と余裕だな!」

 さっきから俺に攻撃を続けている護衛騎士の少年が苛立ちの声を上げる。

「そー、とっても余裕よゆー。後三人同時相手でも大丈夫なくらい」

「くそっ……!舐めるな!」

 少年は持った槍を思い切り振る。

「舐めたくもなるよ。こんな簡単な挑発に乗るなんて……」

 俺は槍を掻い潜り脇腹に剣を叩きつける。

「ぐぉ……!」

 剣を食らった少年は気絶した。

「残るは三人……。――アイネはまだ大丈夫か?」

 その時、アナウンスがアイネと他二人の戦闘不能を告げた。

「あー、やられちゃったかー。残るは精霊使いが二人か……不意打ちアンブッシュアタックするか」

 俺は護衛騎士だが騎士道精神は欠片も持ち合わせてはいない。


 そしてその後、相手指揮官に不意打ちが見事に決まり、俺達は準決勝に進出した。



「よくやってくれた。ベスト4進出の快挙に学園長も大喜びだ」

「それに比例して会場からの圧力プレッシャーが半端無いんですけど……」

 視線で人が殺せたら、100回殺してもお釣りが来る程にらまれている。

「我慢しろ。大方次で負けるだろうがな」

「教師が言う台詞とは思えない……」

「では勝てると言うのかね?」

「口が裂けても言えません」

 次の対戦相手はSクラスのチーム――S1チーム。

 そこには葉月と皐月の神鳴家二人が居るため、優勝は確実だと言われている。

 これまでの試合でも、葉月が一人で相手チームを全滅させたとかしているらしい。

「三人倒すのが限界ですね」

「神鳴兄妹以外は倒せると?今まであのチームで戦闘不能になった者は居ないのにか?」

「ええ。――葉月もフィールドに仕掛けをする時間を1時間ほど貰えれば倒せますよ。つまりそれだけ時間を掛けなければ無理という事ですが」

「それは見てみたいが……流石に一時間も仕込みの時間を与えるのは公平とは言えないのでな」

「まあ、葉月を倒せてもどうせ皐月は倒せませんし。負けてもいい試合ですので善戦して負けますよ」

「善戦できるのか?そいつらがその状態で」

 後ろを向くと疲労困憊と言った様子で倒れている3人の姿があった。四試合全て走り詰めだったから仕方ないと言えば仕方ないが……今後はもっと体力を付けさせようと、俺とエレーネ教師は視線アイコンタクトで同意した。

 平気そうなのは俺とコッペリアルだけだ。

「コッペリアルは大丈夫なの……?」

「はい。私自動人形ですから疲労しませんので」

「そっかー……」

 アイネの焦点が明らかに合ってない。

「棄権って出来ますか?」

「教師の許可があればな」

「では棄権を――」

「駄目だ」

 言ってる途中なのに断られた。

「何故ですか?」

「後ろの三人は許可しよう。しかし、お前とコッペリアルは許可できない」

「……分かりました。二人で戦えばいいんですね」

「そういう事だ。悪いがこれも決まりでな。戦闘可能な者を棄権させることは出来ないのだ」

「大丈夫です。誰も貴方が悪い何て思ってませんよ。ですが、これでは善戦も出来ませんからね」

「分かっている。寧ろ、これで善戦されたら他の奴らの立場が無さ過ぎるからな」


 準決勝。俺達は二人で出る事になった。

(元から勝ち目は無かったけど、これはもう無理だな……)

 ――私達が居るなら話は別でしょう?

 どこからか聞こえたその言葉に応えず、俺達はフィールドに脚を踏み入れた。

ルミナス精霊院:ルミナス神国での精霊使い協会

 ここに文句を言うのは全精霊使いに文句を言うのとほぼ同義

 ここのトップは神官長と呼ばれる(院なのに神官長)

 

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