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前代未聞な精霊使い   作者: 夜魔
第一章 新入生対抗戦編
7/11

05 対抗試合開始

 とうとう、新入生対抗試合の行われる日がやって来た。

 俺達X0チーム(委員長のチームはX1)は最初にC1チームと対戦する事になった。

 ちなみに、チームC1の指揮官は……。

「ハハハッ!初戦の相手が君達とは……。これはもう、勝ったも同然だね!」

 例のアイツだ。

「どうだい?今降参するというなら、惨めに負けなくても済むよ?」

 と話しかけて来るソイツに対して、俺達は……。

「おい、めろコッペリアル!こんな所で関節にオイル差そうとするな!」

「ですが、これは私の可動性を高める為に必須であり……」

「だからって、こんな人目が有る所でしないで!」

 俺とアイネは必死にコッペリアルを止めようとしていた。

 よって、全員先程の発言は聞いていない。

何故なぜですか?」

「何故って……」

 言い淀んだアイネの代わりに俺がズバッと言う。

「だからと言ってスカートをまくり上げるな」

 コッペリアルは、改造して自身の足首まで有るスカートを膝が見える程まで上げており、それによって見える様になったその芸術品の様に(実際人工物なのだろうが)綺麗な足に周囲の男共の視線が集まっている。(それを浪速とフレッチャーが遮っているが、効果は薄い)

 ちなみに、セフィロト学園の制服は改造自由だ。但し、制服の色の変更は出来ない。(一部ラインを入れる程度なら可能)これは所属学科を判別する為だ。

 何故なら、護衛騎士は戦闘時に邪魔にならない様に自身に合った服装にする必要があり、精霊使いは契約精霊の好む格好をすることにより引き出せる能力が上昇するからである。

「ちょっと君達!僕の話を……」

「「それ所じゃないんだから黙ってろ(て)!」」

(全く、この非常時に話しかけてくるなんて……。少しは空気を読んで欲しい)

 そんな事を思いながら、取り敢えずコッペリアルをどうにかしようとする。

「それは後でさせてあげるから此処ではするな。そもそも、何で自室でして来なかった?」

 この学園の生徒には寮に部屋が与えられており、A~Eクラスは二人一部屋、一部例外が居るが、SクラスとXクラスは一人一部屋である。(Sクラスが個室なのは優秀な為、Xクラスが個室なのは色々問題がある生徒が多いから)

「今日は普段より朝が早かったので、している暇が有りませんでした」

「お前の対応能力低いな!?」

「申し訳ありません。ですが、今度からは出来ると思います」

「本気でそうしてくれ……」

 漸く一息着いた所で、後ろから怒声が聞こえてきた。

「おい、何時までこの僕を無視してるんだ!護衛騎士風情が!」

 そう言って、そいつは火の玉を打ち出そうとする。が、それは俺が抜き放った剣で散らされる。そのまま返す刀(剣だけど)で相手の首を斬りつける。

「止めんか馬鹿者」

 だが、それはエレーネ教師に止められた。

「って、貴女あなた何で素手で剣を受け止めているのですか?」

「土属性精霊術“硬化”だ。初級の精霊術なのだから、護衛騎士の君でも覚えておいた方がいいぞ」

「……いえ、“硬化”は知っています。ですけど硬度が上がっても、衝撃は普通に通るはずですけど?」

「そこは技術だ。それで、今貴様は何をしようとしていた?」

 この言葉は俺に向けての物であり、鋭い視線もセットになっている。

「……やだなぁ。単なる正当防衛ですよ」

 我ながら中々の棒読みだと思う。

「――はぁ……。この決着は試合で着けろ。今後も続けるようならそれなりの処置が待っていると思え」

「はい、分かりました」

 素直に頷いた俺とは違い、

「ふっ、どうせ勝つのは僕らさ」

 と、自信満々に言ってC1チームは去っていった。

「全く、毎年ああいう奴らが居るな……」

 その呟きを聞き取った俺は、ついこう言ってしまった。

「そんなものでしょう。中途半端な精霊使いには特に」

 その言葉に混じっていた怒気を感じたのか、エレーネ教師は顔をこちらに向けた。

「ふむ……、君の精霊使い嫌いなのはそれが原因か?」

「直接の原因ではないですが。――試合の準備があるので、これにて失礼します」

 余り話したくない話題なので、切り上げて立ち去ろうとした。

「ああ、頑張ってくれたまえ。それと――」

「?」

「Xクラスは代々新入生対抗試合は一回戦負けだ。だが、今回はそうならないと思っているよ」

「協調性が無かったんですか?」

「リーダーシップを取れる奴もな」

「残念過ぎる……」

 これまでの先輩方の事を思うと気が重くなった。




『お待たせしました!只今より、セフィロト学園新入生限定、クラス対抗試合を始めます!』

 わーーーーーーー!

 セフィロト学園の第一フィールドに響き渡ったアナウンスに観客(生徒だけでなく、一般の人も見物に来ている)が沸き立つ。

『始めに、学園長挨拶』

 壇上に20代前半に見える女性が登る。

(入学式が中止になったから今まで見た事はなかったが……。こんなに若い人が学園長とはな)

「初めまして、新入生の皆さん」

 開会式の第一声には相応ふさわしくない語り出しだが、今回に限って言えば間違ってはいなかった。

「本日は学年で初めての行事です。今回は戦闘系の行事ですので、くれぐれも安全には気を付けて、けれど全力で頑張って下さい。――これで終わります」

 頭を下げてから壇上を降りる学園長。

「ねぇ。最後にあの人私達の方に視線向けなかった?」

 アイネの疑問に俺も頷く。

「俺もそう思う。何でだろうな?」

 その疑問が分かるのは暫く後の事になる。



 開会式を終えた俺達X0チームは第一フィールドに居た。

『それでは、第一試合を開始します!』

 再び歓声が起きる。

『それでは、対戦チームをご紹介します。まずは精霊使い五人からなるC1チーム!』

 応援の声に金髪の優男――例のアイツを始めとする五人の精霊使いが応えて手を振る。

(て、精霊使い五人で一チーム?何考えてるんだ……?)

 相手のチーム編成に若干呆れていると、続いて俺達も呼ばれた。

『そして、X0チームだ!』

 ブゥゥゥーーー!

 何故か先程あった説明は無しで観客がしたのはブーイングだった。

 それに対して、俺はアイネにこう言った。

「アイネ、観客席に精霊術をぶち込め」

「嫌だよ!?」

『落ち着かんか馬鹿者』

 物騒な発言をした俺にエレーネ教師が“音運び”で話しかけてきた。

「エレーネ教師、これは一体何ですか?虐めですか?」

『Xクラスは代々一回戦負けだと言う話をしたろ?』

「ええ」

『その所為か、近年ではXクラスは最初にやらせて、負けてからが本格的な始まりだとも言われている』

「つまり、負けるのだったら最初から参加するなと?」

『そういう事だ。他にも、Xクラスが個室なのを妬む声や、抑もXクラスなんて要らないと言う理由もある』

「……学園長がこっちを見たのもそれが原因なのか……」

『いや、それは違う』

 小声で呟いたのだが、どうやら聞こえていたらしい。

『学園長も元々は私と同じXクラスだ。どちらかと言えば期待しているのだろう。それと……』

「それと?」

 エレーネ教師が珍しく言い淀んだので思わず聞き返してしまった。

『入学式を潰されたのが気に入らないので是非とも叩き潰して欲しいそうだ』

「……学園長がそれで良いんですか?」

 確実に良くない事は言うまでもない。

「まあ、良いでしょう。最短時間で片付けます。何もさせる暇は与えませんとお伝え下さい」

『ほう……?良いのか?自分から難易度ハードルを上げて。あの学園長は自分の期待を裏切られる事が一番嫌いだぞ?』

「30cmのハードルを50cmに上げた所で、大差は無いです」

『ますます楽しみだ。学園長にはその様に伝える。頑張ってくれたまえ』

「はい」

『それでは、試合開始!』

 おや、話している内に試合が始まってしまった様だ。

「アイネ、コッペリアル」

「分かってるよ」

「了解しております

 それでは、終わらせようか。出来るだけ惨めに。


『し、試合終了……。――マジかよ……』

 驚愕の展開にアナウンスも思わず素が出てしまっている。

 試合時間5秒。決着は指揮官アイツが気絶した事による戦闘不能。

 そして、その方法は……。

「ナイスコントロールだ、コッペリアル」

「お褒めに預かり光栄です」

「アイネもナイスサポートだ」

「ま、これ位は簡単だよ」

 俺の労いに二人はそれぞれの反応をする。

「いやはや、毎日毎日フレッチャー相手に投石の訓練を積ませた甲斐があったぜ」

「的にされた方は堪ったものじゃないよ……」

 そう、相手指揮官を倒した方法は投石であった。

 だが、只の投石ではない。

 片腕10kgは余裕で操れる(ただ重い物を持つだけなら更に重い物でも可能らしい)コッペリアルの腕力で正確に放たれ、アイネが風属性精霊術によって加速させたその一撃は、真っ直ぐ指揮官の弱点目掛けて飛んで行き、見事に命中した。

「でも、狙いがえげつないで。何も股間を狙わんでも良えやん」

「……いや、確実に無力化させろって言ったら……」

 流石に、こうなるとは思っていなかった。俺も、てっきり腹部辺りを狙うと思っていた。

「何か問題でしたか?」

 コッペリアルが小首を傾げて尋ねてくる。人形の様に整った顔でそんな可愛らしい仕草をされると……。

「何も問題はない」

 つい肯定してしまった。

「「!?」」

「そうですか」

 男二人が絶望した様な顔をしている。正直、申し訳ないと思っている。

「さて、戻っていいのか?」

 会場が固まっていて動くに動けない。

『ご苦労……と言う程疲れてはいないか?』

 エレーネ教師が“音運び”を使って話しかけてきた。何の用だろうか?

「俺と浪速とフレッチャーは余り。アイネとコッペリアルは少々と言った所でしょうか」

 俺達3人は何もしていないが、彼女達は殆どノータイムで全力を出したからそれなりに疲労していると思われる。コッペリアルが疲れるかは不明だが……。

『そうか。では、もうフィールドからは出てもいいぞ。それとな――』

「それと?」

『学園長がGJ(グッジョブ)と伝えて欲しいと……』

 これには、流石に絶句せざるを得なかった。そして、何とかこの一言を言った。

「……あの人が学園長で大丈夫なんですか?」

『……経営の面ではな』

 それ以外では問題が有りそうだ。

硬化:Cランク土属性精霊術

 対象の硬度を上げる

 一般的な場合、人体に対して発動すると硬度は鉄と同程度まで上がる

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