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前代未聞な精霊使い   作者: 夜魔
第一章 新入生対抗戦編
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04 クラスで模擬戦

「本日は、来週から行われるクラス対抗試合に就いての説明を行う」

 Xクラスの教室では、エレーネ教師が教壇から生徒達に教鞭を振るっていた。

「試合形式は五人一組のチームでのトーナメント戦だ。つまり、このクラスの場合は二組に別れて貰う」

 それを聞いた生徒達は若干ざわつく。

「この中で指揮官適正があるのはエルストンと神無月のみ。よって、組分けは二人で話し合って決めろ」

「は、はい!」

「分かりました」

「では次に戦闘の勝利条件だが、一つは指揮官の撃破。もう一つは相手チームの指揮官が降参を宣言する事。これは無用な戦闘を避けるための物だ。武器は精霊は何でも使用して良いが、Aランク以上の精霊術の使用は禁止する」

 Aランクの精霊術は地球で言うところのICBM(大陸間弾道ミサイル)――とまではいかないが、戦術級兵器と同等の破壊力を持つ物もある。

 しかし、そもそも使える者はかなり少ないので、注意の必要性は余り無いと思うのだが……。

「まあ、諸君には使えないと思うが、Sクラスの生徒には使えそうな奴が居るのでな。教えておいた方が安心するだろう?」

 その言葉で黒刃は想起したのは皐月さつきと序でに葉月の神鳴家の二人。あの二人なら契約精霊如何いかんに因ってはAランク精霊術も使えるだろう。

戦場フィールドには精霊術での特殊結界が張られている為、大怪我の心配は無いが、頭部に対する攻撃はひかえる事」

 特殊結界は内部の生命体の保護機能を持つこれまたAランクの精霊術だが、保護と言っても『肉体への損傷を防ぐ』という効果なので、衝撃はそのまま伝わる。それが脳に達すると異常が起こる可能性があるので、頭部への攻撃は制限されている。

「説明は以上だ。それでは、エルストンと神無月は今から組分けを決めろ」


「で、どうしますか?神無月君」

「くじ引きで」

 そう言って俺は8枚の短冊状の紙を取り出す。

「そんなの何時作ったんですか?」

「ついさっき。さ、4枚引いてくれ」

「普通は交互に引くものじゃないですか?」

「この方が早い」

「それじゃあ引かせて貰います」


 くじ引きの結果、俺のチームは俺、アイネ、コッペリアル、浪速、フレッチャーだった。

「まあ、精霊使いが0人という結果にならなくて良かった」

其処そこは考えておこうよ……」

「まあ、結果良ければ全て良しって事で。で、陣形フォーメーションに就いてだが――」

 なお、現在は別れた2チームでの模擬戦のミーティング中だ。

「コッペリアルとフレッチャーは前衛で、アイネは後衛。此処までは良いな?」

 その言葉に三人が頷く。

「で、僕と君は?」

「こそこそ隠れて不意打ちする。得意だろ?」

「うはぁ、えげつないなぁ。ま、得意やけども」

 浪速が苦笑する。

「じゃ、行きますか」

「え?まだ開始時間前だよ?」

「ふっ……。甘いなアイネ、戦いは既に始まっているのだよ」

『駄目に決まっているだろう馬鹿者』

 何処からともなく声が聞こえてくる。

「エレーネ教師、風精霊を使っての“音運び”ですか……」

 音運びとはその名の通り、遠くにある音を聞こえる様にしたり、自分の声を遠くに飛ばす精霊術だ。

『その通りだ。フィールドは精霊にって監視されている。違反行動は監視されていると思え』

「――実際に監視しているんでしょうが……。はいはい、分かりました。了解しました。大人しくしています」

 小声で呟いた後、それをかき消す様に大声で返事をする。

『分かれば宜しい。では、残り3分だ。じっとしていたまえ』


「よし、3分経ったな。行くぞ、浪速」

「はいな」

「そうだ、黒刃君」

「何だアイネ」

「こそこそ隠れるんだよね?どうやって指示出すの?」

「どうやってって……通信機貰ったじゃん」

 自分の右耳に取り付けてある機械を指して言う。

「そうじゃなくて……。隠れてるのにどうやって私達の状況見て指示出すのって聞いてるの!」

「ああ……。それは秘密だ。でも、ちゃんとやるよ」

「……じゃあ良いや。信じてるからね」

 アイネは不満気だったたが、不承不承ふしょうぶしょうだが頷いた。

「取り敢えずの指示だが、コッペリアルとフレッチャーは相手指揮官へ向かって進行しろ。飛んできた精霊術は躱せ、相手の護衛騎士が出てきたら倒せ。アイネは此処から二人を援護だ。浪速は……適当に宜しく」

「了解しました」

「分かったよ」

「任せて」

「僕の指示だけ適当やな!」

「それじゃ、行くぞ」



「おー、やってるね」

 俺は藪の中から4人の護衛騎士が戦っている様子を観察していた。

「コッペリアルは単純戦闘では普通に戦えるのか。フレッチャーは相変わらず避けるのはうまいな……。さて、ではそろそろ」

 俺は耳元の通信機のスイッチを入れる。因みに、指揮官の物とそれ以外物のみが通信できて、指揮官以外同士では通信は出来ない。

「コッペリアル、フレッチャー、今から援護狙撃入るぞ。アイネ、1、2、3で撃て。準備できたら返事」

『……用意できたよ!』

「それじゃ行くぞ……。1、2、3!」

 合図と同時に風属性の精霊術による空気のかたまりが飛来して、護衛騎士の一人に命中する。当たった護衛騎士は当たった部分を押さえながらも武器を構えていた。

「ナイスショットだ、アイネ。休んでていいぞ。コッペリアルとフレッチャーは今ダメージを受けた方に集中攻撃して沈めろ。それからもう一人を倒せ。――以上」

『了解』

 三人の返事を聞いた俺は通信を切ると、指揮官いいんちょうが居る地点目掛けて静かに走り出す。



 俺が委員長の側へ来ると、そこでは二人の精霊使いが援護射撃をしていた。

(おや?中々強力だな……。二人は大丈夫か?)

「コッペリアル、フレッチャー。どちらでも良い。現在の状況は?」

『こちらコッペリアル。現在、こちらは護衛騎士を一人しました。ですが、その後に放たれた精霊術でアーノルド・フレッチャーが気絶。現在は護衛騎士同士、精霊使いの援護有りで戦っています』

「よし。ならこちらからは積極的に攻勢に出ずに現状を維持しろ。アイネもいいか?」

『了解』

『分かったよ』

 その後、俺は通信相手を二人から浪速に変える。

「浪速。近くに居るな?」

『はいなー。ちゃんと居りますよー』

「合図と共に攻撃する。お前が先に出て精霊使いを、俺が後から指揮官を倒すぞ」

『ん?つまり僕は囮なんか?』

「その通りだ。察しの良い奴は嫌いじゃないぞ」

『そうやね。君がやられたら即負けな訳やし、それが一番やな』

「それじゃ、行くぞ。1、2、3!」


 その後、浪速に気を取られている内に背後に忍び寄った俺が首筋に剣を突きつけて試合は終了した。


音運び:Dランク風属性精霊術

 空気の振動を操り、遠くにある音を聞こえる様にしたり、自分の声を遠くに飛ばす精霊術

 一般的な効果範囲は約100m

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