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前代未聞な精霊使い   作者: 夜魔
第一章 新入生対抗戦編
4/11

03 反省会

 先程の戦いの反省会をする事になった。なったのだが……。

「どうして誰も何も言わない!」

 彼此かれこれ30分は誰も言わない状況に痺れを切らした俺が叫んだのは悪くないだろう。見ろ、教壇でさっきから質問を繰り返すも何の反応も無かったから委員長はすでに涙目だ。

「いや、だってボロ負け過ぎて反省点探すどころか反省する所しか無いやん」

「有るわ!少なくともコッペリアル!お前、あの時かわせたのに躱さなかったろ!」

「言われなかったので」

「言われなかったら動かないとか……貴様は機械か!」

「そうです」

「は?」

 コッペリアルの口から飛び出た言葉につい気の抜けた声を出してしまった。

「私はルミナス神国で作られた戦闘用自動人形オートマタ。コッペリアシリーズ第一号機、固有名称メイデンというのが私の正式な肩書きです。そして、私がこの学園に来たのはデータ収集の為であり、そのデータが不足している現状に於いては咄嗟とっさの行動が取れず、被弾してしまったという訳です」

 それを聞いた俺は若干頭を痛めつつ、クラスの皆に話しかける。

「取り敢えず、この事は誰にも言わない様に。コッペリアルも、この事は誰にも言うな」

「了解しました」

「それじゃあ、コッペリアルの件は後々考えるとして……」

(Sクラスの護衛騎士の動きを見学させればある程度解決するか?いや、それよりも何でも使えるのが機械としての学習機能にる物だとすれば……)

「あの……神無月君?」

 考えに没頭していたら委員長が心配そうに話しかけてきた。

「いや、何でも無い。じゃあ次にフレッチャー、逃げるのが上手じょうずなのは分かったが逃げ腰過ぎだ。他の護衛騎士、あれ位の精霊術は耐えろ。精霊使い達は同時に使う精霊術の属性エレメントそろえろ。相乗そうじょう効果で威力が増す。委員長、指示が在り来りテンプレ過ぎ、少しはアレンジを加えないから相手に手を読まれるんだよ」

 一度に全員の反省点を挙げた俺は満足して席に着いた。俺?最後まで残ってたから反省点は特に無い。

「――最初の30分はなんだったのか……」

 ずっと黙っていたエレーネ教師が椅子から立ち上がり、委員長と入れ替わりで教壇に立つ。

「諸君、先程神無月が言った事は正しい。よく反省し、次回に活かすように。まあ、午後からの授業は実技なので、そこで努力する様に」

『はい!』

 キーン、コーン、カーン、コーン

 そこで授業の終わりをげるチャイムが鳴った。

「委員長号令」

「起立、礼」



 再び第三フィールド。

「では、午後の授業では、先程の反省を活かして各自で訓練する事」

 エレーネ教師はそう言うとフィールドの端に存在する椅子の所へ行ってしまった。

 基本的に、俺達の実技の授業では教師は監督しているだけである。なぜなら、俺達は教科書マニュアル通りに教えても意味が無い奴らばかり存在しているからだ。

「神無月はん、神無月はん」

「何だ浪速?」

「僕らどないしたら良いやろ?」

 その後ろには全員が揃って整列していた。

「お前等……。取り敢えず、精霊使いはお互いの得意不得意教え合ってどの場合にどの精霊術を使うのか考えろ。後は知らん」

 それを聞いた精霊使い三人は向こうで話し始めた。

「次に護衛騎士――フレッチャーは後で精霊術の的になれ。浪速はちゃんと自分の得意な得物を使え」

「ええっ!?」

「あ、バレてた?」

 二人がほぼ同時に返事をしたので、それに返答するのは少し面倒だ。

「フレッチャーは危険と安全の境界線上まで行って来い。浪速は動きがぎこちなかった。本来の得物はもっと短い……短剣ダガーか?」

「うわっ、バッチシ当たっとるわー」

 そう言った浪速は腰から二本の短剣を引き抜き、それを軽く振る。それだけでどれだけその武器を習熟しゅうじゅくしているのかが分かった。

「それだけの力量があればあの程度の精霊術はどうにかなったな……」

「いやいや、買い被りすぎやて」

「まあいい。少し待っていろ。――コッペリアル」

「何でしょうか?」

「お前、何キロまでの得物なら十全に扱える?」

「片腕10kg、両腕20kgまでなら対応可能です」

「そうか、だったらいけるな。じゃあ、これを使え」

 そう言って、俺は先程から持っていた武器を渡す。その武器は槍に斧頭、その反対側にはかぎが付いていた。

「これは?」

「ハルバード。向こうで浪速相手で練習してこい」

「分かりました」

「えーと、わいは……」

「駄目」

「まだ何も言っとらんのに~」

「コッペリアル、もうっていいぞ」

「はい」

「ちょ、字が違う……って、うわっ!」

 浪速は何か言おうとしていたが、コッペリアルが振り下ろした斧頭がそれを中断させる。

「ちょ、待って、嫌ぁーーー!」

 悲鳴を上げながら浪速とコッぺリアルはどこかへ行ってしまった。

「委員長はこれでも読んでなさい」

「これは……兵法ひょうほう指南しなん書?」

「指揮官するならもっと実戦的な知識が必要だ。で、それはこれを読む事である程度補える」

「はい、頑張ります!」

「で、残った二人は俺と延々と組手しようか」

 俺は二本の剣を構えて、顔を引きつらせた残った二人に襲いかかった。




 ドカーン!


 暫く各自で訓練していると、何処からか爆発音が聞こえてきた。

「あっちは浪速達が行った方か……!」

 俺は爆発音のした方へ走り出す。

 途中にあった森を抜けた先に居たのはハルバードを杖代わりにしているコッペリアルと地面に倒れている浪速。そして、その前で長剣を振りかざしている一人の少年だった。

 それを見た俺は左手に持った剣を投擲とうてきした。目標は今にも振り下ろされようとしている長剣。


 ガキィン


 金属と金属がぶつかり、にぶい音がひびき、長剣は男の手からはじかれる。

「誰だ!」

 少年は直ぐ様こちらに向き直り、誰何すいかの声を投げかける。

 しかし、俺はそれに構わず浪速達の元に駆け寄る。

「大丈夫か?」

「ああ、神無月はん……。お手数かけまして……」

 見た所対した怪我は無い様だ。

「何が在った?」

「私が浪速東を追いかけていると、そこの男性に衝突。彼は謝ったのですが、その男は激昂し、精霊術を使用。それにより、私と彼は損傷ダメージを受けました」

「そうか」

 コッペリアルからの説明を聞いた俺は珍しく怒っていた。

「おい、貴様一体どういう積もりだ?」

「この俺に護衛騎士風情がぶつかったんだ。当然のむくいだ!」

「ああ……貴様は俺が一番嫌いなタイプだ」

 そう言って俺は持っている剣先を男に突き付ける。

「何だキサマ。このオレに刃向かうのか?」

「その積もりだが?というか軽く痛めつける」

「おいおい、キサマはオレが誰か知らないのか?」

「知らん、興味も無い」

 俺は男の戯言に構わず斬りかかろうとした。が、その後の言葉には流石に聞き返さざるを得なかった。

「オレは四大名家の一つ、神鳴家の長男、神鳴かんなり葉月はづき様だぞ!」

「は?」

 その言葉に俺は耳をうたがった。何故なら、此奴こいつが神鳴家の長男である筈無い(・・・・・・・・)からだ。後、自分に様付してるのが滑稽こっけいだったからだ。

 黙り込んだ俺の反応をどう受け取ったのかは知らないが、葉月は得意そうに話し始める。

「ふっ、流石さすがにキサマの様な愚物ぐぶつでも神鳴家は知っているか。分かるだろう?この国の頂点に君臨する天皇に古来より仕えてきた神鳴家の長男に逆らうという事が何を示すのかを」

 それを聞いた俺の怒りは先程よりも静かに激しくなり、飛び掛ろうとした矢先……。

「お兄様!?」

 突如聞こえてきた声に出鼻をくじかる。俺は声をした方を振り返り、其処そこにいた少女を見て、俺は一瞬で冷静になった。

皐月さつきか。何の用だ」

 葉月が今叫んだ少女――皐月に話しかける。

 彼女は少しの間、驚愕きょうがくの表情をしていたが、直ぐに表情を真面目な物に変え、葉月に話しかける。

「葉月、これは一体何事ですか?」

「ソイツらがこのオレにぶつかって来たので、少し仕置きしてやっただけだ」

「あれ程無闇むやみに人に対して精霊術を使うなと言われていたはずですが?」

「黙れ!キサマも痛い目を見たいのか!?」

 そこで皐月は葉月を見下す様な目付きをして言い放つ。

「ほう?貴様如きが私を痛い目に合わすのですか?それはとても面白い冗談ですね」

「クッ……!――キサマ、今度会った時は覚えていろ!」

 それに圧倒された葉月は悔しそうな顔をした後、憎まれ口を吐いてっていった。

「申し訳ありません。あの者が迷惑をかけました」

「お前が謝る事じゃない。それより、浪速?貴様今何をしている?」

 俺は地面で不審な行動をしている浪速に対して声をかける。それと同時に、皐月も体ごと地面に倒れている浪速に向き直る。

「ああっ!?神無月はん、もう少しで別嬪べっぴんなお嬢さんのパンツが見れたのに何してくれはるん!?」

 俺は無言で浪速を踏んづけた。

「ギャ!」

 浪速は短い悲鳴を上げて気絶する。

「行くぞコッペリアル。それじゃあな、皐月」

 俺は気絶した浪速の足を引っ張ってクラスの元に戻ろうとする。

「あの……神無月、さん?」

 そこを皐月が恐る恐る声をかけて引き止める。

「さんは要らない。それと、黒刃でいい」

「それでは黒刃。また会えるでしょうか?」

「学校に居る間はな」

 そう言い残して俺は今度こそクラスの元へ向かった。


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