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前代未聞な精霊使い   作者: 夜魔
第一章 新入生対抗戦編
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01 入学初日

「おい!もう一回言ってみろ!」

「ああ良いさ。何度だって言って上げるよ」

 二人の男子生徒――片方は豪華な白い制服。もう片方は質素な黒い制服を着ていた――が何やら険悪な様子で言い争っている。

 それだけではなく、その後ろには決して少なくは無い数の新入生と思わしき同じ制服の生徒達がその二人の後ろにおり、こちらも何やらにらみ合っていた。

 今は精霊使いと護衛騎士の訓練校セフィロト学園――通称セフィロト学園の入学式、その直前である。

 なのに、何故こんなにも殺伐というか一触即発いっしょくそくはつになっているのかと言うと、睨み合っている内の白い制服――精霊科が着る制服――を着た男子生徒の発言が原因だ。

 そいつは、護衛騎士なんて所詮しょせん、僕達精霊使いの壁なのに何で一緒の学び舎で授業を受けなければならないのか。とのたまいやがった。

 それを聞いた黒い制服――騎士科の制服を着た男子生徒がそれに腹を立てて、精霊使いなんて護衛騎士が居ないと何も出来ないくせに!と売り言葉に買い言葉で言ってしまい、その騒ぎがどんどんひろがってしまって今に至る訳だ。


「くだらない……」

「そうだね」

 つい呟いてしまった俺の言葉を聞きとがめる者が居た。その人はどうやら俺と同じ感想の様だ。それに興味を持った俺は、隣に座っている赤髪をポニーテールにした女の子――白い制服を着ていた。精霊使いなのだろう――に質問する。

「へぇ?なんでそう思うんだ?」

 話しかけられて驚いたのか、それとも返事が来るとは思ってなかったのか、一瞬、紅い両目を見開いてから少女は話し始めた。

「どっちも言ってる事は間違って無いんだけど……どっちも間違ってる・・・・・・・・・

 普通に聞いたら何を言っているのかと(自分の耳か相手の脳を)疑う所だが、幸い俺はその発言の意図いとに気づいたのでそんな事にはならなかった。

「俺もそう思うよ。半分程度・・・・は」

「半分?残りの半分は?」

「秘密」

「えー、何で?教えてよー」

 少女A(仮)と話していると、騒ぎが最高潮クライマックスを迎えようとしていた。黒い制服の少年は腰に差していた剣を引き抜き、白い制服の少年は手の平に炎を浮かべていた。

「自然精霊使役しえき。精霊の属性エレメントは火、階級ランクはCって所かな?」

「まあそれ位だろうな。ほぼノータイムで火の玉を出した所を見ると、それなりの腕前だな。得意属性なら普通だが」

「そうだね。男の子の方は普通の剣士かー。盾無しなら白の勝ちかな」

「俺もそう思う。――だけど、勝負は起きないと思うよ」

「え、何で?――ってそうか……」

 少女が得心いったとうなずくと共に、閃光がまたたいた。

「止めなさい!重要な式典の前だと云うのに何をしているんですか!」

 先程の閃光を発したであろう人物――精霊科の白い制服(但し、他の人達より若干華美だ)を着ている少女は大声で怒鳴りつけたが、それを聞くべき人達は揃いも揃って目を押さえていて誰も聞いて無かった。

「うわぁー、光精霊使役だ。初めて見た……」

「光精霊は使役出来る人は限られているからな」

 俺達二人は何故平然としているのかと言うと、精霊術――先程の閃光が発生する前に目を閉じて袖でおおったに過ぎない。

「ところで、何で精霊術の発動タイミングが分かったの?もしかして精霊使いの素質が有るの?」

「経験則によるただの感だ。精霊使いとの戦闘経験が有る奴なら誰でも出来る」

「まあ、今のは模範にしていい程丁寧ていねいだったから私も読みやすかったけどね」

 二人で先程の精霊術について話していると、どこからか大人達が出てきて目を押さえている生徒達を運んで行った。

「あー、教師達がようやく出てきたな」

「そうだね。あ、入学式は中止みたい。各自の教室に行く様にだって」

「ふーん。そういやお前はクラス何処どこ?」

「多分君と同じだと思うよ」

「並んだ席が隣だしな……。それじゃ、せーので一緒に言うぞ。――せーのっ」

「「Xクラス!」」

 その近くでは先程の女生徒が教師に精霊術を使った事を注意されていた。


 Xクラス――それはセフィロト学園の真面じゃない問題児が集められるクラス。

 その教室には現在、良く言えば個性的、悪く言えば変わり者が集まっていた。


「点呼取るぞ。居ない奴は居るか?」

 教師さえ変わり者だった。

「初日なんやから分かる奴居らへんやろ!」

 西部なまりの男が勢い良くツッコむ。

「全員居ますよ?」

 金髪ストレートヘアの少女がそれにやんわりと反論する。

「何で分かるん!?」

「え?クラス分けの名簿で人数覚えてたので……」

「あ、なる程なー」

「良し、全員出席っと……。どうやらこのクラスには先程のバカ騒ぎに参加した奴は居ない様だな。――まあ、そんな正面まともな奴がここに居る訳ないがな」

 そこで教師は咳払いをしてから自己紹介をした。

「私はエレーネ・アイゼンブルグ。君達を三年かけて真面まともにするのが私の仕事だ。ちなみに、私も元Xクラス――君達の先輩ということになるな」

 教師――エレーネはかなり酷い事を言ったが、誰もそれに異論は無い様だった。

「まあ、入学式が無くなって時間は有るし……、それぞれ自己紹介と行こうか。右前から順番に後ろに言っていけ。――ああ、最後まで行ったら隣に折り返すんだぞ」

 その言葉を聞いた右前の少女が立ち上がる。

「先生、何を言ったらよろしいでしょうか?」

 黒い制服を着た銀色のショートヘアの少女が尋ねた。

「それ位自分で考えられる様になるのがお前の目標だな……。自己紹介なんだから名前と学科、それと好きなものでも言え」

「はい。名前、メイデン=コッペリアル。学科、騎士科。好きなもの、無し。――以上です」

「少しは変化を持たせろ。まあいい、次」

「はい、私は――」


 そうして恙無つつがなく自己紹介も進み、最後に俺の番が回ってきた。

「では最後だ」

「はい。名前は神無月かんなづき 黒刃くろは。学科は騎士科、嫌いなものは精霊使いです。でもそれ以前に人間として好きな人間なら精霊使いでも問題有りません」

 俺の自己紹介を聞いたクラスメイトは同じ疑問をいだいただろう。それは――


『何で君、この学校に入ったの?』

――用語解説


精霊科/騎士科:精霊使い/護衛騎士の教育を行う

 専門科目以外にいては扱いに違いはない


使役しえき:精霊使いが精霊の力を借りる事


自然精霊:自然中に存在する精霊

 環境によりいる精霊の属性(下記参照)の比率が異なる。

 対義語―契約精霊


契約精霊:精霊使いと契約した精霊

 自然精霊を扱うよりも強い力を引き出せる。


属性(エレメント):精霊の性質を表す

 火、水、土、風、光、闇の基本六種が存在し、その中で細かい属性が有る。光属性と闇属性は使役できる精霊使いが少ない。


階級(ランク):精霊の力の大きさを表す

 S、A、B、C、D、Eの5+1段階評価である Cは不定形な精霊の中で強い部類に入る。


剣士:剣を使って戦う護衛騎士

 同時に盾を持つ者も少なくない。


精霊術:精霊を使役して起こす事象じしょう、またはその過程プロセス


Xクラス:問題が有る生徒が集められたクラス

 そのクラスに所属している者は精霊科、騎士科関係無く授業が行われる。

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