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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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11 夢の国と鬼の形相


 「なんで、せんせーいるのー?」

 もっともな疑問だと思う。

 しかもかなりおめかししているわけで……。


 「アンジュちゃんをお迎えに来たのよー」

 「?」

 首を傾げているアンジュちゃん。

 うん。そういう反応になるよね。


 「まぁ、ともかく無事でよかったよ」

 「そうですね」

 気がつけばもう薄暗くなっている。

 パレードまでは少し時間があるな。

 折角だから俺も少し見て回りたい。

 アンジュを迎えに来たはずなのに、気が付けば俺も楽しみにしている自分がいた。

 別に、高いから元取りたいとか、そんな気持ちは決して、決してない。うん……。いやほんとに。

 って、俺は誰に言い訳してるんだろうな。


 「アンジュちゃん何か見たいのとかある?」

 「んー」

 きっと、クマさんとかネズミさんと言うんだと思った。

 だが、そこから出た言葉は予想もしなかったものだった。

 そして俺にとっては最悪の内容だった。


 なんでも、ダイチ君とやらの言っていたアトラクションに乗りたいと。

 だが、ごめんな。絶許マシンは苦手なんだ。

 他のにしような?


 「あああああああああああああああああっっっっっ!!!!!!!!!!!!」

 「わあーーーーーい!!!」

 「きゃああああっ!!!」


 どうして並んでいなかったんだ。

 かなりの人数が並んでいれば、混んでいることを理由に拒否できたのに。

 それに、アンジュちゃんの身長制限もパスしてしまうし……。


 でも、一番衝撃だったのはあのアトラクションだ。

 一回高いところから落ちて終わりじゃないんだな。

 ゆっくりと登っていく間、ずっと祈ってた。

 そして、光が見えた瞬間、これで終わりだと思ったら、ちょっとだけ落ちて戻るんだもんな。

 そこからはもう絶望しかなかった。


 萌歌さんとアンジュちゃんが降りたところで写真を現像してもらってたが、俺の顔は真っ白だった。

 薄暗いのに発光しているかのように真っ白だった。

 きっと俺の前世はヤコウタケかもしれない。あ、でもあれは緑に光るから違うな。


 そんなことを意識朦朧としながら考えていた。

 「だいじょーぶ?」

 ベンチで項垂れていたからだろう。アンジュちゃんが声をかけてくれた。


 顔を上げると、チュロスを食べていた。

 「ひとくちあげりゅ」

 「ありがとな。でも、今はいいかな。アンジュちゃんが食べていいよ」

 気持ちだけ受けとっておく。多分食べたらマーライオンに進化できそうで……。


 それから、いくつかのアトラクションを巡った。

 なぜか、全部タイミングよくすんなり乗れてしまった。


 そして、最後にトドメの絶叫系アトラクション。

 俺のライフはもうゼロだよ。

 いや、マイナスかな? 足がガクガクしていて立っているだけでもやっとだ。

 萌歌さんが腕組みして支えてくれなかったら、産まれたての子鹿のようになっていただろう。


 パレードに出ていても違和感ないかもしれない。

 新キャラのバンビとして。


 そんなことを思っていたら、いつのまにかパレードの時間になっていたようで、いろんなキャラクター達が乗ったイルミネーション満載の乗り物が目の前をゆっくりと過ぎていった。


 初めて見たけどすごいなこれ。

 アンジュちゃんも目を輝かせて、両腕をあげて喜んでいた。

 そして、花火もあったようで、打ち上がるたびに大喜びで飛び跳ねていた。


 だが、やっぱり体力的に辛かったのか、船を漕ぎ始めたので抱きかかえる。

 「やっぱりおねむなんですねー」

 「結構頑張った方ですね。多分相当楽しかったんでしょう」

 二人でアンジュちゃんの寝顔を見る。


 「ところで、どうしてここにいたんですか?」

 「それは……」

 なんて説明したものだろうか?

 花火も終わり、そろそろ閉園の時間だ。

 帰りの電車に揺られながら、駅に着くと殆どのお店は閉まっていた。

 電車内では人が多く、アンジュちゃんの話をすることはできなかった。


 「今日はお疲れ様でした」

 「お疲れ様です」

 「うゆ……」

 背中で抱きかかえていたアンジュちゃんが起きたようだ。

 『ぐう〜〜〜』

 盛大なお腹の音が鳴った。

 そりゃあ、お腹すくよな。

 「折角ですし、どこかで食べてから帰りましょうか」

 「そう……ですね」

 だが、こんな時間だと居酒屋くらいしかやってないんだよな。


 意外とやっているもんだな。

 イタリアンのお店がやっていたので、入ってそれぞれパスタやピザなんかを頼んだのだが……。

 「あー、だめだよー。それは辛いやつだからねー」

 「でも、せんせー、いっぱいかけてるー」

 「うん。でも、きっと酔っ払って味なんてわからないから……あー、だーめ」

 「ちょっとー! 聞いてんのー!」


 アンジュちゃんはタバスコやハバネロの瓶を取ろうとする。

 萌歌さんは頼んだお酒を一人で飲んで酔っ払っている。

 ちなみに、俺に酒を飲ませようとしていた。


 俺が食べ終わる頃には、二人とも眠ってしまっていた。

 会計を済ませ、店を出る。

 背中にはアンジュちゃん。隣には、目を覚ましたけど、少しほろ酔いの萌歌さん。

 「萌歌さんお家はどこですか?」

 「んふふー。亨くんは狼ねー。ダメよー、教えなーい」

 これは困ったな。


 仕方なく、うちへ寝かせるために連れて帰ったら、エレナさんが鬼の形相をしていた。


 夕食の準備はしておらず、アイリさんはまたぞろ仕事の鬱憤を酒に逃げて、挙句女の人を連れ帰ったらこうなるのは当然かもしれない。


 確かにこんな遅い時間までアンジュちゃんを連れ出してしまったことは、反省すべき点だろう。

 心配もかけてしまったし、そこは申し訳ないと思う。 

 でもエレナさんの怒りの理由はそこではない。


 「どうして、ディアレストランドへ行くのに、わたしに声かけしなかったのよ!」

 これだもんなぁ。

 でも、その後、そういったテーマパークに転移するときは、ほぼほぼエレナさんは用事が入っているのだった。


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