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「なんだ!?」
「こ、これは……」
その塔にはヒージの話す、キュービの張った陣があった。そこから放っているのであろう光は、そこに近づいてはいけないような雰囲気を醸し出している。
レミィはふと、胸騒ぎを覚えリオに声をかける。
「ねぇ、コロンさんは……?」
「そうだ、あいつに連れられて!」
リオは窓からヒージへと目線を移す。ヒージはそれに気づき、コロンの居場所について口を開いた。
「リオさんと一緒にいた方は、地下へお通しいたしましたが。そこでは魔力を増幅させるための陣があります故……」
「……お三方さぁ、ちょっと甘いんじゃないの?」
そのいきなりの声に、三人は息を呑んだ。先程まで、なんの音も気配すら感じなかったそこに、ニヤつく番兵服姿の少年はいた。
「誰だ」
最初に口を開いたのはリオだった。その反応に、番兵服姿の少年は満足そうに口角を上げる。
「いいねぇ。思った通りの威勢。そうでなくっちゃ」
「あなたは、城の番兵ではありませんね」
「ん? いやぁ、アンタは気配が違うから、気づいているのかなーなんて思ってたんだけどさ。本当に無防備すぎ。いろんな話がダダ漏れ。もっとうまくやりなって」
ヒージの問いかけにも、番兵服姿の少年はニヤつきながら答える。どこか遊んでいるかのような口調には、余裕を纏って隙がない。
その姿を見ながら、リオはあることを思い出した。
「お前、あの時声をかけてきた番兵!」
「お! ご名答! 気がつくの遅いよー、リィコちゃん」
番兵服姿の少年は、リオとコロンが城に潜入しようとした際に話しかけてきた番兵だった。しかし、雰囲気がまるで違う。
ケタケタと笑う様は本当に遊んでいるようで、リオの警戒心をさらに強めた。
「ひひひ。まぁそんな警戒しなさんな。オレは誰の味方でもない。この物語を面白くさせたいだーけ」
「物語?」
「うん、そう。今回のオレはすべてをこの眼で見たいから」
「今回……?」
レミィは疑問符をいっぱいつけた顔で、番兵服姿の少年はそれを見ながら満足そうに答えた。
――ドゴォォォォンン!
番兵服姿の少年に気をとられている間に、再びけたたましい爆音。何かが起こっているようだが、それは部屋からでは見えなかった。
「大変、行かなきゃ」
レミィは目の色を変えそう呟き、部屋から飛び出した。呆気に取られるリオを置いて、ヒージもレミィを追う。番兵服姿の少年は二人を止めることなく、そのまま見送った。
「あ、おい!」
「はい、待った。リィコちゃんはこっち」
「俺はリィコじゃねぇ!」
「あー、もう。うるさいな。もっと力をつけてから威勢張りなよ」
そう言うと、番兵服姿の少年はリオのこめかみ目掛けて拳を振った。
「ぐっ」
反射的に受身をとったが、効果なくリオは床に崩れ落ちた。
その様子を見ながら、番兵服姿の少年は被っていた兵帽を取り、リオを雑に担ぐ。
「出てくるつもりじゃなかったけど。そっちが勝手にやるならオレも好きに動くぜ。なぁ、キュービさんよ」
窓の外で繰り広げられている何かを感じ取りながら、その場を後にした。




