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「こ、こハ……」
コロンは城壁と繋がる塔へ連れてこられていた。
床一面には魔法陣が描かれ、壁にも術が仕込んであるのがわかる。水晶と炎が怪しく光り、禍々しい気を放っていた。
「……こノ、感じハ」
「なんだ、懐かしいのがいるじゃないか」
嫌な気配がして振り向くと、そこにはコロンが顔も見たくないと思っていた相手が鎮座し、ニタニタと笑いかけてきていた。
「ミゲル……!」
「懐かしいなァ? まだ生きていたなんて。本当にずる賢いな、異端児ってのは」
「黙レ。なぜオマエがこの陣を知っていル」
「オレを誰だと思っている? この国の長! 絶対的存在! 国王ミゲル様だぞ。そこら辺にのさばる異端児なんぞが、話して良い相手ではない」
ミゲルの隣には二人の人影。息子である二人の王子たちの姿があった。その顔はやつれ、生気を失った目をしていた。
「キュービと組んで何をするつもりダ! あの戦いを忘れたのカッ! 自分の息子まで巻き込んデ!」
「巻き込む? 何も知らず、憶測で喋るなど異端児は本当に野蛮だ。我が愚息どもは自ら力に溺れ、それに順応出来なかった。それだけのこと」
「ふざけてル……!」
「頭の出来が悪い奴にはわかるまい。キュービ様は再びあの戦いと同じ力を用いて、世界を統一するおつもりだ。これほど素晴らしいことはない」
盲信しているように見えるミゲルは、コロンの声など届いていないようだった。
睨みつけ、機会を伺うコロンはそのまま動かずいる。
「オマエ、リリカはどうしタ」
ミゲルの妻、この国の女王であるリリカは数ヶ月前から行方知らずとなっていた。前までは二人で国民の前に出向くこともあったのだが、最近じゃとんと姿を見せなくなっていると持ち切りだった。
「ん? ふははは、そんな奴が気になるのか。時期に、お前もわかることだが教えてやろう」
ミゲルが手に持つ長い杖で床をドンッと突いた。その瞬間、魔法陣の上に紫に光る人型の物体が出現した。
「……ナッ」
「魔力は無限ではない。それはお前もよく知っているだろう? こうして、少しずつ集めなければ、消えてしまう。そうだろう?」
「自分の愛する相手までモ!」
「これが愛のカタチだ! オレの力になれるほど、コイツに最高の喜びはない!」
「狂ってルッ」
後ずさるコロンをミゲルは逃すまいと、二人の王子に命令する。
「愚息よ、そろそろ役に立ってくれ。あの異端児を、陣に連れ込め!」
ミゲルが言うと同時、王子たちはコロンに向かって突撃した。
コロンは体制を整え、構えた。目の色を変えて向かってくる二人をサッと交わすが、壁にぶつかってもなお操り人形のように立ち上がり、再び助走をつけコロンへと攻撃を仕掛けた。
塔の気に引っ張られ、立っているのもやっとなコロンは避けるたびに体力を消耗していく。
「こんなの埒が明かなイ」
疲れを見せるコロンに、ミゲルは満足そうに微笑みかける。
「なにが最大級の魔力持ちだ! オマエなど、とうに消えるべき存在だろう!」
ミゲルは杖を振りかざし、魔法陣へ術を唱えた。陣は鈍色に光りだし、コロンを捕らえる。
「その魔力は、オレが貰い受ける」
陣から伸びる光りがコロンを縛り、力を強めたその時――、
「本当に、野蛮な魔法ばかりで反吐が出る」
眩い光に包まれ、衝撃と共に魔法陣からの光りも消えた。
コロンは縛りが解け、床に足をついて一定の距離を取る。その眩い光に感じる魔力はとても見知ったものだった。
「ハッ、助けなド……呼んではいなイ」
「はいはい。そうやって俺の前では強がってなよ、コロンちゃん」
箒に立ち飛ぶルビーが、にこりと笑顔を見せてそこにいた。




