4-7
森の中を番兵が歩いている。正確には番兵の格好をしているだけなのだが、そんなことは本人以外誰もわからない。
肩にかかる長い髪はひとつに結び、兵帽から見えている。歩くたびに、赤い雫型の耳飾りがゆらゆら揺れた。
「なぁ、いるんだろ? オレ他にもやることあるんだからよぉ、気軽に呼び出さないでくれねぇ?」
『おまえの、やること。たかが、しれている』
「相変わらず酷いな」
そこに現れたファルは、番兵をじろりと睨む。
呼び出したのは自身なのだが、あまり本意ではないようだった。
『なにも、するなと』
ファルの言葉に少しの怒気が交じる。それを知ってか知らずか、番兵はニヤニヤとそれに応える。
「それ、忠告? オレはなにもしてないぜ。道筋を示してやっただけ。なぁ、使い魔? ご主人に、気づかれるぞ?」
『それは』
「ないとは言い切れないだろ。城に入るぞ、あんたらの気にかけている人たちが」
ファルは番兵の言葉を聞いて黙る。
何かを知っているが、何も知らない。お互いの空気感はいつもそうで、本心などわからない。
「ご主人だけを守れよ。それが使い魔だろ? オレは行くぜ。ご忠告、どうも」
そう言うと、番兵は突風とともに跡形もなく消えた。まるで最初からいなかったかのように。
『いきろ、きる』
ファルの言葉は虚しく風に溶けていった。




