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Magical★Spirits-マジカル★スピリッツ-  作者: 晴埜あこ
4.城の中の思惑

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32/35

4-3


 ヒソヒソと聞こえる声たちに、リオは耳を塞ぎたくなる。

 

 城下町の中でも特に賑わいを見せるそこは、多種多少な人々が行き交う。城に一番近い繁華街ということもあって、兵たちや城の働き手と思われる者たちも多くいた。

 

 リオたちはハウスメイドの募集へ参加するために、もちろんメイドドレスでそこまで来たのだが。

 

「あの二人、本当にハウスメイドなのかしら?」

「格好はそうだけど、派手すぎない? 踊り子とか?」

「おい、おれ声かけてみようかな」

「待て待て、どっちか決めようぜ」

 

 聞こえてくるのは、明らかに自分たちに向けられる声。

 確かに、ハウスメイドとして用意したドレスだったので形は間違いないが、コロンが用意したものは城に支える格好としては少し派手だった。

 

「おい。コロン。……目立ってどうする」

「アハハ。すごいなナ、これほど人気だとハ」

「そういうことじゃないだろ……っ!」

 

 焦るリオに対し、コロンはどこか面白がっている様子だ。それに不服なリオは多少悪態をつきながら、城へと向かっていった。


 

 人気の少ない路地に差し掛かり、リオは壁に点在している張り紙を見つけた。

 

「これか、城のハウスメイド募集ってのは」

 

 そこには、『大至急! 城内での準備に伴いハウスメイド募集』と書かれている。賃金などの記載はなく、何の準備かもわからない不親切なものだ。

 

「数日前かラ、何か慌ただしく貼っていた目撃情報があってナ。罠なのか知らないガ、乗ってやるのも手だろウ」

「まあ、そうか」

「おい、お前たち!」

「「!」」

 

 張り紙に気を取られていた二人は、背後から近づく人物に気がつかなかった。

 

 振り向くとそこには、兵帽を深くかぶった番兵がいた。深くかぶった兵帽のおかげで、全く表情は読み取れない。

 呆気にとられている二人をよそに、番兵とおぼしき人物は続ける。

 

「お前たち、城のハウスメイドだろう。こんなところで何をしている。これから第三王子の結婚式が行われるんだ。早く準備へ戻れ!」

「結婚式⁉︎」

 

 思わぬ単語にリオは声を上げた。それと同時にコロンはリオの足を思い切り踏んづけた。

 

「いっ⁉︎」

「ごめんなさぁイ。この子ったラ、全然周りの話聞いていなくテェ。すぐお城に戻りマァス。ほぉラ、リィコ行くわヨォ」

 

 かなりの猫なで声で返事をしたコロンは、痛がるリオをズルズルと引きずり後ずさりする。

 

 その様子を、若干引き気味に見ているようだが、番兵は答える。

 

「……あぁ、お前たちは式場準備だろう。城内の教会へ向かいなさい」

「ハァイ。ほぉラ、リィコは?」

「わ、わかりました……」

 

 そう言うと、コロンはそのままリオを引きずり、城へと向かっていった。


 

「おい、リィコってなんだよ。それに、あいつ何か勘違いしてないか?」

 

 番兵が小さく見えだしたところで、リオはコロンに声をかけた。

 

「勘違いしているなら好都合。よくわからないガ、行き先まで提示してくれたしナ。そして、少年はもう少し心の声を抑えロ」

「うっ、悪かった。でも結婚式って……もしかして」

「その可能性ハ、あるかもな」


 

 リオとコロンが見えたなくなったそこに、まだ番兵はいた。

 

「クソ。結局オレが動かなきゃダメなのかよ。城の奴ら、本当に使えねぇな」

 

 小言を洩らし、サッと兵服と兵帽を脱ぎ捨てると、自身の黒い服に身を纏う。右肘まである手袋を、手際よく直し、加えて長い金髪を整えた。

 

「さーて、楽しませてくれよ。リィコちゃん」

 

 ニヤニヤと城の方を見上げ、風とともに姿を消した。


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