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──ドゴォォォン! バゴォォォン!
「もう! どうして! なんで出来ないの!」
爆発音と白い煙にまみれて少女は立っていた。
手には箒ほどの長さで、先端が筆状になっている杖。周りには落書きのような跡。木々は枝が焦げたり、根こそぎ倒れていたり。まるで台風が通ったかのような有様。
「ずっと同じ陣を描いているのに……いつもどこで間違うのかなぁ……」
手にしている杖で地面をぐしぐしと刺しながら、少女はそんな泣き言を口にした。
「きちんと練習しないから、ですよ? レミィ」
「……っ!」
レミィと呼ばれた少女が声をした方向を見ると、家から飛んできたであろうルビーがふわりと降り立った。
「あ、ルビー……」
そう呼び捨てるとほぼ同時、ルビーはレミィの頬を思いっきり引っ張るとあからさまに黒い笑顔で忠告する。
「ルビー、先生……でしょ? ね? レミィ?」
「いだだだだ、は、はひぃ、わかりまひたぁ。るびぃしぇんしぇぇ」
痛がるレミィをよそに、今度は満足した笑みをルビーは見せた。
「はい、よろしい」
数分前とは打って変わって語尾にハートマークが付いた口調で、レミィの頬を離した。
「まったく……私を誰だと思っているのですか。そのような調子だから、低級魔法にも手こずるのですよ」
「わかってまーす……」
そこまで痛みもなかったが、レミィは自分の頬が取れていないかを確認しつつ、ひとつ疑問を抱いた。
「ところで、ルビー……先生。まだ日が暮れるまでは早いよ? この時間、まだ魔物は出てこないはずじゃ」
首をかしげるレミィに対し、ルビーは少し声色が変わる。
この森では日が暮れると魔物が出る。魔物とはまだよく解明されていない生物で、軟体系から屈強系まで様々。共通しているのは、魔法や剣術で急所である部分を攻撃すると跡形もなく消えてしまうことだ。
前までは初級レベルと分類される狩りやすい魔物ばかりで、少し時間をかけて頑張ればレミィでも倒せた。それなのに最近は様子がおかしく、中級レベルの魔物も多く出現するようになっていた。
「少しばかり、気になることがありましてね。お湯も沸いたので、ティータイムにしてお話しましょう」
「うん! 先生の紅茶の入れ方だけは格別だもんね!」
──ピシャン!
「本当に、余計なことばかり言うお口ですね」
笑顔とは裏腹に、ルビーはレミィへ口枷の魔法をかけるとそのまま家の方まで歩き出した。
「んー! (ひどいー!)」
結局、レミィは何も発言できぬまま、家まで戻ることとなった。




