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ミューハ国はジャムアルータ大陸で最初に魔法文化を広めた国だ。
かつて、この大陸には偉大な魔法学校がポツンとひとつ存在しているだけだった。その魔法学校は誰が創設者かもわからなかったが、皆が魔法という力に魅せられ入学した。
その中で、とても優秀な三人の魔法使いがいた。その魔法使いの一人が、このミューハ国を立ち上げ、魔法文化の基盤を作ったとされている。
国というには小さすぎる集落だったそこは、いつしか上に立つものが現れ、その魔法使いも本当に存在したかもわからない、そんな言い伝えとなった。
優秀な三人の魔法使いが、今どこで何をしているかは誰も知らない。
たとえ、ミューハ国の王家に生まれようとも。
「はぁぁ……」
ミューハ国の第三王子、サンティトルは大きくため息をついた。
玉座に座るにはあまりにも似つかわしくないその風貌は、普段そこにいないことをまざまざと醸し出されていた。
それもその筈、普段はそこにサンティトルは滅多に居座らない。だが、今のミューハ城には、王家の人物はサンティトルしかいなかった。
数日前、第一王子、第二王子は共に魔物の討伐へ行くといきなり言い出しどこかへ消えてしまった。そして、国王ミゲルも行方知らず。
同じくして、謎の人物から言伝を預かったと、一人の番兵がサンティトルを訪ねてきた。内容はいたって簡単で、『黒髪の少年を見つけてほしい』というものだった。
この国で黒髪の人物など今まで見たことがない。その言伝の続きに『異世界からの侵入者である』ともあったので、サンティトルは国王と兄たちが不在の時に侵入者ともなると面目がつかないこともあり、慌ててその言伝通りに動き出した。
「まだ見つからんのか」
「はい、坊ちゃん」
砕けた姿勢でヒージに声をかける様は、すでに何もかもを諦めているかのようだった。そんなサンティトルを、ヒージはいつものくしゃついた微笑みで見守る。
「あぁぁ、どこにいるんだ。もう何日経った? このボクが探しているのだぞ! 兵たちは何をしている!」
「三日でございます、坊ちゃん」
悪態をつくサンティトルの疑問だけ的確にヒージは返した。
「ぬぬぬ……。父上も兄上もどうしたというのだ。本当に、例の……アイツと一緒にいるのか? それならばボクも行くべきではないのか!」
「アイツ、といのはキュービ様でございますね? 坊ちゃん。それに、坊ちゃんまでいなくなってしまっては、誰が玉座につくのですか」
「んんんん、もうよい! また新たな言伝も届いていたな。あの件はどうなっている」
ヒージは懐から紙切れを出した。言伝を預かった番兵は、突然相手が出てきて伝えてきたと言い、手元にあった紙切れへ殴り書きしたという。
そこには箇条書きでいくつかの事柄が書かれていた。
ヒージはその紙にある箇条書きを繋ぎ合わせて読み上げる。
『黒髪を探し出せば褒美に加え、金髪の少女をサンティトルの妻とする』と。




