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「すげぇ音と魔力を感じるなぁ」
城壁にある塔から森を見渡す少年は、赤い果実を一齧りしながら風を感じている。兵服に身を包んでいるが、その身のこなしは明らかに他の番兵たちとは違う。
「なぁ? 使い魔。いいのか、ご主人に黙ってオレに話しかけてきて」
『おれには、おれの、やりかた、ある』
「へぇ? そういうの、嫌いじゃないぜ。でもオレは何も知らない。まだ、な」
『べつに、いい』
ファルは少年の持つ果実を一片もらい、少年に話を聞いていた。その様子を面白そうに、そして愛しくも哀しくある表情で少年は見ている。
「お前、いい情報屋になれるよ。紹介してやろうか? その筋のヤツ」
『うるさい。しっているから、やってる、それだけ』
「過去を? いいヤツだな。オレの使い魔にしたいくらい」
『ことわる』
調子よく喋る少年をファルは躱す。
『おまえこそ、もどらなくて、いいのか。あちらに』
「ん? あー、いいよ。アイツ等ならまだ。それよりも、こっちが先かな」
『そうか』
再び、愛しくも哀しくある表情で、少年はどこかに思いを馳せた。
塔には心地よい風か絶えず吹いて、ファルはその度に体を震わせる。少年が撫でてやると少し満足そうにした。
『おれ、いく』
「おう。オレもやっとこの目で世界の変化を見られることを期待するよ」
『うまく、いきろ』
「へへっ、お前もな」
言われたファルはこくんと頷くと、畳んでいた羽根を広げてふわっと舞い、その場からいなくなった。
少年は手に持つ果実を食べ終わり、その場に寝転んだ。
「うまく、いきろ。……それが出来たらねぇ」
ファルに言われた言葉を反復して、少年は目を瞑った。
どこか懐かしい、思い出に浸りながら。




