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「見失っただと!?」
「も、申し訳ございません、王子……」
「で、ですが、何せあの時は辺りがもう暗く、黒髪がなかなか……」
「もうよい!」
城では番兵たちが一列に並べられ、玉座の前で伏していた。
王子と呼ばれた玉座についている男は、綺麗に整えられた前髪を振り乱しながら番兵たちに激怒する。頭にはこれでもかという装飾がなされた王冠を被っており、その似合わなさ加減が彼の立場を物語っていた。
「くそ……探して欲しいと頼まれ、褒美もやると言われているのに。このままでは国の笑いものだ」
一人ぶつぶつと呟く王子は、番兵が一人足りないことに気がついた。
「お前たちはまともに集合もできないのか! 一人足らないではないか!」
「え、いや……自分たちは、これで全員ですが」
「なに? 昨日、黒髪を捜索する隊の時にはもう一人いただろう! ボクの記憶力を馬鹿にするのか!」
「い、いえ! そういう訳では!」
何が何でも目的を成し遂げたい王子は、全く別のことでも腹を立て、番兵たちにいちゃもんをつける。番兵たちはそんなこと慣れっこで、形だけの謝罪を繰り返した。
その様子を、玉座のから、ニヤニヤと聞いている番兵たちと同じ兵服を纏う人物がいた。その肩まで伸びた髪はひとつにくくっている。
「へぇ……? ただの馬鹿だと思っていたが、意外と記憶力いいんだ。もう少し、こいつらに任せてみるか」
そう言うや否や、サッと身を翻しその場から立ち去った。
「ふん。お前たちがボクに従順ではないことなど、当に知っている。そんなことよりだ。黒髪は我が国に相応しくない。ボクの言葉は国王の命でもあるのだ! わかったら早く探せ!」
「はっ!」
王子が少し複雑そうな顔で番兵たちに命令し、それに応えるように番兵たちも動き出し玉座の間を後にする。
「ふぅ……。おい、ヒージはいるか」
「はい、坊ちゃん」
王子は一息ついて玉座に座り込む。
ヒージと呼ばれた白いヒゲを蓄えた、執事服の男はすっと王子の傍まで寄った。先程まではいなかった、しかしずっといたような、そんな雰囲気を醸し出している。
「ボクじゃ、この国をまとめることは出来んのか」
「いえ、坊ちゃんはよくやっておりますよ。王もそれを知って……」
「わかっている!」
何やら葛藤を見せる王子をなだめるも、その言葉を自ら遮った。
「あいつはどうしている。黒髪の他に、また要求してきただろう」
「ええ。それが……」
ヒージの話を聞き、王子はニヤリと笑みを見せた。
「……ほぅ。それは、楽しくなりそうだな」




