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斧使いの魔導士  作者: あきのもと
始まり。
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第1話

カーンカーンカーン


大きな木を叩く音が森の中に木霊する。


カーンカーンカーン



朝の木漏れ日があたりを照らしながら一人の少年が斧を思い切り振り下ろしていた。


「ふーっ」


疲れたのか斧を地面につけ一息つくと近くに置いてあった水筒を手に取り一気にゴクリと飲んだ。


「さて、昼前にある程度切っとかないと。」


そういうとまた斧を握り直しカーンカーンカーンという音があたりに響き始める。小一時間ほどすると、ついに今までとは違うドォーンという音が鳴り大地を揺らした。


「よしっ!」


少年はようやく倒れたその木を嬉しそうに見つめると離れて見守っていた父親の所に急いで報告に走った。


「おとーさん!あのおっきな木切れたよ!」


「おぉ!ルドルフ!すげえな!強化魔法が使えるからって硬くてなかなか大変だっただろ。すまないな。俺が腕折っちまったばっかりに。」


そういうと折れてない手で10歳前後の少年の頭を撫た。


「来週には治療魔法の先生が村の方に来てくださるそうだ。その時に直してもらえると思うから悪いがもう少し代わりに頑張ってくれな。そんじゃちと早いが昼食にするか!」


そういうと父親はバックの中に入れていたパンを取り出して半分に分けて息子に渡した。もらったパンを一杯に頬張ると


「あと2本今日中に切ったら今日は終わりでいいんだよね!それじゃさっさと切っちゃお!」


「あぁ。でも父ちゃんは切った木の加工を魔法でやっとくからあんまり離れんなよ。危ないと思ったらすぐやめて俺を呼ぶんだぞ。まぁ強化魔法使っときゃ木位なら直撃してもケガで済むと思うがそれでも油断するなよ。俺みたいに腕折れちまうからよ」


そういうと父親は自分のパンを食べ終え、さっき切った木の方へ詠唱棒を出しながら向かっていった。自分も、切る予定の木をいくつか見て回り早速どれを今日切るか決めて切り始めた。


カーンカーンカーン



予定通り2本の木を伐り終えるとさっさと父親に報告してから魔法の修行をするためにいつもの川に向かうのだった。


____________________________________


小さいころから魔法が大好きだった。


魔法は奇跡を起こすことができる。詠唱棒を掲げて空を飛ぶ人や火を自在に操る人、はたまた姿を動物に変える人、そんな人々の姿を見て子供ながらに羨ましく思った。物心ついた時にはもう物語に語られるような、魔法士たちの頂点である魔導士になるのが夢となっていた。


でも現実というのは残酷なもので自分の使える魔力の量は極端に少なく、なかなか魔力というのは増えてはくれない。どうにかこの魔力を増やせないものかと村の大人たちに聞いて回っては聞いたことを試したが全く成果にはつながらなかった。


魔導士というのは魔法を極めた者に送られるもので生半可な才能や努力では到達できないといわれている英雄の称号であり多くの人々から讃えられてその功績を国王陛下が認めないと名乗ることもできない。


果てしなく遠い夢に何度となく落ち込み、それでもあきらめきれずに空いた時間を見つけては修行に明け暮れる毎日を子供ながらに送っていた。


____________________________________


ルドルフは父親が腕を折ってしまったと聞いた時も魔法があるのだからすぐに治るだろうと思ったのだがどうやらそうでは無いらしい。人には得意な属性というものがあるらしく父はどうも治療の魔法は使えないという。というよりも治療の魔法は人体を正しく理解していないととても危険なのだそうなのだ。


ということで治療の出来る魔法士の先生が村に来てくれるまで1,2週間仕事を手伝うこととなったのだが予想していたよりもきつく、かなり時間がかかってしまった。


時間がもったいないので、急いでいつもの自分専用(と自称している)の修行場である森の中にある川までいくと近くの小屋に入っていった。

この小屋は村の猟師が建てたもので冬に雪が降って帰れなくなったり遭難してしまった時といった緊急時に使う小屋なのだが、あまりにも使われないことから密かに自分が独占して使っているのだった。


「さてそれじゃいつものようにやろうかな、、あれ?」


小屋の奥に隠れるように女の人が倒れていた。

村の人かなとそっと近づいてみるとその女性は血まみれだった。


「だ、だいじょうぶですか!?急いで誰か呼んできます!」


「、、、」


何かつぶやいたように見えたのだがとにかく急がなくてはと思い腰を上げドアに向かおうとした。


「まって」


か細い声でたしかに聞こえた。人を呼びに行こうか迷っているうちに女の人は体を無理やり起こしたので慌てて


「無理をしないでください!結構血が出ていますよ!」


と声をかけると女性に近づいて、ハっと気付いた。


この人は人間ではない。


だって半透明で向こう側が透けて見えるのだから。




そう、これが僕と彼女の出会い。

そして長い長い旅の始まりであった。




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