金魚の糞
「ちょっといいかしら?」
ある日の放課後、他の生徒は皆教室を出て寮へと帰る中、俺はクラスメイトの女の子に呼び止められた。名前は確か、うん、覚えてねぇや。だって初日の自己紹介なんて儀式みたいなもんだし。それで覚えてるやつなんてほとんどいない(はず)。
「何のよう?」
「ずいぶん生意気ねぇ。平民の分際で。」
「「「そーですわ!」」」
しまった一人だと思ったら、いっぱいいた。誰一人わからん!誰だ君たちは!
「貴方、最近ずいぶんと調子に乗っているわねぇ。勇者であるバルナイト様のおこぼれをもらい、この学園に入学できたにも関わらず、この特別クラス、しかもAクラスに入学し、挙げ句の果てに勇者様や殿下にまるで金魚の糞の様について回る。全く、腹立たしいですわ!」
こら!女の子が糞とか言っちゃいけません。
それと勘違いするな。俺がついて回ってるんじゃなく、あいつらが勝手にまとわりついてくるだけだ。
「貴方の様な、特に選ばれたわけでもない平民は、例えこのクラスに入れたとしても、教室の隅でひっそりと学園生活を送るべきですわ!」
うーん、この小娘中々に酷いことを言う。こんな事は例え前世でも言われた事がないぞ。これ今ルッソやスーがいたら大変なことになっていただろうなぁ。尚、ルッソとスーは洗濯物を取り込みに先に寮へと帰って行った。
〜その頃のルッソ〜
「ん?今ご主人様が私の事を考えている様な?しかし、ご主人様の洗濯物を取り込む今この瞬間しかご主人様の匂いを堪能する事ができない。くっ、この寮の一人部屋に私とご主人様が二人っきりで過ごす毎日、ご主人様と常に一緒にいられる反面、このご主人様の匂いを嗅ぐ時間が入学前より減ってしまうとわ!」
「パパとルッソ二人っきりじゃないの。スーもいるの。それよりもパパが帰ってくる前に洗濯物取り込むの手伝ってほしいの。」
「スーもご主人様の洗濯物にくるまっているでは無いか!」
「こうすると落ち着くの。」
「ずるいぞ!私も!」
〜〜〜
「ちょっと、ちゃんとヤーヤコーン様のお言葉を聞いているの?」
取り巻きが話しかけてくる。ヤーヤコーンって誰だよ。
「ほう、この私の名前を覚えていないとは。流石、平民にして勇者様と殿下の金魚の糞なだけはありますわね。私はサリア・ヤーヤコーン。ヤーヤコーン家の長女にして未来の勇者様の妻ですわ!」
へー。バルアイツこんなのを嫁にすんのか?コイツ式に呼んでくれなさそうなんだけど。てか名乗られたけど俺も自己紹介するべき?
「俺は」
「貴方の名前なんて覚える気はありませんわ。何を勘違いなさっているの?」
やべぇコイツぶん殴りてぇ。
「兎に角、私が伝えたいのは平民は平民に相応しい学園生活を送れと言う事ですわ!」
「分かったよ。ヤングコーン。」
「ヤーヤコーンですわ!」
間違えた。いやややこしいこのもろこし女が悪い。
「いいですか!金輪際勇者様に付きまとうのはやめてくださいませ!平民である貴方と勇者様では立場が違う事をお分かりください!」
「分かったよ。スイートコーン。」
「ヤーヤコーンですわ!」
なんか楽しくなってきたな。
「貴方、まさかこの私をバカにしてるんですの?」
「まさか、そんなわけないじゃないか、デントコーン。」
「ヤーヤコーンですわ!」
「プッw」
その時、誰かが笑う声がした。
音からしてもろこしアホ女の取り巻きみたいだが、
「ちょっと!今お笑いになったのは誰ですか!」
「も、申し訳ありません。」
「貴方までこの私をバカにしてるんですの!?」
「いかん!ポップコーンになった!みんな逃げろ!」
「ヤーヤコーンですわ!こら!ちょっと待ちなさい!」
そのまま俺は自分の寮へと帰った。
この日以降俺は、何かとこのもろこしちゃんに突っかかられる様になったのであった。
因みに一度殿下とバルとは距離を置こうとはしてみた。
殿下には
「な、何か気に触る様な事したか?」
と今にも泣きそうな顔をさせた為、もろこしどころか教室中の貴族全員に睨まれた。
バルは距離を置こうとしてもいつまでも付いてくるので諦めた。この様子を見ていたイネ科女とその取り巻きにはさらに突っかかられる様になった。解せぬ!




