魔術試験(3)
やっぱ壁って言うからにはこれくらいデカくないとな。
「パパ凄ーいのー」
「ご主人様、、、なんて、、、大きいのですか、、、」
おいルッソ、スッと言え!
「おい、もう試験は済んだからしまって良いぞ。」
壁の向こうから試験官の声がする。俺は試験官にそう言われてすぐにロックウォールを解く。すると体育館を分断していた壁は消え、試験官が壁の向こうから現れた。
「なんだよ、コレ」
「すげぇ、向こうに行けねえぞ!」
俺を笑っていたやつの反応だ。
「な、何だこれは!何かの間違いだ!さっきのライトボールの後で、これほどの魔力が残っているはずがない!」
何やら天才君が慌てているが、彼の仮説は根本から間違っている。さっきライトボールも、今のロックウォールも、俺にとっては大した魔力ではないのだ。
そのまま、試験は終わり魔術試験最後になった。
「これより、魔術試験最後のテストを行う!最後は君達の実力を試させてもらう!アレを見ろ!」
試験官が指差した先には、大きな的の付いた、何やら機械のようなものがあった。
「今からあの的に向けて初級魔術で攻撃してもらう!このようにな、ファイアランス!」
試験官がそう叫ぶと手から槍の形をした炎が飛び出し、またに向かって飛んで行った。そのまま炎は的に対し、激しい音を立ててぶつかった。しかし、的は炎の槍とぶつかったにも関わらず、壊れたどころかヒビすら入っておらず、代わりに、
『1054』
と謎の数字を的の上に表示しただけだった。
「見よ!あの数字がファイアランスに込められていた魔力だ!あの的は特殊な製法で作られているため、ちょっとやそっとの魔力では壊れず、ぶつけられた魔力を数値化するように出来ている!君達にはこれから的に魔力をぶつけ、出た数値が最後の試験の成績になる!ではまた順番に、前へ!一番!」
そう言うと、再び試験が始まった。
最初の人が 『701』
次の人が 『512』
と順に試験を終えて行き、気付けばまた俺の前の天才君の番になっていた。しかし、
「見ろ、ヘンリー様だ!」
「あぁ。だが俺はこの次の奴の方が気になるな」
「確かに。もしかしたらまた、ヘンリー様なんかよりすごい数値叩き出すかもしれないぜ?」
どうやら周りは、この天才君よりも俺の方に興味があるらしい。迷惑な奴らだ。
「僕よりも凄い、か、」
お?どうやら天才君が試験を始めるようだ。
「確かに、君は僕よりすごいのかもしれない。それは認めよう。だが、だからこそ、君が残念でならないよ。気づいているかい?この魔術試験、今までの二つはただ試験官に対し魔法を見せるだけだったのに対し、今回だけはハッキリ数値を出しているんだ。実はこの魔術試験はこの最後の試験が1番重要なのさ!この試験で出た数値が、最終的な魔術試験の点数の大半を占めているからね!君は前の二つの試験ですでに魔力をたくさん使ってしまっただろう?おそらくこの試験で満足のいく結果は出せないはずだ!だからこそ残念だよ。君なら普通に試験を受けていれば受かっていただろうなに。代わりに見せてあげるよ!この僕の最後の試験のために温存した魔力をね!これが僕の!本当の実力だよ!行け!ファイアランス!!!!!!」
彼が叫べば、彼の手から試験官よりも大きな炎の槍が飛んでいき、的とその周辺にぶつかり爆発した。煙が上がっていたがよく見ると、
『3042』
と言う数字がうっすらと見えていた。
「成程、魔力を温存していた、と言うだけの実力はあるようだな。」
「えぇ、コレが私の本当の実力です。」
天才君はそう言うと俺の方に振り返り、
「見たかい?僕の実力。何度も言うけど、魔力がないならすぐに試験官に言うべきだよ。毎年魔力切れで病室送りになった受験生が出るらしいし。君もそうならないようにさ。」
と忠告をしてきた。何度も言うが、魔力なんかこれっぽっちも切れてないっての。(なお心の中で思っているだけで一度も言っていません)
「パパ負けるななのー!パパ頑張れなのー!」
相変わらずスーだけは俺を純粋に応援してくれる。いつまでもそんなスーでいて欲しい。
所で、煙が晴れた時から気になっていたんだが、
的、燃えてね?
不味くね?あの的壊れないように作られているんだろ?にもかかわらず燃えているって結構不味いんじゃね?そりゃ的全体が燃えてるわけじゃく、ちょっと燃えてる?って感じだけど、それでもやばいんじゃね?みんな何も言わないけど、気付いてないだけ?
はぁ、火、消しとくか。大事にならないようにさっさと消そう。
壊さないように、的は残すように、火だけを消せるように、火だけが消えるように、そう思いながら俺は魔法を唱えた。
「アクアランス」
そう呟くと小さな水の槍が現れた。
「見ろよ!あの小さい槍!」
「おい笑ってやるなって。しょうがないだろ、あんだけ前の試験二つで魔力を使ってたらよ。」
「チッ!期待してたのによ!」
「残念だったな!賭けはお前の負けだぜ!」
槍を笑う声が聞こえたが、槍は的に向かって飛んでいく。そのまま的に命中し、見事的の火は消えた。そして、
『10005』
と言う数字が的の上に現れていた。
その瞬間、歓声が上がった。
「流石だな。君は魔術試験、文句なしの満点だ。」
試験官にそう言われたが、はっきり言って他の部分は周りの歓声で聞こえなかった。
その後も順調に試験は進み、無事に魔術試験は終了した。ただ、俺の試験が終わってから、天才君の姿を見ることは一度もなかった。




