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――さて、ここからが問題だ。
成長すれば霊核が大きくなる。
が、私の場合は元が小さいので大したことはない。
かといって、何年も待っているだけなんて耐えられない。
教わった霊核拡張方法も霊核が小さい今は、使用すると異常に疲れてしまう。
そのせいで、ほんの少しの時間しかできない。
結局、霊核が小さいというだけで、教わったことが何も出来ない状態だ。
むう、少量とはいえ、折角霊気を使えるようになったのに、これは勿体無いよ。
というわけで、何かできないかと色々試してみることにする。
まずは霊装の指輪を作り出し、着用。
付けっ放しにする。
本来は今のように、杖や剣の霊装を携帯した状態が、基本らしい。
兎与田先生は、霊術師として活動していないので、その都度作り出していたけどね。
私は霊装を着用した状態を維持し、延々と霊気を身体に溜め込んでみる事にした。
じっと待つこと数時間。
湯気状の霊気が身体の中一杯になる。
霊気を体に満たした状態だと身体能力が向上する。
凄い動きをしている間、体内の霊気が消耗されるという感じだ。
早速、その力を試してみる。
床に掛け布団を敷き、倒立。
ひょいと簡単に出来てしまう。
姿勢の安定は、筋力の代わりに霊力で無理矢理制御しているのが感覚で分かる。
この感じなら、まだいける。というわけで片手倒立に変更。
どこにも大した負担を感じることなく成功。
まるで軽業師のような芸当である。
ちょっと楽しくなってきた。
このまま片手のみでジャンプ――、出来てしまう。
凄い。これが霊力の力か。
そんな事をしていると体内の霊力が尽きて、バランスを保てなくなる。
ボスンと布団に倒れた。
「あはは! 面白い」
もっとこの感覚を長時間味わっていたい。
数時間溜めて、数秒で終わってしまうのが残念を通り越して悔しい。
なんとか……、なんとかならないものだろうか。
「圧縮してみるか」
初めに思いついたのは、そんなアイデア。
兎与田先生は、霊気の流れを水と表現していた。
だが、私の霊気は湯気。なんというか薄そうだ。
これをギュウギュウに詰め込めば、多少は水っぽくなるんじゃないだろうか、という作戦である。
待つこと数時間。というか就寝を挟んで、翌日。
早朝には、身体一杯に霊気が溜まっていた。
それらを全てつま先の方へ移動させていく。
ごくわずかに抵抗は感じるが問題ない。
「あ、いけるかも」
という実感と共に、霊気が圧縮されていく。
大した苦労もなく、一気に上半身が空っぽの状態にまで持っていけた。
どんだけ薄いんだ、私の霊気……。
そのまま圧縮を繰り返し、二倍の濃度くらいをイメージして体一杯に溜めてみた。
さて、身体能力や霊力の減りに変化はあるかな?
結果、身体能力は向上。霊気の減りは、さほど変わらず。
二倍のパワーを手に入れたわけではないが、明らかな変化があった。
霊気の減りが大して変わらなかったのは、辛い。
ただし、霊気を放出した場合は、明らかな変化があった。
見た目が変わり、しっかりと威力が上がったのだ。
椅子を軽く倒せる威力が出せた時は、ちょっと感動した。
「この調子で、圧縮とパワーの限界を突き詰めてみるか」
今のところ、そのくらいしか試せることがないし、いってみよう。
というわけで、その日も霊装の指輪をつけたまま就寝。
翌朝から溜めるのと圧縮を、ひたすら繰り返してみる。
「……むうううん! そろそろ限界の兆し!」
乙女が出してはいけない唸り声を上げながら全力で力む。
中々圧縮できなくなってきた霊気を、力任せにグイグイと押しこんでいく。
初めは湯気、次に水ときて、今は雪の塊を押し固めているような感触である。
それにしてもこの霊気、違和感がある。というか感覚に慣れない。
質感が湯気の時は、体全体にエネルギーが溜まっているような印象を持っていた。
エネルギー的な何かが充満している感じで、さほど疑問を感じなかった。
だけどその次、質感が水っぽくなってくると疑問と違和感が生じた。
これ、体の中はどうなってるの?
さらにその上は、雪の塊ときた。
体内に異物が溜まっているも同然のはずなのだが、何も感じない。
霊気を溜めたからといって、皮下、内蔵、筋肉、に異物感があるわけではない。
なんというか、質量を感じない透明な何か。それが体内に蓄積している感覚。
今までに味わったことの無い不思議な感じだ。
その感覚を確かめるように、霊気を押し固めていく。
「フン! フン! フーーン!」
力を入れるため、全力で叫ぶ。
思いっきりやったせいか、体内の霊気がカッチカチになってきた。
もう無理か? と、とどめに更に押し込む。びくともしないや。
まるで製氷機で作った氷のようになっちゃったよ。
…………あれ、調子に乗ってやりすぎたかも?
さすがに硬くしすぎちゃったのでは……。
これ、ちゃんと放出できるのだろうか。
とりあえず、出してみるか!
「は、排出!」
焦った私は、霊装に意識を集中。練習で教わったとおりに霊気放出を試してみる。
慌てているせいもあって、うまくいかない。
落ち着け、私。深呼吸だ。
「スー、ハー」
息を吐き出しながら、ゆっくりと出す。出て来い、固めた霊気。
じっくりと腰をすえ、時間を掛けて取り出す感じで挑む。
すると出てきましたよ、霊気が。
指輪から、コロンと床に落ちたよ。
うん……、慌てすぎて霊気放出としては失敗した。
ビームをイメージしなきゃいけないのに、すっかり忘れいてたよ……。
けど、一気にまとめて出てきてくれたのは嬉しい誤算。
体内もスッキリして一安心。どうなるかと思って焦ったよ。
だけど、塊のまま出てくるとはね……。
霊気を放出する際はイメージが重要だ。
焦った私は、塊をそのまま出そうと必死になっていた。
その結果、こんなコロコロ物体がポンと出てきたというわけか。
と、拾い上げて覗き込む。
透明だが、少し黄色っぽい。私の属性色だ。
見た感じは、霊装や霊核っぽいんだけど……。
「くっつかないかな」
その場の思いつきで、指輪に霊気の塊を接触させてみる。
張り付くこともなければ、融合もしない。
でも……。
「いけそうな感じがする? 濃度が足りてない?」
惜しい気配がする。磁石のように引き合うのだ。
これは……、もしかするともしかするのでは?
可能性を感じた私は、塊を再度体内へ戻した。
放出した霊気を体内に戻すって、普通はそう簡単にできることじゃない気がするんだけど、できちゃったよ。
「フン! フン! フーン!」
そしてまた悪戦苦闘。
ひたすら押しこめる。
もっと縮まれ!
もっとカッチカチになるんや!
「うるさいよ! 真緒!」
怒られた……。
転生して始めてかも……。
今度は声が外に漏れないよう、顔を枕に沈めて再挑戦。
ひたすら力任せに霊気の塊を圧縮し続けた。
「……やればできるものだね」
出来上がった霊気の塊は、砂粒サイズ。
今出来る限界まで固めてみたよ。私、頑張った。
その粒を改めて、霊装に接触させてみる。
すると、すうぅっと吸い込まれて完全に一つとなった。
霊気の塊を体内に戻した時とは明らかに違う。完全に霊装と一体化したのだ。
その証として、指輪の一部分が小さく膨らんでいる。
「ヤッタァアアアッ!」
なんという新発見。これには私も大きくガッツポーズ。やったね!
これで霊核小さい問題を解決できる!
すっごい時間がかかって、ちょっとしか大きくならなかった。
けど、成長を待つよりは断然マシ。
これで毎日、霊核を大きくしていける。
将来の展望が明るくなり、自然と顔がニヤける。ムフフ、たまりませんなぁ。
「真緒! 静かにしなさい!」
二度目のお叱り。
おう、失敗失敗。
しかし、これは面白いことになってきたぞ!
よし、これを機会に、この部屋も修行に集中し易いように改善するか。
今の自室は、ザ・子供部屋って感じで雑多な印象だ。
集中しようとすると、どうしても気が散るんだよね。
もっとシンプルな内装にして、注意が散漫にならないようにしたいところだ。
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