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 私の霊核、小さすぎ!




「そういうこった。まあ、身体の成長と共に霊核も大きくはなる。だから、希望を持て。そして、ここで諦めて授業をやめようとするな」


「大丈夫ですって。授業は最後まで受けますよ」


 そこまで授業料が心配なのか。


「そう言ってくれると助かるぜ。じゃあ、続きだ。次は霊装を作り出す」


「霊装?」


 何だそれ。


「こういうやつだ」


 兎与田先生は、手品のように目の前に指揮棒を出して見せた。


 おお、かっこいい!


 あれを構えて呪文を唱えたりするのだろうか。


「早く教えてください!」


 一気に魔法使いっぽくなってきて、ワクワクしてきたよ。


「今までも熱心だったが、更にテンション上げてきたな……。まあいい、続きだ。さっき見つけた霊核ってのは硬い。だが、柔らかくなれと念じると、粘土の様になる。その状態で適当な大きさに引き千切って、こっちに持ってくれば霊装の完成だ。ちぎるのはちょっとでいいぞ。お嬢ちゃんの場合は元の霊核が小さいから、ほんの少しだけを心がけろよ」


「……う〜ん、それじゃあ、一摘まみほどっと……」


 私の宇宙にアクセスし、霊核に意識を集中。


 言われたとおりに、イメージでつまんで引っ張ってみる。


 すると霊核がガムのようにぐにゃりと伸びた。


 見た目に反して柔らかいな、とこねくり回してみる。


 結果、原形をとどめない程変形してしまった……。


 今では完全な立方体である。


 だ、大丈夫かな。


 気を取り直し、端っこを引っ張って千切ってみる。


 するとあっさり分離させることに成功。


 私は欠片を掴み、宇宙を越えて自分の手に移動させた。


 感覚としては意識と一緒に、こちら側へ移動させる感じだ。


 目をそっと開け、手のひらを確認。


 すると黄色いガラス玉のような物があった。


「これが霊装」


「本当になんでも一発成功だな……。俺なんてこの辺りでどれだけつまずいたか……。どうやってアドバイスして霊核を移動させるか悩んでいたのが、全くの無駄に終わったぜ。つくづく一属性なのが悔やまれるな」


「きっと先生の教え方がうまいからですよ。で、この霊装っていうのは何に使うものなんですか?」


「霊核から霊気を引き出すのに使うものだ。あっちとこっちを繋ぐ通路を作り、扉となる感じだな」


「ほほう、霊気というのは向こうから引っ張ってくるものなんですね」


「そうそう、そういうことだ。簡単に言うと、霊気というのは宇宙の中に存在する。そいつを吸い寄せて集めてくれるのが霊核だ。イメージ的には浄水器みたいなもんだな。余分なものを省いて霊気だけを収集する感じだ。で、霊核で集めた霊気を霊装でこちらに引き寄せる。それを体に溜め込んで利用するって寸法だ」


「どうやって引っ張ってくるんですか?」


 説明を聞き、大分イメージが固まってきたぞ。


「勝手に向こうの霊核から送られてくる。後は霊装を直接身体に触れるようにしておけば、身体の中に霊気が入ってくる感覚が伝わって来る。霊装に触れている今なら分かるはずだ。どうだ、何か感じないか?」


 兎与田先生が、こちらを覗きこんでくる。


「霧や湯気のようなものが、体に入ってくるような感じがします」


 もの凄くのっそりとして、温かい何かを感じる。


 量は少ないので、分かりにくいな。


「ふむ、湯気か……。水が流れ込んでくるような感じではないんだな」


「はい、煙みたいな感じですかね」


「そうか……。霊核の大きさが霊気を生み出す量に直結する。多分、霊核が規格外に小さいから、湯気のように感じるんだろうな」


「そういうことなんですね」


 うーん、ちょっとガッカリだな。


「おいおい、そんなに落ち込むなって。そうだ、霊気を放出してみようじゃないか! こんな感じだぞ」


 と、兎与田先生がテーブルにスキットルを置く。そして、少し離れたところへ移動した。


「よく見とけよ。よっ!」


 小さなかけ声と共に、霊装の指揮棒をスキットルに向けてかざす。


 すると、細い光線が照射され、スキットルに命中。ポンと金属独特の音を出して、跳ね飛んだ。


「おお、すごい!」


 魔法みたいだ!


 これはテレビで見たスポーツと同じ仕組みかな。


「お、調子が戻ったな。こいつは霊術の初歩のひとつだ。霊核から送られてくる霊気は水のような質感と例えられることが多い。まあ、お前は湯気だったけどな。今のは、その霊気を光線に変化させ、霊装から発射したってわけだ」


「どうやって変化させるんですか?」


「それは……」


「それは?」


「イメージだ。ビームを想像して力むんだ」


「え、雑……」


 呪文とか魔法陣的なものが関わると思っていたら違った。


 力んだらビームが出るって……。


 くしゃみが出た拍子に暴発したりとかしないよね?


「違う違う、簡単だと言ってほしいな。この霊術は一番使用頻度が高い。なぜかというと、癖がなく発射まで時間がかからないからだ。つまり、緊張などで精神的に追い詰められた時も、コンディションにあまり左右されずに威力と発射速度を安定させることができる優れものなんだぜ?」


「な、なるほど」


「理解したか? それなら実践だ。早速、ビームをイメージして撃ってみろ。霊装と霊装を持つ手に霊気を集めて一気に発射する感じだ。失敗すると霊気がそのまま出てくることになる。お嬢ちゃんだと、湯気が出てくるかもな。本当は門と撃ちだす用に二つの霊装を作った方がいいんだが、お嬢ちゃんの霊核の大きさだとな……。まあ、とりあえず、やってみな」


 兎与田先生がスキットルを拾って、テーブルに設置しなおす。


「分かりました。ビーム、ビームっと……」


 頷いた私はビー玉の霊装を構えて念じた。


 次に、体内に流れ込んだ湯気状の霊気をかき集め、霊装を持つ手に送り込む。


 すると、霊装に吸い込まれていく感覚があった。


 この状態でビームをイメージして力めばいいのかな?


 と、軽い感じでやってみると、レーザーポインターで狙ったかのように糸のような細い霊気が発射された。

 霊装から出た極細レーザーは缶に命中。威力が低すぎたせいか、缶は微動だにしなかった。


 でも、できたよ。自分が光線を放ったという事実に感動してしまう。


 魔法を撃ったみたいで、めっちゃ楽しい!


「……またもや一発成功か。すげえな」


 兎与田先生から、お褒めの言葉を戴く。


「威力は全くなかったですけどね」


「そこはまあ……、これから先に期待だな。よし、実践できたようだし、霊装は一旦霊核に戻しておけ。逆の手順でやれば簡単に戻るはずだ」


「はい」


 霊装って元に戻せるのか。


 作ったらそのままと思っていたけど違った。


 私は早速霊装を宇宙へ返却。霊核にくっつけなおす。


 すると全てが元通り。


 なんとも不思議である。


 それにしても、私の霊装のなんと小さいことか……。


 霊核が小さいから、大きいものを作るのは難しそうだ。


 私も指揮棒みたいな魔法の杖を作り出してみたかったなぁ。


「普通の霊術師はみんなさっきの指揮棒みたいな霊装なんですか?」


 霊装をいじった感じだと、結構自由に形を変えられる印象だった。


 デザインにこだわる人とかいないのかな。


「これは指導や習練用だな。普通は武器にすることがほとんどだな」


「かっこいいですね」


 そういえばテレビで見たスポーツでも武器を振っていたな。


「お嬢ちゃんは、指輪にするのがいいかもな。そうすれば無くしにくいし、身につけやすい」


「それはかっこいいですね!」


 魔法の指輪かぁ!


 それはそれでいいね。


 そして最後の授業として、先生から普通の霊術師が行う霊核の拡張方法も教わった。


「この方法は霊核がある程度大きくないと難しいんだ。だから今から使うことは難しいだろう。もう少し成長したら試してみるといい」と、前置き。


「で、どんな方法なんですか」


「簡単だ。宇宙の中の霊核を二つに分け、付くか付かないかギリギリの距離を保つだけだ」


「なるほど。って、方法は簡単ですが凄く難しいんですけど」


 早速試してみると、引き合う力が強すぎて距離加減が難しい。


「……なぜできる? 普通はそれなりの大きさがないと難しいはずなんだが……」


 と、驚く先生。でも出来ちゃったよ。


 しかし、先生の言う通り、異常に難しい。


「できはしましたけど、凄く集中しないといけないですね。すぐに疲れてしまいそうなので、長時間続けるのは無理だと思います」


「その言葉を聞いて少しほっとしたぜ。なんでも簡単にやられたら、こっちの自信が砕け散るからな。まあ、コツとしては、もの凄く引き合う状態で引っ付かないように維持するんだ。すると、お互いの霊核が無理矢理結び付こうとして霊核が大きくなるって寸法だ」


「な、なるほど……」


 話を聞きながら挑戦しているため、相づちが適当になってしまう。


 要は、頭を引っ張って身長を伸ばすようなものか。


 これは素晴らしい方法を聞いたぞ。


「ったく、他の授業のときより、生き生きした顔しやがってよ。そんなに霊核が大きくなるのが楽しいのか?」


「楽しいに決まってるじゃないですか!」


 ドンドン大きく育て、私の霊核よ。


 とはいえ、この方法はかなり疲れる。


 やる時は、集中できる環境を整える必要もある。


 どこでも、どんな時でもできるわけじゃない。


 そうなると、なかなか育たないだろうな……。むぅ、残念だ。


「というわけで、実践を交えた授業はここまでだ。後は、普通の霊術師がやっている練習や訓練方法を教えていく。お嬢ちゃんの今の霊力では、練習は不可能だから、これ以上の実践は勘弁してくれ」


「分かりました。ここまでお世話になりました」


「いやあ、お嬢ちゃんはいい生徒だったよ。飲み込みが早いし、上達も早い。本当に一属性だったのが惜しい。二属性以上なら、優れた霊術師になれたと思うんだけどなぁ」


「属性数が多いのが、優れた霊術師ではないんですか?」


 二属性でも優れた霊術師になれるものなのかな?


「そりゃあ、属性数が多く、霊核がデカく、霊気の量が多い奴が強い。大原則だ。だけど、属性の数が少なくても、霊気の扱いに長けていれば、色々とやりようもあるんだぜ? まあ、結局正面からやりあったら勝てないけど。別に霊術師同士で戦うわけでもないしな」


「工夫も大事って話ですね」


「そういう事だ」


 といった内容の授業を数日、数回に分けて受けた。


 基本的なことを教わったが、本格的な練習は霊気の量が少なすぎて不可と。


 一応、練習方法は教わったので、成長して霊核が大きくなったら、試してみるのも悪くない。


 酔っ払いだから、どうなる事かと思ったが、蓋を開けてみれば大成功。


 母の目に狂いは無かった、ということが証明された。


 ――さて、ここからが問題だ。





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