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 ◆九白真緒


 

 成人の儀を無事に終え、それからは何事もなく、月日が経過していった。


 そんなある日、ろくでもない誘いが来た。


 曰く、君には才能がある。


 本場の仕事を見学させてやるから、参加しなさい。


 という、一方的かつ上から目線のメッセージが全く知らない霊術師から届いたのだ。


 なんというありがた迷惑な話か……。


 私はその誘いを親を介して、即断った。当然だ。


 こちらになんのメリットもないからね。


 すると、霊術師は勘違いした。すぐに返ってきた返事の内容を見て顔をしかめる。


 曰く、分かる分かる、自分しか参加者がいなくて心細いんだろう? それなら、同年代の雲上院礼香も誘うから、と来たもんだ。


 これはもしかすると、本命は私ではなく、レイちゃん?


 絡め手でレイちゃんに接触し、父親である昭一郎さんまで辿り着こうとする腹か。


 そうはさせないよ。


 ということで、私一人で話を受けて、さっさと終わらせてしまうことにした。


 相手の口実は本場の仕事を見学させてやるというもの。


 つまり、一度見てしまえば、同じネタは二度と使用できない。


 レイちゃんには私から見た内容を伝えたと言えば、雲上院家に直に誘いが来ても断りやすいだろう。


 というわけで、指定された日に件の霊術師と面会する。


 デップリと太った中年の男だ。全く見覚えが無い。


 ほんと、誰だよ……。


「ほう、お前が噂の一属性か」


 お前と来たもんだ。誘った身からすると、私なんてその程度の相手なんだろう。


「今日はよろしくお願いします」


 一応挨拶はしておく。でも、名乗らない。


 お互い書面でやり取りしたから、名前は知っているしね。


 相手の名前は亀角武夫。側に二人付いている。


 三人の会話を聞く限り、紫髪が細海、青髪が安守という名前みたいだ。


「うむ。ついてこい。おい、行くぞ」


「へいっ!」


「わかりやした!」


 威勢よく、返事を返す細海と安守。


 それにしても、へい、とか、わかりやした、とか初めて聞いたよ。


 なんというか、私より取り巻きっぽい。


 そんな面白メンバーで向かうのは、郊外にある洞窟だ。


 ちなみに、迷宮と呼ばれるものも存在するらしいけど、今回はそれとは違うそうだ。


 洞窟は自然の産物。迷宮は妖怪の作り出したもの。


 迷宮は都外に行かないとお目にかかれないらしい。


 というわけで、自然の洞窟に棲む妖怪退治の見学へ出発。


 車に揺られ、都心から離れること数十キロ。


 山しか見えなくなったところに、目的地はあった。


 洞窟内部は広く、観光スポットとしても成立しそうな規模だ。


 先頭を歩く亀角たちに続き、周囲を眺めながら進む。


 天井には照明があり、地面には板が張られ、傾斜している部分にはご丁寧に手すり付き。


 崖のような段差には、鉄骨の足場が設置されていた。


 なんでこんな場所を保存しているんだろう。


 妖怪が棲み着くなら、破壊してしまえばいいのに。


 と思ったら、実地訓練でも使われるらしい。迷宮に見立てた訓練に丁度いいとのこと。


 なるほど、色々考えられているんだねえ。などと一人納得。


 しかし、妖怪が全然出てこない。随分と奥まで進んだけど、どこまで行くんだろう。


 あんまり進むと帰るとき面倒なんだけどな……。まさか、泊まりなのか?


 そんなことを考えていると、何かの気配を感じ取る。


 私に続き、亀角もワンテンポ遅れて気配に気付いたようだ。


 立ち止まって、指示を出す。


「居たぞ。細海、安守。援護できる位置に付け」


「「へいっ」」


 亀角のひと声で、フォーメーションを組む三人。


 おお、連携できてるって感じがしていいね。


「小娘、よく見ておけ。これが実際の現場だ。いくら成人の儀でいい格好ができても、本番で実力を発揮できなければ、何の意味も無いからな」


「そうだぞ。調子に乗んなよ、ザコの一属性が」


「てめえのためにわざわざ三人で動くんだから、ありがたく思えよ」


 そこまで悪態をつくなら、なぜ招待したし。


 ツンデレなのか? それとも挑発なのか? などと、つい条件反射で言い返しそうになってしまう。


 いかんいかん、一応教えようとしてくれているわけだし、余計なことは言わないようにしよう。


 それにしても、この人たちの真意が分からない。


 てっきり、レイちゃん不参加の時点で、やっぱ止めるわって言うと思っていたのに。


 ここまで来たことが意外なんだよね。


「動き易いように荷物を置け。怪我をされてはかなわんからな」


「はい」


 亀角の言葉に素直に従い、荷物を地面に置く。


 そうしないと、ネチネチ言われそうだしね。


 その分、しっかり見学させてもらいますか。


 私が離れたことを確認し、亀角が霊装を構える。


「行くぞ。ハッ!」


 気合と共に放たれた亀角の霊気は妖怪の足元に。ハズレだ。


 いいところを見せようとして緊張したのだろうか。


 いや、違った。


 どうやら、コンビネーションのようだ。


 わざと足元を狙い、妖怪の動きを誘導したのだ。


「細海!」


「へいっ!」


 亀角の呼びかけに、細海が霊気を放つ。


 それほど強く無さそうな妖怪相手に慎重な感じだったが、これで終わりそうだ。


 感心しながら観戦していると、側面から殺気を感じた。


 私は無意識の反応に身を任せ、素早く身を翻す。


 すると、数瞬前まで居た場所目掛けて、安守が突進するのが視界に入った。


 え、どういうこと? なんで私を狙う。


 私が戸惑っていると、背後で声が聞こえる。


「よしっ!」


 どうやら、細海が妖怪を倒したようだった。


 妖怪の死と、安守の不審な行動。その二つに気をとられ過ぎた結果、隙が生まれてしまう。


 亀角がその瞬間に私目掛けて霊気を放っていた。


 私は迫る霊気をバク宙でかわす。霊気は地面に当たり、周囲が剥離。


 着地するべき場所が無くなってしまう。


「うそっ!?」


 私は吸い込まれるように崖下へ落下した。




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