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◆九白真緒
ある日、「お誕生日会をしてみたいのですわ」と、レイちゃんから相談を受けた。
「なるほど」
ついこの間、クラスメイトのお誕生日会に招待されたのが、よほど嬉しかったのだろう。
自分も友達を招待したいという気持ちに目覚めたわけね。
今までは、クラス内でこういったイベントがあった際、レイちゃんはスルーされていた。
レイちゃん側からお誘いがなかったので、声がかけづらかったみたいだ。
相手が雲上院家だとそれも仕方ないよね。
しかし、今年はクラスメイトとの距離も縮まったせいか、向こうからお誕生日会のお誘いがあったというわけ。
去年知ったことだが、レイちゃんは誕生日会をやったことがなかったそうだ。
雲上院家だから、家の付き合いとかでやっていそうなのに意外だ。
小さい頃は父と子、二人きりでのお祝いが定番。その後は、誘拐が原因で誕生日を祝うことすらしていなかったみたい。
去年はその話をギリギリになって知ったため、何も手が打てなかった。
結局、私が外食に招待するという形でお祝いさせてもらったよ。
だけど今年は事前に知っていたので、慣らしもかねて小規模な会を開催できたらいいなあとは考えていた。
そしたら、クラスメイトからのお誘いが先に来てしまったという感じである。
こういった感じでレイちゃんの周りの小さな齟齬が、少しずつ解消されていっているのは大変いいことだと思う。
そして、今月はレイちゃんの誕生日がある。
こうなってくると、お誕生日会を普通に開くのがベストだよね。
ちなみに、レイちゃんと私は誕生日が近かった。
マンガ内で脇役の誕生日なんて描かれるわけがないので、意外な発見である。
そのことが判明した時、誕生月が同じで星座も一緒なことをレイちゃんがとても喜んでいたのが印象的だった。
「中学に入ると、私の誕生会は大人の方を招いた社交の場となってしまうらしいので、今年が最後のチャンスですの」
「そっか、雲上院家だとそういう感じになっちゃうんだね」
雲上院家らしい悩みを聞き、色々あるんだなあ、と思う。
「はい。お父様のお知り合いとの挨拶の場になってしまうそうですわ」
「それならそれで、誕生日の前か後に友達用の誕生日会を別にすればいいじゃない」
挨拶用の誕生会と友達用の誕生会。二つあってもいいと思います。
「まあ! それは思いつきませんでしたわ」
私の提案に、レイちゃんが両手を合わせてぱっと華やいだ顔になる。
その姿を見て私はニッコリ笑顔。
「これで中学に入っても誕生日会ができるね」
「は、はい。後は誘って来ていただける方がいればですけど……」
俯いて不安げな顔をするレイちゃん。
そんな心配なんかしなくても雲上院家からの招待なら、誰でも喜んで来ると思う。
でも、クラスと打ち解けた今なら、友達の雲上院礼香の誕生日を祝いたいという気持ちで参加してくれる人が圧倒的に多くなっているはずだ。
「そんな顔しないの。レイちゃんが誘ったら、みんな喜んで来てくれるよ」
「そうでしょうか……」
「もし、誰も来ないって言っても私は絶対行くから。って、これじゃあ安心できないか」
「いえ、とても嬉しいですわ」
「じゃあ、とりあえずは今回の誕生日会に誰を招待するかって話?」
雲上院家が行う誕生日会となると、誰を呼んで、誰を呼ばないかのライン引きって難しい。
まあ、クラスメイト全員か、仲の良い友達だけを少数招待するかの二択になるかなぁ。
「はい。それもそうなのですが……」
私の問いかけに対し、レイちゃんが口ごもる。
「うん? どうかしたの」
「実は、お父様と後藤が異常に張り切っていて……、不安なのです」
「なんで? いいことじゃん?」
今まで開いたことのない誕生日会。
そりゃあ、あのお父さんなら張り切るに違いない。
お嬢様ラブの後藤さんが、全力を振るおうとするのも頷ける。
良い会にしてくれそうだけど、不安要素があるのかな?
「わたくしとしては、クラスメイトの皆さんがやっているのと同じような会にしたいのですわ」
「ふむふむ」
「ですけど、お父様と後藤に任せていると、そうはならない気がして……」
「なるほど、それは分かるかも」
ああ〜……、要は豪華になりすぎてしまうことを心配しているのか。
この間招待されたお誕生日会は、友達を数名招いたホームパーティー。
定番中の定番といった雰囲気だった。
だけど、雲上院のパパさんと後藤さんが本気を出したら、そんな規模には納まらない気がする。
「分かっていただけますか!」
レイちゃんが深刻な表情で私の両手をぐっと握ってくる。
まあ、二人とも話の分かる人たちだし、こちらの要望を伝えておけば何とかなるんじゃないかな。
「事前に話し合いの場を設けて、意見のすり合わせをしておいた方がいいかもね」
「その時、マオちゃんに同席をお願いしたいのですわ!」
レイちゃんが必死な様子で懇願してくる。
そこまで心配しなくても大丈夫だと思うんだけどなぁ。
「うん、行くよ」
「それでは、後藤にスケジュールを調整させますわね」
「了解」
と、その日は解散となった。
後日、昭一郎さんがお休みの日に雲上院家にお邪魔し、お誕生日会についての話し合いをすることとなった。
昭一郎さんは、何を大げさな、といった感じだったが、レイちゃんは真剣そのもの。
この話し合いに挑む気持ちのレベルに、随分な落差を感じてしまう。
「ははは、礼香も真緒ちゃんも心配性だな。我々が礼香の催しで失敗などするわけがないじゃないか」
「その通りです。お嬢様は、もっと我々を信頼してくださっても大丈夫なのですよ?」
と、自信満々な様子の昭一郎さんと後藤さん。
いつも隙の無い二人だけに、非常に説得力のある言葉だ。
私からすれば、仕事が出来る人たちだし、何の疑いようもない。
レイちゃんが心配しすぎなのでは? と思ってしまう。
「ごめんなさい、お父様、後藤。ですけど、念のため確認しておきたいのですわ」
「レイちゃんの希望を聞いておけば、より良いものになると思いますよ」
心配そうなレイちゃんの言葉をフォローする形で発言する。
「むむ、それはそうだ。本人の望むものを知っておくことは重要だな」
「確かに。旦那様、これは良い機会を得ましたね」
「ああ、二人に感謝しないとな」
私たちの意見を聞き、納得いった表情で頷き合う昭一郎さんと後藤さん。
うん、話し合いとしては、いい滑り出しといえるだろう。
二人が聞く態勢に入ったのを見計らって、レイちゃんが口を開く。
「まず、わたくしとしては、クラスメイトの方がされているお誕生日会となるべく同じ形式のものを行いたいと願っていますの。皆さんと仲良くさせて頂いて分かったのですが、我が家はお金の使い方が他とは少し違うようなのですわ。ですので、いつもうちでやっているような規模で開催すると、招待した相手を萎縮させてしまう可能性があるのです」
「ドン引きするってことです。折角仲良くなったのに、距離を置かれてしまうかもしれないってことですね」
レイちゃんの説明を要約し、おまけで脅し文句も追加しておく。
これくらい言っておけば、本気で取り組んでくれるだろう。
でもまあ、ちゃんとやってくれているとは思うけどね。
「なんだって! それは一大事じゃないか! 後藤、今立てている計画を発表し、意見のすり合わせを行おう」
「承知しました旦那様!」
レイちゃんと私の話を聞き、驚愕の表情となる昭一郎さんと後藤さん。
一気に真剣度が上がった感じだ。
これで出来上がった計画に対して多少無茶な変更を要求しても、通りやすくなるだろう。
「それで、どんな感じなんですか?」
と、具体的な内容を尋ねてみる。
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