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 結果は――




「全て中心に命中している……。す、凄いじゃないか礼香!」


 私は驚きの余り、無意識に声を張っていた。


「ありがとうございます、お父様」


 そう言って俯いた礼香は、顔がほのかに赤みを帯びていた。


「素晴らしい。こんな短期間で、よくここまで出来るようになったね」


「わ、わたくしなんてまだまだですわ。真緒ちゃんなんて十秒くらいで全部命中させるし、真緒ちゃんのお母様に至っては三秒以下ですもの」


 謙遜した娘が、九白親子を比較対象に出してくる。


 な、なるほど、上には上がいるということか。


 だが、それも良い刺激になっている気がする。


 驕らず、自分を客観視するきっかけになっているのではないだろうか。


 しかし、弓子さんは霊術を使えないはず。


 一体、的に何を命中させていたのだろう……。


「ご安心いただけましたか? これだけの技術があれば、当日の儀式で妖怪に後れを取ることはないでしょう」


「ええ、とても安心できました。これで当日はハラハラせずにいられますよ。貴重な時間を割いていただき、ありがとうございました」


「いえいえ。そうだ、真緒の動きも見ていってください。礼香ちゃんにだけ安心できて、友人の子で不安を覚えては意味が無いですからね」


「真緒ちゃんの話は礼香から散々聞いているので心配はしていませんよ。私自身、真緒ちゃんが霊気を放っている所を少しだけ見たこともありますしね。ですが、実演していただけるなら、是非お願いしたい。実際に見たことがないと、娘との会話が弾まないのでね」


 真緒ちゃんがお披露目会で霊気を放った所は偶然目撃した。


 とても凄かったが、それ以降は霊術の修行風景しか見ていない。


 礼香が話す話題の大半は、真緒ちゃんが凄いという話ばかりだ。


 だが、私自身は彼女の能力を目にする機会に恵まれていない。


 そのせいで、娘との会話の際に曖昧な相づちしか打てていなかったのが、最近の小さな悩みだったりする。


 その悩みを解消できる機会を逃がす手は無い。


 何より、私自身としても、とても興味がある。


 彼女の実力は、どんなものなのだろうか。


「問題ありませんよ。いつもの訓練風景を見てもらうだけですしね。それじゃあ、外に出ましょうか」


「? 分かりました」


 ここで的を撃つんじゃないのか。


 弓子さんに先導されて、全員で広場に移動する。


 そこには、弓子さんの部下と思しき男性が四人立っていた。


 全員薄手の訓練着姿のせいで、鍛え抜かれた肉体がはっきりと視認できる。


「まずは組み手を見てもらいましょう。真緒、準備はいいか?」


「いつでも大丈夫だよ」


 弓子さんの呼びかけに、真緒ちゃんが体をほぐしながら前に出る。


 その先には、さっきから直立不動の姿勢で立っていた四人の男性がいた。


 四人は無言で構えを取った。


 ん、真緒ちゃんの相手はあの人たちなのか?


 百歩譲ってその部分を受け入れたとして、なぜ四人同時に構えを取るんだ?


「よし。今日は反撃なしでいけ。それでは、始め!」


 弓子さんの合図と同時に、部下の人たちが真緒ちゃんに殴り掛かる。


 真緒ちゃんは、四人から前方と左右、三方向同時に攻撃を受ける形となった。


 スピード、威力、共に強烈な打撃が、あらゆる角度から降り注ぐ。


 それを、背後を取られないようにしながら、スイスイとかわす真緒ちゃん。


 男性四人が手加減しているようには見えない。というか、本気でやってないか?


 礼香の時とはスピードが段違いだ。


 あんなの、私でも対応が難しいぞ。普通は一対一に持ち込むのが定石だ。


 四人の猛攻は十分を越えても、まだ続いている。な、長いな……。


 四人は軽く息を弾ませているのに、真緒ちゃんは全く息が乱れていない。


「……ぇぇ〜」


 呆気に取られた私は、いつの間にか組み手に見入ってしまっていた。


「やめ! 次は受け身だ。霊気は使うなよ。それじゃあ、行って来い。私は下で準備してる」


「は〜い」


 弓子さんの中止の声で、はっと我に返る。


 今度は受け身の練習らしい。真緒ちゃんは、軽い調子で返事をすると、近くの建物に入って行った。


 そして、三階の窓から出てきた。そのまま、手すりを乗り越えて身を乗り出す。


「え、何をしようとしてるんだ……」


 組み手の余韻が残っていた私は、いきなりのことに思考が追いついていなかった。


「それじゃあ、行くね」


 そう言って、真緒ちゃんがプールに飛び込むようなフォームで下に飛び降りた。


「あ、危ない!」


「大丈夫ですわ」


 私が叫んだのと同時に、隣に立つ礼香が自信たっぷりに返事を返す。


 真緒ちゃんは羽根を思わせる柔らかな動作で、両手から地面に接触。


 そのまま腕から胴、脚と頭を守りつつ回転。しなやかに着地した。


 ――無傷だ。


 完全に衝撃を逃している……。


 本当に礼香の言葉通りの結果となった。


「ぇぇ〜……」


 驚きの余り、変な声が出る。


 着地した真緒ちゃんを呆然と見ていると、後ろから車のエンジン音が聞こえてきた。


 かなり噴かしているのか、強烈な排気音が響く。


 何事かと思って振り向くと、ハンドルを握った弓子さんの姿が……。


 その姿を確認した次の瞬間、車が急発進した。


 その先には、真緒ちゃんが……!


「え」


 車は猛スピードで真緒ちゃんに突っ込んでいく。


 衝突すると思った次の瞬間、彼女はボンネットに乗りかるようにして前転。


「えええ!?」


 そのままフロントガラスから天井に上がって直立。


 ぴょんと車から飛び降りた。


 そして、衝撃を逃がすように前転。


「ほいっ」


 すたっと立ち上がり、体操選手のようにポーズを決めてフィニッシュ。


 駆け寄っていった礼香とハイタッチを決めていた。


「どうなっているんだ、一体……」


 真緒ちゃんはここまで連続で動いていたのに、全く息が乱れていなかった。


 そもそも、全力で動いていた感じがしない。


 軽いウォーミングアップを見せられたかのようだ。


「と、まあ、こんな感じです。うちの娘は霊気を使わなくてもこの程度は軽々とできるので、ご安心を。当日は、観戦を存分に楽しんでください」


 いつの間にか車から下りて、私の隣に来ていた弓子さんがニコリと微笑む。


「あ……、ああ。これなら安心だ」


 霊術を見る事はなかったが、懸念材料は全て払拭されたといえるだろう。


 そして、娘が言っていた凄いという言葉を、本当の意味で理解できた気がする。


 巻き込んだ形になってしまったため、九白家には負い目があったが、ひとまず事故になる心配はしなくてよさそうだ。





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