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 ◆雲上院昭一郎



 私は雲上院昭一郎。私にはかわいい一人娘がいる。


 その娘が近く、霊術を披露する場に招待を受けた。


 私としてはどうでもいい話だったが、娘が私の身を案じ招待を受けてくれた。


 なんと家族思いなことだろう。


 私はいたく感動し、当日の晴れ姿を余すことなく記録する事を心に誓った。


 娘の担当である後藤も「当日はカメラを複数持ち込む予定です」と鼻息荒く語っていた。


 以前、後藤の方から提案があり、こういった催しでは撮影係として動いてもらっている。


 彼女はとても優秀だが、礼香のことになると時々我を忘れることがある。


 まあ、それほど私の娘がかわいいのだから仕方がないか……。


 招かれた催しは、将来霊術師になる者が受ける成人の儀。


 という説明を受けたのだが、実際は違った。どうやら霊術師の資格を得るための試験のようなものらしい。


 その内容は、一対一で妖怪を倒すこと。


 それを聞き、同行してくれる九白家の方から、事前に実戦を経験してみては、と提案があった。


 これは渡りに船。ということで、九白家の長女であり、娘の友人でもある真緒ちゃんと一緒に練習へ送り出すこととなった。


 それから数日経ち、今回の練習の監督役であり真緒ちゃんの母である九白弓子さんから連絡が来た。


 練習の成果を披露したいから来て欲しい、と。


 しっかりと実力をつけたことを確認しておけば、本番も安心して観戦できるだろうという計らいである。


 早速私は、九白家が仕事で使っているという研修施設へと向かった。


 指定された施設は、都内ではあるものの人里離れた山中にあった。


「お父様、来てくださったのですね!」


 到着すると、娘の礼香が抱擁で出迎えてくれる。


「元気にしていたかい? 腕を上げたと聞いて、飛んで来たよ」


「わたくし、頑張ったのですよ」


「そうか、それは楽しみだな」


 礼香の得意気な顔から察するに、かなりいい練習が出来たようだ。


「ようこそ」


「こんにちは」


 娘の頭を撫でていると、九白親子が歓迎してくれる。


「今回は娘がお世話になりました」


「いえ、真緒にも良い刺激になったので、こちらとしてもありがたかったです。それじゃあ、早速見ていってください。まずは簡単な組み手から。礼香ちゃん、こっちにおいで」


「承知いたしましたわ」


 弓子さんの言葉に、礼香が私から離れる。


 そして、弓子さんと向き合い、構えを取った。


 それを合図に弓子さんも構えを取る。


 私と真緒ちゃんが見守る中、静かな睨み合いの時間が経過する。


 そして開始の合図として、弓子さんが一歩踏み出す。


「行くぞ。おりゃあああああっ!」


 彼女は殺意まで高めた敵意を向けつつ、威嚇に大声を張り上げ、礼香に殴りかかった。


 えぇぇぇ!? やりすぎじゃないか!?


 と思ったが、打撃の速度はそれほどでもない。明らかに手加減している。


 礼香は、弓子さんの攻撃をしっかりとかわしてみせていた。


 ――なるほど、そういうことか。


 ここまで見て、弓子さんの意図に気付く。


 今回、儀式で相手をするのは妖怪だ。


 簡単に言えば、野生の獣と代わらない存在といえる。


 つまり、威嚇に叫ぶし、無遠慮に敵意も向けてくる。


 人間相手の行儀のいい試合ではないのだ。


 自分も武道の経験があるから分かる。


 いくら技術で勝っていても、威嚇に怯めば隙も出来る。


 つまり、この組み手は打撃をかわす能力がついたのを見せるのが目的ではなく、敵意を向けられても自然に動けるようになったのを見せるためのもの。


 事情が飲み込めれば、全てに納得がいく。


 ただ、見ているとどうしてもハラハラしてしまうが……。


 もし、自分が練習に口を出していれば、もっと生温いものになってしまっていただろう。


 そう考えると、お任せしてよかったのかもしれない。


 そんな事を考えているうちに、娘が無事に組み手を終えた。


「素晴らしかったよ。よく動けていたね」


 笑顔で迎える。うん、これは上出来すぎる。


「真緒ちゃんのお母様の教え方がうまいのですわ」


「いえいえ。礼香ちゃんはコツを掴むのが早いです。何でも吸収してしまうので、ついこちらも熱が入ってしまいますよ。それじゃあ、次は霊気を当てる命中度が向上したことを確認してもらいましょうか。礼香ちゃん、案内してあげて」


「はい! お父様、こちらですわ」


 と、娘に手を引かれ、施設の中へ入る。


 そのままエレベーターに乗って地下へ。たどり着いたのは立派な射撃場だった。


「礼香ちゃんには、ここで動く的を撃つ練習をしてもらいました。当日の妖怪はかなり弱いので、霊気さえ当てればなんとかなるそうです。今の状態なら、怪我をする事もないでしょう」


 弓子さんが練習内容を説明してくれる。


 なるほど、妖怪は生きている。止まった的を狙っても意味が無いというわけか。


「お父様、見ていてくださいね」


 礼香が練習場に立ち、弓子さんが合図を送る。


「おい、起動しろ」


 すると、高速で動く的が大量に現れた。


 え、量が多すぎないか……。いや、それより的の速度が速過ぎる。


 あれでは狙って撃っても、掠らせるのがやっとではないだろうか。


 などと考えているうちに、礼香が霊装の洋扇を構えた。


「はっ!」


 気合の一声と共に、礼香が霊気を連続で放っていく。


 狙って撃っているため、一発ごとの間隔は長い。


 だが…………。


「終わりましたわ」


 礼香が構えを解き、弓子さんが合図を送る。


「的を止めろ」


 すると、高速移動していた的が減速し、ゆっくりと止まった。


 結果は――





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