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 ◆九白真緒


 

 私たちは六年生になった。


 何事も無く月日は経過し、季節は秋。


 霊術の修行も順調で、レイちゃんの霊核も随分と大きくなった。


 せっかく霊気を大量に扱えるようになったのだから、体の動きも吊り合うようにしたいところ。


 だけど、格闘術を学ぶのはお嬢様的にNGらしく、身のこなしは護身術でカバーしている。


 色々なポテンシャルが高いだけに、惜しい部分ではある。


 レイちゃんのお父さんである昭一郎さん的には、霊術の修練はもう十分。


 雲上院家の令嬢が嗜みとして身につける範疇を逸脱していると思っているみたい。


 止めなさいと言われないのは、レイちゃんが熱中しているからだろう。


 昭一郎さんとしては他のお稽古事に時間を使って欲しいのかもしれないが、娘に甘いので言い出せない感じだ。


 といってもそれが原因で揉め事が起きるわけでもなく、父と娘の仲はとても良好だ。


 しっかりと二人で過ごす時間が確保され、レイちゃんがストレスを溜め込むような事態にはなっていない。


 そんな中、久しぶりに新たな事件が起きたらしい。


 その事件について詳細な説明を受ける為、雲上院家へ招待された。


 今回は私だけでなく、父にも同行して欲しいとのこと。


 親子でご招待とは、一体どんな内容なのだろう?


 といっても、父はある程度事情を知っているらしい。


 雲上院家の応接室に案内された私と父は、レイちゃんと昭一郎さんの向かいに座った。


「これなんだが……」


 と、昭一郎さんが一通の招待状を私に見せてくれる。


 どうやら、以前参加したお披露目会と同じ様なイベントの招待状らしかった。


 招待されているのは、私とレイちゃんだ。主催に紫前が絡んでいるとのこと。


「方々に手を回して、断りにくいようにされている」


「何が目的なんでしょう」


「まだ、講師の話を諦めていないのかもしれないな。ここで実力の差を見せ付けて、再度交渉に持ち込もうとしているんじゃないかな。本当は家に押しかけたいのだろうが、それを禁止しているから、なんとか見つけたチャンスといったところか」


「そこまでして……」


 むぅ、執念深い。


 以前の出来事から間隔が空いたのは、それだけ準備してたってことかな。


 修行に取り組んで霊力を上げていたというのなら、その一点だけは評価できる。


 動機は不純だけどね……。


「私が相手なら大金を巻き上げ易いと考えているんだろうな。あとは……まあ、君と娘に成績で負けたのが認められないんだよ。アレはとてもプライドが高いからね」


「なるほど……。でも、断ればいいですよね?」


 今回は簡単に解決できる。招待を受けなければいいのだ。


 参加しなければ、相手に打てる手などないからね。


「ああ、その通りだ。これで商談が二〜三消えるだろうが、また新しく交渉すればいいだけだ」


「ええ! そのレベル!?」


 さらっと言われた昭一郎さんの言葉に驚く私。


「お父様!? わたくし出ます!」


 迷いを見せていたレイちゃんも参加を即断してしまう。


「いいのかい? 仕事の一つや二つなくなろうとも、娘に嫌な思いをさせるわけにはいかないと思っていたのだが……」


「お父様、お仕事は大切ですの。どうしようもない時は断ってほしいですが、今回なら問題ありませんわ」


「レイちゃんは凄いよ……」


 昭一郎さんのために、嫌なイベントへの参加をあっさり決めてしまう。


 簡単にできることじゃないよね。


「マオちゃんはどうしますか?」


「できれば、出てくれないだろうか」


 私が答える前に、隣に座る父からお願いされる。


「ということは、うちも?」


 断ると仕事に影響が出るパターン?


「その通りだ。取引先にまで話が回っていてね。真緒の勇姿を見たいと、乗り気なんだ。その人は、ちょっと気難しい性格なんだけど、霊術師関連のイベントに目がなくてね。ここでご機嫌を取っておくのは、悪くないんだよ。どうしても嫌なら、無理強いはしないけど。考えてくれないかい?」


「じゃあ、出る」


 ならば、即答でOKである。霊術が使えるようになったのは、霊薬のお陰。


 その霊薬を買って支えてくれたのは、他ならぬ両親なのだ。


 そんな父からのお願いとあらば、断るわけにはいかない。


 最近も相談に乗ってもらって、修行の場を提供してもらっているしね。


「というわけで、出ることになりました」


「やりましたわ! マオちゃんと、コンビで大活躍ですの!」


「……そうか」


 レイちゃんの発言を聞き、考え込むように俯く昭一郎さん。


 何か気になることが……?


 しばらく無言の間が過ぎ、皆が様子を見守る。


 すると、昭一郎さんがいきなり顔を上げた。


「それはいいね! 娘の活躍を映像に収めねば!」


 その顔は喜色満面。運動会でも観覧にいくかのような能天気さだ。


 それで本当にいいのか? と父と顔を見合わせる。


 さっきまでのシリアスはどこいったのよ。


「で、今度はどんなことをやるんでしょう?」


 肝心のイベント内容が定かではなかった為、私は昭一郎さんに尋ねた。


「それは……」


 ――それから数日後。





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