44
と、つい見惚れてしまう。いかんいかん、止めに入らないと。
「もぅ、出て行ったらダメだって……」
私はレイちゃんの肩に手を添え、なだめる。どうどう、落ち着くんや。
「もしかして貴方が講師を務めているのですか」
「……さあ、どうでしょう「そうですわ! レイちゃんは素晴らしいんですのよ! あなた達にわざわざ教わることなど一つもありませんわ!」
紫前の問いをとぼけてかわそうとしたら、レイちゃんが被せてきたよ。
「おーい……」
「言ってやりましたわ!」
と、満面の笑みで私に報告してくれるレイちゃん。
「う、うん。ありがとうね」
そんなにかわいい顔されたら、何も言えないじゃないか。
いや、お礼はキッチリ言っておこう。
「ハハッ、なんだお前か。一属性のイカサマ女じゃないか!」
「……ああ、あの時の。あんなあり得ない記録を出せば、素人でも不正をしたと気付きますよ。次があれば、もう少し加減した方がいいわよ」
私の顔を見て、紫前親子が水を得た魚のようになった。
相手が私と分かって、さっきまでと明らかに態度が違う。
行け行け、押せ押せ、といった感じである。
そんな二人を見て、私は自然とクールダウン。
どこまでも真顔になる。
「いや、もう出ないので」
紫前に、公の場には出ないと宣言する。
悪いけど、今のところ出る意味も必要性も感じないんだよねぇ。
「だろうな! 何度もやったらトリックがバレるからな! だが、これはどうだ? こいつに不正は不可能だ。試しに霊気を流してみろよ」
「それはいい提案ですね。この器具は霊気の操作を鍛える物。私たちが持参したものですし、細工を施すのは不可能。これを使って証明しなさい。息子の方が講師に適していることがすぐに判明します」
二人が私にトレーニング器具を使用しろと、迫ってくる。
「使ってみてもいいですけど、何を証明するんです?」
「あの時の霊気放出が本当だってことをだ! イカサマじゃないなら証明できるだろ」
ん〜……、使って高スコアが出たら結局イカサマって言いそうなんですけど……。
「そもそも、霊気の量が多ければ指導が上手くなるわけではありません。素晴らしいプレイヤーが名コーチになるわけではないんです。その機材で高い数値が出ても何の意味もないですよ?」
と、貴矢のスコアをディスってみる。
その器具で高スコアを出した方が講師に相応しい、みたいな話になってるけど違うからね。
「はん、怖じ気づいたか?」
いや、違うって。
「分かっていないようですね。でもいいですよ、やりましょう」
私は渋々了承する。というか、話をするのが面倒臭くなってきた。
「ハハハ、バレるのが怖くて言い訳していたのだろうが、こいつを使えば一発だからな!」
「ただし、やるのはレイちゃんです」
と、プレイヤーを使命。
「え、わたくしですの?」
急に話をふられ、レイちゃんがきょとんとした表情で反応する。
「は? 何言ってるんだ、お前」
「先ほども申し上げましたが、私の霊力が高かろうが低かろうが、それは指導能力と何の関係もありません。ですから、今まで私が指導した結果、レイちゃんがどうなったのかを見てもらった方がいいと言っているんです。レイちゃんの結果を見て、それ以上の成果を出せると豪語されるなら、私と講師を代わってもいいですよ? もちろん、一定期間内に成果が上がらなければ、賠償請求ってことで」
賠償ってところで、昭一郎さんに視線を送り、ニヤッと笑い合う。
「な、何を言っている!?」
「なぜ、こちらがお金を払うという話になるのですか!」
途端、焦り出す紫前親子。
「あれ、自信ないんですか? 三属性なのに? 私より結果が出せないと思っているのにあれだけ豪語していたんですか?」
「い、いいでしょう。一属性の子供相手に、息子が負けるはずがありません。そこまで言うなら、見せてもらいましょうか」
私の挑発を受け、紫前が承諾した。
「はい喜んで。レイちゃん、よろしく」
「わ、分かりましたわ。精一杯頑張りますの!」
そういって、霊装を作りなおす。
腹巻だと、手から放出できないからね。
作り出したのは、洋扇だ。
あの時、私がプレゼントして紫前に踏み潰された物にそっくりな見た目だった。
「いきますわ!」
レイちゃんは気合いのこもったひと声と共に、装置を使用。
数値を指し示す針がグングンと動き、貴矢の記録をあっさりと打ち破った。
「あ、ありえない! なんだこの数値は!?」
「これでお解りいただけたかと」
「そ……そんな、なぜ……」
驚愕した後、言葉を失って俯く紫前。
「その機材、細工はできないし、イカサマは通用しないんでしたよね?」
「講師の交代の必要性を感じないな。後藤、お客様がお帰りだ。お見送りしろ」
私の言葉に、昭一郎さんが追加で追い打ちを放つ。これで、退場決定だ。
「待って、まだ話が……!」
「私にはない」
紫前の言葉をピシャリとシャットアウトする昭一郎さん。
「ま、まぐれだ! もう一回やれば、僕の記録を下回るはず! たまたま上手く行っただけだ!」
結果を受け入れられない貴矢が、再トライしろと騒ぎ出す。
んん〜、これでは切りが無い。私がトドメを刺しておくか。
「ちょっとお借りしますね。ふ〜ん、こういう感じね」
私は機材に適当に霊気を送り込んだ。
一瞬で許容量限界になったのを感じたが、お構い無しに送り続けた。
結果、ボンッという爆発音と共に機材が爆散した。
「え」
「は?」
爆発した機材を見て、固まる紫前親子。
「あぁ……〜! 壊れてしまっては再挑戦もできませんね。これは仕方ないなぁ」
「貴方、何ということをしたのです! その機材はとても高額なんですよ! それを……!」
「後日、同じ物を送ろう。さあ、帰るんだ」
紫前親子はまだ騒いでいたが、黒服さんたちの実力行使に遭って敢えなく退場となった。
「まさか、家まで押しかけてくるとは……」
「どうやら経済状況がよくないようです」
昭一郎さんのため息交じりの呟きに、黒服さんの一人がご報告。
「援助を打ち切ったせいか……。これなら静寂を買うと思って、払っておくべきだったかもしれないな」
「あの人たちにお金を払う必要ってあるんですか?」
向こうが切り出した離婚な上に、子供は雲上院側が引き取っているので養育費は必要ない。
なんで毎月お金を払う必要があるんだろう。い、慰謝料?
「全く無いな。そもそも今まで私はなんで払っていたんだ……。やっぱり止めておこう。一時の気の迷いだったようだ」
「わたくし、今日の出来事で随分と気持ちに整理がつきました。あの人たちに対して、嫌悪感しか抱かなくなったようですわ」
昭一郎さんとレイちゃんの紫前親子に対する評価が地に落ちる。
あれだけ無茶なことをすれば、そうなるよね。
「これで、こちらと関わることは無駄だと分かったことだし、諦めて他の稼ぎ口でも探すだろう。もしまた来るようなことがあっても家に上がりこまれないよう、対策を徹底しておこう」
パパさんの言葉を聞く限り、紫前親子がこの家に近づくことは難しくなりそうだ。
これにて一件落着? かな。
面倒事ではあったが、レイちゃんの心の整理に一役買ってくれたみたいだし、結果オーライかもしれないね。
本作品を読んでいただき、ありがとうございます!
面白い、続きが読みたいと思っていただけたなら、
ブックマーク登録をしていただけると、作者の励みになります!
また、ページ下部にある評価ポイントを入れていただけると嬉しいです!
よろしくお願いします!




