40
ゴルフならショット時は喋らない、騒がないのがマナーなのにね。
「あらあら、なんて恥さらしなのかしら。アレの知り合いなだけはあるわ」
「あの人が参加しないだけましですね。もし参加していたら、我が家も恥をかくところでした」
「ええ、それだけは運が良かったとしかいえません。一属性の人間など、この場に相応しくないのですから」
「全く、目障りだ。競技服も着ず、恥ずかしくないのか」
ここで紫前親子が更に喚く。それにあわせて大声で笑い合うクレーマー集団。
今のは私とレイちゃんに聞こえるように、わざと声を大きくしていたようだ。
こ、子供相手に大人気ないし、品が無い。最低だよ……。
そう思ったのは、他のギャラリーも同じらしい。
なんとも言えない視線を、クレーマー集団に送っている。
まあ、気にせずさっさと打ちますか。
なるほど、プレイヤーの視点はこんな感じなのか、とグランウドに立って改めて実感。
やっぱり微妙にゴルフとは違う。ゴルフでは、ボールを地面に近い位置にセットするけど、フォーゲートは胸から腰あたりの位置だ。
武器の形状をした霊装を振り下ろして霊気を放出するから、結構高めに位置が固定されている。
セカンドショット以降も、大型のティーもどきを設置するしね。
これなら遠くに飛びそうである。
それじゃあ、派手に行きますか。
「き、君、霊装はどうしたんだい? まさか出せないわけじゃないよね」
私が拳を振りかぶったのを見て、進行役の人が慌てて止めに入る。
ああ、そういえば……。
この人たちには分からないか……。
今の私の霊装はパーティー用の手袋。
それに腹巻など、インナー仕様で全身に着用していた。
基本的に霊術師は霊装を武器の形で携帯している。
だけど、私がそれをやると目立ってしまう。
かといって指輪や腕輪だと霊装としては小さく、霊気を運搬する量が少ない。
目立たず、ある程度大きさを確保して霊気を圧縮する為には、服の形にするしかなかったのだ。
つまり、手袋型の霊装から霊気を放てるってわけ。
だから振りかぶったわけだけど……。
武器から霊気を放つという固定観念に囚われている人からすると、打撃で飛ばそうとしているように見えるよね。
「うっかり忘れていました。これで大丈夫ですよね?」
「あ、ああ」
私は指揮棒サイズの霊装を新たに作り出し、了承を得た。
「おいおい、大丈夫か? あれって習練用の霊装だぞ」
「他の子供は小さくても武器の形状をしていたのに、形を維持できないのか?」
「霊装なしで霊気を出そうとするなんて、素人じゃないか」
「これは時間が掛かりそうだ……」
またもやギャラリーが愚痴る。
もうすぐ打つから、我慢しておくれ。
「それじゃあ、行きますか」
構えた私はレイちゃんの方へ視線を送る。
レイちゃんは両手を組み合わせて、祈るような視線をこちらへ向けていた。
その隣には、昭一郎さんと黒服さんたちの姿も。どうやら無事合流できたようだ。
まあ、ここまで騒ぎになれば気づくか。
それでは、ちゃちゃっと済ませて帰りますかね。
ここはド派手な一発お見舞いして、ギャラリーの度肝を抜きたいところ。
……あれ? そういえば、私って霊気を放出したことってあったっけ?
ああ〜……、小さい頃に一度試したことがあったっけ。
でも、それ以来、やってないかも……。
どのくらい放出すれば、どの程度球が飛ぶかが全く分からない。
むぅ、どうしたものか。
「君、大丈夫かい? 一属性なんだから無理する必要は無い。棄権するかい?」
「そうだそうだ、やめちまえ!」
「ずっと待つこっちの身にもなれよな!」
進行役の人に心配され、二人組が野次を飛ばす。
私はそんな声を聞き流し、考え込んでいた。
手加減して、飛距離が出ないのはまずい。
かといって、フルパワーで放出したら、どうなるか分からない。
一発かますとはいえ、子供ができる範疇には収めたい。
今の私の霊核は、かなりの大きさに育っている。
周囲と比較したことはないけど、間違いなくデカい。
今まで、霊気をなるべく使わないようにしてきたのが、ここであだとなってしまった。
だって何の意味も無く放出するなんて、もったいないじゃん!
一滴も無駄なく圧縮したいんだよ!
こ……ここは、予想だ。予想を立てよう。最適な力加減を模索するんだ。
まず、ここはキッズコース。本来のフォーゲートのコースよりかなり狭い。
そして、参加者の平均打数は3。
十代前半の霊核の大きさで、コースの三分の一ほど飛ばすのが平均的。
霊気が多い人は2打で四分の三ほど。
私の目標は、二人組の鼻を明かすことだから、2打で四分の三は飛ばさないといけない。
つまり、1打目は加減を失敗してもOK。
2打目で調節して、帳尻を合わせればいいのだ。
よ、よーし……、慎重にいくぞ。
とにかく、一発目は限界まで弱めて撃とう。
本作品を読んでいただき、ありがとうございます!
面白い、続きが読みたいと思っていただけたなら、
ブックマーク登録をしていただけると、作者の励みになります!
また、ページ下部にある評価ポイントを入れていただけると嬉しいです!
よろしくお願いします!




