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 このままじゃ危ない! 服に火が移っちゃう!




 だけど、皆、驚いて固まってしまう。


 かく言う私も、声すら出せない状態だった。


 そんな中、上級生の握る指揮棒が舞鶴さんへ向けられる。


 指揮棒が輝き、光が収束、火の玉が形作られていく。


 ほんの数秒の出来事だったから、回避する事も声を出すことも出来ないまま、事の成り行きを見守ってしまう。


「あ、危ない!」


 私がそう叫んだ瞬間、火の玉も発射されていた。


 このままでは舞鶴さんに当たってしまう!


 だけど、火の玉は舞鶴さんに直撃する前に、消えてなくなった。


 厳密に言うと、火の玉に上履きが当たって、かき消えてしまったのだ。


 え? 助かった?


 上履きが飛んで来た方向を見れば、雲上院さんと九白さんがいた。


 そして、九白さんが手をこちらにかざした状態で佇んでいる。


 ということは九白さんがやったの? 


 疑問に思っていると、二人がこちらへ駆けつけた。


 そして九白さんが消火器を使った。ピンを抜き、ホースを火に向けてレバーを引く。


 すると、ホースから泡が勢いよく飛び出し、火が消されていった。


「た、助かったぁ……」


 私がホッと安堵したのと同時に、周囲に人が集まり出した。


 特別教室がある階だけど、そこそこ人がいたようだ。


 人の気配に気付いた上級生は舌打ちすると、走って逃げていった。


「大丈夫?」


 と、声をかけてくれる九白さん。


 どうやら二人は、先生に言われて手伝いに来てくれたらしい。


 先生も私に頼んだ後、一人で運ぶには量が多すぎると気付いてくれたみたいだ。


 うう、先生が気付いてくれてよかったぁ。


 危うく舞鶴さんが大変なことになるところだったよ……。


 件の舞鶴さんは、放心状態で、お友達と雲上院さんが介抱している。


 それにしても九白さんの咄嗟の行動力には驚きだ。


 というか、九白さんを見つめる雲上院さんの目が怖い。


 もの凄い尊敬の眼差しで彼女を見つめている。目が輝きすぎて怖いよ……。


 それからその日の放課後――。


 掃除当番だった私は、屋上の渡り廊下にいた。


 ここの掃除は雑巾がけがないから楽なんだよね。今日は風が気持ちいいし、最高である。


 掃除が終わったら他のみんなは帰ちゃったけど、私はちょっと休憩。


 昼休みの出来事は本当に怖かった。


 うちの学校に、あんなことをする生徒がいるなんて驚きである。


 あの後、燃えたプリントを見た先生が大騒ぎ。目撃証言が一杯あったから犯人もすぐに特定されて、厳重注意されていた。


 注意程度で済むのはおかしい気もするけど。まあ、相手は霊術師の家だし仕方ないかも。


 件の上級生は罰で音楽室の掃除をしているらしい。


 性格が悪そうだったけど、本当にやっているのだろうか、と音楽室を見下ろす。


 すると、上級生二人組が室内に居るのが見えた。けど、掃除はしていない。


 開けた窓にもたれかかって、外を眺めている。


 私と同じである。これはサボってるな。


 ……先生に言いつけてやろうかな。でも、バレたら目を付けられそうで怖い。


 などと思いながらぼんやり様子を見ていると、急に二人が駆け出して教室を出て行った。


 帰ったのかなと、思っていたらすぐに戻ってきた。


 なにやら二人掛かりで、よたつきながら大きいバケツを運んでいる。


 あれは、生ゴミなんかを入れるプラスチック製の60Lサイズのやつだ。


 あのバケツすごく重そう。何か入っているのだろうか。


 二人はそのまま窓際へ。そしてバケツを窓の外に放り投げようとした。


 が、失敗。つまづく。


「え、何やってるの?」


 思わず声が出てしまう。


 二人は窓からバケツを放り投げようとして失敗。結果、真下に落ちた。


 バケツの中には大量の水が入っていたらしい。


 二人の目算では遠くへ放り投げるはずだったみたいだけど、真下に水とバケツが順に落ちていく。


 そして、下の教室で窓拭きをしていた生徒に直撃。


 身を乗り出していた後頭部に大量の水がかかり、体のバランスが崩れる。


 そこにトドメとばかりにバケツが直撃した。


 バケツを受けた衝撃で、生徒は窓から落ちてしまう。


「キャー!」


 驚いた私は、思わず大声で悲鳴を上げていた。


 もう助からない! あのまま落ちたら大怪我しちゃう!


 そう思っても、何もできない。私は落下する生徒を見続けることしかできなかった。


 地面に衝突しちゃう! と思った次の瞬間、誰かが生徒を空中で横抱きにキャッチした。


 抱えられた生徒と抱えた誰かは、そのまま危なげなく着地。


 二人とも怪我は無さそうである。


「よかったぁ……」


 ほっと胸をなで下ろし、誰が助けてくれたのかと顔を確認する。


「九白さん!?」


 なんと、落下する生徒を助けたのは九白さんだった。


 彼女と助かった生徒の周りには人だかりができ、門で下校する生徒の見送りをしていた先生が駆けつける。


 九白さんと、雲上院さん、それに助けられた生徒から先生が事情説明を受けている。


 そして、人だかりを含めた全員の視線が音楽室に。


 ……だけど、その時には音楽室は無人になっていた。


 あの二人組は逃げ出したようだ。


 まあ、私が誰がやったか報告するけどね。


 ――それに、気になる事がある。


 あの二人組は、真下の生徒にバケツを投げつけるつもりじゃなかった。


 もっと遠くを狙っていた。それはつまり――


 下校中の九白さんと雲上院さんを狙っていたのではないだろうか。


 それが失敗して、九白さんが生徒を助ける結果になっちゃったみたいだけど。


 昼休みの事を根に持っていて、仕返しをするつもりだったんじゃあ……。





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