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 ◆狐坂移蔵




 狐坂移蔵は、空港で九白真緒の健在な姿を確認し、機内での襲撃が失敗に終わったことを知った。


 対象が北海道へ行くことは把握していた。


 そのため、先に北海道へ移動し、結果を待っていた。


 計画では搭乗機を墜落させる予定だった。


 しかし、そうはならなかった。


 乗客に誰一人けが人が出ていないことが、計画が完全に失敗したことを物語っている。


 ――まだだ、まだ次がある。


 狐坂に焦りはなかった。


 次が本命。


 次に差し向ける配下の能力であれば、あの女を確実に仕留められる。


 狐坂は空港を離れ、九白真緒の追跡を始める。


 とはいえ、接近すれば気づかれる。限界まで離れるため、追跡というよりは捜索に近かった。


 手始めに、高級ホテルをランクの上から順に探すつもりだった。


 が、最上位のホテルに宿泊していたため、すぐに居場所を特定できた。


 どうやら、旅行の目的はスキーのようだった。


 機内での襲撃は失敗したが、これなら不意打ちできる機会がある。


 そう思い、いつものように遠距離から監視を続ける。


 しかし、中々良い場面に遭遇しない。


 外に出る時は六人になることが多く、不意打ちには不適切だった。


 そうこうする間に旅行は三日目に突入。


 狐坂にも焦りが出てくる。


 このチャンスを活かしたいと考えていた狐坂にとっては、無為に過ぎていく時間ほど辛いものはない。


 日が経てば、いつかは東京に帰る。


 そうすれば、また厳重な警備体制に逆戻りだ。


 ここで何としても決着を付けたい。


 狐坂は祈るような気持ちで監視を続けた。


 そして、とうとう好機が訪れ始める。


 初めは、遠方にある穴場のスキー場へ移動した時だった。


 なぜか、あの女はいつも行動する女子二人の後を付け、隠れて様子を窺っていた。


 移動先は、利用客が少ないスキー場の上位コースのため、人はいない。


 その場には、いつもの女子四人だけだった。


 これは狙い目だ。


 と、思ったが、なぜか九白真緒は、もう一人の友人と茂みに隠れて出てこない。


 これでは、障害物が邪魔で攻撃できない。


 それでも、好機が訪れることを祈り、隙を窺っていた。


 近づきすぎると勘づかれるので、会話を聞き取ることができないのが、もどかしさを募らせる。


 その後、断崖の上で四人だけの状況になったが、場所が悪かった。


 超遠距離攻撃の特性に目覚めた配下を同行させていたのだが、身を隠して攻撃できる場所がなかったのだ。


 絶景と呼ぶにふさわしい景色を眺望できる場所のせいか、見晴らしがよすぎた。


 そのせいで、相手の方からも、こちらの位置が丸見えとなってしまうのだ。


 しかも、滞在が短時間で終わり、すぐに下山を始めてしまう。


 なんとも歯がゆい思いをするはめとなってしまった。


 それでも気持ちを切り替えた狐坂は、次のチャンスを待った。


 すると、大して間を置かずに、また好機が訪れる。


 なんと、人目を盗んで、雪崩の発生により封鎖されたエリアに侵入したのだ。


 封鎖エリアのため、周囲は完全に無人。


 その場には、九白真緒と連れ友人の二人だけだ。


 この状況であれば、周りを気にせず、あの女に集中できる。


 狐坂は、配下と共に狙撃に適したポイントへ移動。


 今回は、高所から相手を狙える。最大のチャンスだった。


 早速、配下に攻撃を命じる。


 しかし、吹雪で視界が確保できないために無理だという、思念が返ってくる。


 ならば待つしかない。


 九白真緒が元の場所に戻る前に降雪がやむことを願い、じっと待つ。


 すると、一瞬視界全域が白から朱色に変化した。


 吹雪のせいで何が起きたのかよく分からなかったが、一瞬炎のような何かが全域に広がったように見えた。


 詳細は分からなかったが、お陰で吹雪がやんだ。


 もしかしたら、九白真緒が霊術を使ったのか?


 奴なら、天候を変化させることも容易いはず……。


 どうやら遭難した人間を救助しているようだし、そういった可能性も考えられた。


 なんにせよ、これはついている。


 霊術の影響なら、自ら墓穴を掘ってくれたも同然の展開だ。


 狐坂は大喜びで配下に再度攻撃を命じる。


 すると、今度は攻撃可能という思念が返ってきた。


 狐坂は、やれ、と短く命じた。


 それと同時に、配下が雪を固めて作った氷柱を対象へ向けて射出。


 氷柱は、九白真緒の側頭部に命中。頭が揺れる瞬間を目撃した。


「やった、命中したぞ!」


 あれは確実に致命傷だ。


 と思ったが、様子がおかしい。いつの間にか対象が全身真っ黒になっている。


 しかも、頭を揺らしたのに問題なく動いていた。


 そして、周囲に生える木を確認している。


 その頃になって、一緒に行動していた人間が退避したこと、倒れていた人間に防御霊術が施されていることに気づく。


 あれらは、こちらの攻撃に気づいての行動だ。


 しかし、逆を言えば、防御策を取らないと負傷するという意味でもある。


 未だ位置的優位はそのまま。これなら、まだ攻撃できる。


「もう一度撃て」


 狐坂がそう命じた瞬間、配下の頭部が弾け飛んだ。


 ――反撃だ。


 一瞬の間に、何発もの霊気が叩き込まれたのだ。


 まさか、この位置で攻撃を受けるとは……。


「く、ここまでか……」


 狐坂は撤退を決断。


 すぐさまその場から移動した。



 ◆九白真緒



 ――撃たれた。


 遠距離からの狙撃だ。


 相手が人間であれば、狙撃の成否に関わらず、射撃後すぐに移動している。


 それはポイントが特定されるためだ。


 しかし、今回の相手は妖怪。


 妖怪であれば、そこまで考えない。


 むしろ当たったことに喜んで、二発目を撃ってくるかもしれない。


 私は狙撃を受けた状況から、ポイントを予測していく。


 現在、レイちゃんが雪雲を払ってくれたおかげで周囲は無風。


 となると、弾の軌道は素直なコースだろう。


 そう判断し、身体強化で一気に距離を詰めていく。


 私は、ある程度正確に射撃できる距離まで接近後、フォーゲートと射撃訓練で慣らした霊気放出を行った。


 相手を目視で確認できないが、何となく殺気と視線を感じる方へ霊気を連射した。


 すると、勘ではあるが、当てたという感じがした。


「ん、手応えあり」


 私は射線上を進み、狙撃場所を発見する。


 地面を見れば、その場に妖怪が居たことを裏付けるように、凶石が転がっていた。


 どうやら、うまく仕留められたようだ。


「でも、足跡が二種類ある……」


 一つは四足歩行のもの。もう一つは二足歩行のもの。


 片方は犬の足跡のようであり、もう片方は革靴の裏側のようであった。


 それぞれ足のサイズから逆算すると、四足タイプは超大型犬サイズ、二足タイプは大人位の身長の持ち主の様だ。


 どちらの足型もこの場で途絶えており、逃げた痕跡がない。


 だが、残された凶石はひとつ。どちらか片方が、何らかの手段を用いて離脱したのだろう。


 私はすぐさま不意打ちを想定し、警戒態勢を取るも、追撃はなし。


 どうやら生き残った個体は、逃げることを選んだようだ。


「まあ、今の北海道は討伐が盛んだし、他の霊術師が見つけて倒しちゃうかもね」


 現在の北海道は、妖怪と霊術師の数が逆転していた。


 本州から討伐に来る人数が増え、妖怪の激減に拍車をかけているのだ。


 そんな今の状態では、隠れて生き延びることさえ難しい。


 できれば、探し出して倒したいところだが、そうもいかない。


 吹雪を抑えたのは、レイちゃんの霊術による一時的なもの。


 いつ降雪が再開してもおかしくないのだ。


 今は日高さんの方を優先すべきだろう。




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