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 ――次に発生する危険イベントは雪山遭難だ。


 そのキーパーソンとなる人物が、海老名理沙である。


 マンガでの彼女は、かなり特異なキャラクターだ。


 名前を持つ登場人物で、明確な殺意を持って行動するのは海老名理沙だけ。


 非常に危険で異質な存在なのだ。


 彼女は、ヒロインを崖から突き落とす。


 事故や偶然ではなく、明確な意思を持って。


 過失ではなく、完全な故意。


 悪役令嬢ですら、そこまではしなかった。


 今のところ、現実の海老名理沙がどのような行動に出るかは予測できない。


 だが、ナナちゃんの監視を強化しておくのはマストだ。


 そして、日高さんの動向も定期的にチェックしておきたい。


 私たちが泊まるホテルと、日高さんが泊まるホテルは別になる。


 そのため、日高さんの身に何かあっても、すぐに現場へ赴くことはできない。


 とはいえ、彼女の側には、海老名理沙のような立ち位置の人物が存在しない。


 もしかしたら、瀬荷城宝子が乱入してくるのかと思ったが、東京から出てこなかった。


 そのため、崖から突き落とすような人物が存在しない。


 そういうこともあって、今回の警備と監視はナナちゃんを主軸に行うつもりだ。


 このままいけば、イベントはナナちゃんの方で発生し、その原因は海老名理沙となると予想した。


 というわけで、ホテル到着後。


 アキラ君は智仁君と一緒にいることが多かった。


 ナナちゃんといると、智仁君が一人になっちゃうからね。


 智仁君には婚約者がいるが、今回は不参加。


 というか、こういったイベントには顔を出さない。


 マンガでも、ほとんど登場しないので、これから先のイベントも参加することはないと思う。


 そのことについて、アキラ君が「婚約者を誘っても良かったんだぞ」と、智仁君に言っているのを見かけた。


 すると、智仁君がじっとりとした目で私を見ながら「彼女はこういう賑やかな雰囲気は苦手だから来ないと思うよ」と返していた。


 ――って、なんでこっちを見ながら言う。私が何かしたわけでもないのに……。


 とまあ、そんなわけでアキラ君と智仁君が二人でいる状態が固定される。


 そうなると、海老名理沙も無理に割って入ろうとはしない。


 その結果、女子四人で行動する感じになった。


 今のところ、海老名理沙は表面上は非常にフレンドリー。


 特にナナちゃんとよく話す。


 私とレイちゃんは、少し距離を置いて様子を見るようにした。


 食事やスキーに行く時は六人で行動し、それ以外は男女に分かれての行動となった。


 スキーに関しては、全員うまかったので同じコースを回ることが出来た。


 そのため、分断は発生しなかった。


 そんな感じで二日が過ぎ、三日目に突入した際にそれは起きた。


 アキラ君と智仁君に仕事上の接待が発生したのだ。


 そして、レイちゃんにもお呼びがかかった。


 なんでも、北海道旅行ブームのせいで、お付き合いのある業界人が来ているらしい。


 皆の親が、その人たちと会食しているから、挨拶だけでも来て欲しいという要請がきたのだ。


 同日、同時に三人離脱。何か作為的なものを感じてしまう。


 と、ここで私にも急な連絡が入った。


 霊術師協会から、以前未踏破エリアの依頼を行った際に忘れ物があったので、取りに来てほしいという。


 覚えがなかったので忘れ物の詳細を聞くも、来たら話すの一点張り。


 なんとも怪しい話である。しょうがないので、取りに行くと話を付ける。


 結果、私が協会に行くのと同じタイミングで、アキラ君、智仁君、レイちゃんの三人も、それぞれの会食に向かうこととなった。


 残されたのは、ナナちゃんと海老名理沙となる。



 ◆兎与田七海



 皆に急用ができて、一旦ホテルを離れていった。


 残されたのは七海と海老名理沙の二人。


 海老名理沙は、待っている間もスキーを楽しめばいいと陽気に言った。


 確かにその通りである。


 というわけで、海老名理沙が現地の人から聞いたという、お勧めコースに滑りに行くことになった。


 そこは、非常に見晴らしが良いらしい。


 ただ、移動に時間がかかって滑る回数が減るため、六人でいる時は行きたいと言い出せなかったとのこと。


 それなら丁度いいかと、このタイミングで向かうこととなった。


 実際、到着したコースは素晴らしいものだった。


 リフトで頂上まで移動すると、まさに絶景。


 連なる山々と雪のコントラストが素晴らしい。


 七海が景色に見惚れていると、海老名理沙が話しかけてきた。


「どう、絶景でしょ? 現地の人に教えてもらったの。画像を見せてもらった時に、行ってみたいなと思っていたんだ」


「確かに凄いね。画像を撮って、後で皆に見せよ」


「いいね。こっちに良いスポットがあるよ」


 そう言われて、海老名理沙に連れられて撮影スポットに向かう。


 そこは断崖となっている場所だった。


 切り立った崖の側まで近づけば、素晴らしい景色を撮影することが出来そうだ。


「これは凄いね。じゃあ、ちょっと撮るね」


「どうぞ」


 七海は案内してくれた海老名理沙と位置を入れ替わった。


 が、その瞬間を狙って、海老名理沙が七海の背を押そうと手を伸ばした。


「あんた、邪魔なのよ」


 そう言って、崖に向かって突き落とそうとする。


 しかし、七海は妖怪討伐で鍛え上げた視野と気配察知で、入れ替わりの瞬間から彼女の動きを把握していた。


 そのため、突き出された腕をひらりとかわす。


 七海の回避行動に反応できなかった海老名理沙はバランスを崩し、前方へつんのめる形となった。


 何とか踏ん張ろうとしたが、地面が雪で不安定なため止まらない。


 その後は呆気なかった。


「あっ」


 海老名理沙は小さな声を上げ、断崖から落下してしまった。


 七海は持ち前の反応速度を活かし、即座に彼女の襟首を掴んで落下を止めた。


 捕まれた海老名理沙の直下に地面はなく、宙づり状態となる。


「やってくれたな、てめえ」


 こんな所から突き落とされたら霊術師の自分でも、ただでは済まない。最悪、死亡もあり得る。


 そのことが七海の怒りを加速させる。


 条件反射で海老名理沙を掴んだが、手を離すか迷うほどには苛立ちを覚えていた。


「は、はなして!」


「離していいのか? 落ちるぞ」


 動揺する海老名理沙を無視し、七海は冷たく聞き返す。


 その言葉を聞いた海老名理沙は、自分の足元を見て悲鳴を上げた。


 自分の置かれている状況を理解した結果、パニックを起こして暴れ出す。


「いや! 助けて!」


「その前に、二度とこんな真似はしないと誓え」


 七海にとって、海老名理沙の行いは看過できないものだった。


 このような危険行為は、これっきりにするべきと考え、強く言う。


 その効果はてき面だった。


「もうしない! 誓うわ! 悪気はなかったの!」


 七海が海老名理沙から言質を取っていると、背後から人が近づく気配がした。


 振り返れば、携帯端末を持った真緒と礼香が姿を現した。




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