表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/259

212

 


 ◆日高千夏



 図書館での出来事の後、綾小路君と古畑君の二人とは微妙な距離感が出来てしまった。


 どう接すればいいか分からないため、どうしてもぎこちない感じが抜けない。


 あれから心の整理はついたが、一歩踏み出せないでいた。


 折角三人で仲良くなれそうな気配があったのに告白に応えたら、そういった状態には戻れないのではないか。


 そう思うと、どうしても一歩が踏み出せなかった。


 返事はいつでもいいと言ってくれた言葉に甘えてしまっている状態だ。


 それでも、二人の事を考えるなら一刻も早く返事をするべきだ。


 そうなると、答えは決まっている。


 私は、綾小路君の事が好きだ。


 だけど、返事をすると古畑君との関係はどうなってしまうのだろう


 とはいえ、これ以上時間を掛けても何も変わらない。


 自分が誰のことが好きなのか気づいたのだから、それ以上でもそれ以下でもない。


 私は決心し、二人を呼び出した。


 一人ずつ返事をすべきか迷った。が、告白されたときは二人同時だった。


 それなら返事を返す時も、二人同時の方がいいだろうと考えたのだ。


 そして、自分は綾小路君が好きだと言う事。


 これがきっかけとなって古畑君と疎遠になることは嫌だという事。


 その二つを思い切って打ち明けた。


 そして、一番最後に、綾小路君の事は好きだけど、今は付き合うということに躊躇いがあるということも打ち明けた。


 その言葉に綾小路君が驚き、古畑君が自分との友人関係を維持したいからなのか、と尋ねてきた。


 私は首を振って応えた。


 この件に関しては、古畑君は関係ない。


 全く違う理由が原因だ。


 一つは、勉強を頑張りたいという事。


 私は、煌爛学園に特待生として入学した。だから、きっちりと勉強で結果を残したい。


 綾小路君と過ごす時間は楽しいけど、それで勉強をおろそかにしたくはないのだ。


 そして、もう一つ。


 ずっと気になっていることがあり、そのことの解決に時間を使いたいから。


 出来れば今は綾小路君と過ごすより、そちらを優先したい。


 私の揺るぎ無い雰囲気を察し、綾小路君が『気になっていること』について尋ねてくる。


 ここで私は、今まで自分の身に起きたことを打ち明けた。


 物が無くなったこと、服を破かれたこと、閉じ込められたこと、色々あった。


 私の話を聞いた綾小路君と古畑君が驚く。


 そして、相手は誰だと激高し始めた。


 二人の怒りように慌てた私は、落ち着くように言った。


 次いで、それらを行っているのは、おそらく瀬荷城さんだと告げる。


 しかし、証拠がない。糾弾すれば、逆にこちらが冤罪を捏造していると言われる可能性もある。


 いつも彼女たちは、とてもうまく立ち回っている。


 こちらがつけ入る隙を残してはいない。


 だけど、安心して欲しいと言う。


 今は、そういった行いはほとんどなくなった。


 たまに嫌なことを言われるが、それも問題ないと説明した。


 すると、二人が不思議そうな顔をする。


 だから、私は言った。雲上院派の人たちが守ってくれるのだ、と。


 それを聞き、二人は納得の表情となる。


 私が雲上院派の人たちと一緒にいることが多いことを知っていたからだ。


 それに、本題はそこではないのだ。


 私は、今まで色々なことに遭遇した。


 そして、その全てにおいて、誰かがフォローしてくれていた。


 それは雲上院派の人たちではない。


 完全に姿を消し、陰から色々と助けてくれた人がいる。


 その人は、私やいたずらを行った相手に、悟られないように行動している。


 きっと自分が標的にされないためだろう。


 瀬荷城の家は大きい。一般の生徒であれば、目を付けられるとどうなるか分からない。


 そう考えると賢明な判断だと思う。


 それでも私に起きたことを見過ごせず、動いてくれているのだ。


 ――私は、その人に会ってお礼が言いたい。


 見つけ出して今の自分はもう大丈夫だから安心して欲しいと言いたい。


 その人はきっと今も、私の事を気にかけてくれているはず。


 綾小路君の事は好きだし、一緒に居たいと思う。


 だけど今は、私を陰から支えてくれた人を探す時間を確保したい。


 と、自分の考えを語った。


 それを聞いた二人は腕組みして考え込んでしまう。


 そして、納得してくれる。そういう事なら仕方ないか、と。


 更に、二人とも私と一緒にその人を探してくれるのを手伝ってくれると言う。


 自分一人で出来ることには限界があるので、ありがたい申し出だった。


 私は、二人から差し出された手を握り、固い握手を交わす。


 古畑君は、「負けた相手が綾小路なら仕方ないな」と爽やかに苦笑しつつも、「俺だけ仲間外れにしないでくれよ」と、付け加える。


 綾小路君は「お互い好きだと分かっていて、何もないのは辛い。たまにはデートしてくれよな」と、冗談めかして言った。


 私は、こちらを気遣った二人の言葉に感謝し、「うん」と頷いた。


「しかし、そいつは一体誰なんだろうな」


 と、綾小路君が腕組みした状態で呟く。


「詳細は分からんが、男じゃないか。誰にも気づかれないように動くとなると、かなり体力を使いそうだし……」


 古畑君が、私から聞いた話を元に推理する。


「その……、女子にしか入れない場所で対応してくれたり、女子生徒用の体操服を交換してくれたから、男子の可能性は低いと思う」


 体操服は男女でデザインが違う。


 そのため、男子では簡単に用意できない。


 それに加え、男子では女子トイレに入るのは難しい。


 他の事は男子でもできるかもしれないが、上記の二つだけは女子でないと無理だろう。


 つまり、私を助けてくれた人は女性。


 そして、その時々の対応の早さから見て、その人の教室が近い、もしくは同じクラスと思われる。


 と、私の推論を二人に話した。


「分かった。同級生の女子に注意していればいいんだな」


「俺も気にしておくよ。何か分かったら報告する」


「二人とも、ありがとう」


 私は、綾小路君と古畑君の言葉に感謝した。


 これで何か手がかりが見つかればいいのだけど……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ