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さて、次は妖怪退治だ。
というわけで、そのまま妖怪が出現するエリアを目指す。
しかし、ここで探査霊体の方で問題が発生した。
私が所属する班は、レイちゃん、ナナちゃん、私、そしてもう一人の生徒の四人構成だ。
問題とは、私たちと一緒の班になった生徒、昭原百合恵さんである。
彼女は、私たち三人組に急遽、数合わせで参加してもらった。
そのため、一人だけ浮いた存在となってしまった。
本人は、レイちゃんと一緒の班になれたことを喜んでいたが、緊張していたのも事実。
というわけで、移動中は私から積極的に話しかけ、なるべく孤立させないよう努めた。
結果、昭原さんの性格の良さも相まって、私たちは非常に仲良くなった。
だけど、そのせいで会話が途切れなくなってしまったのだ。
こうやって仲良くしてもらえるのは私にとっても嬉しいし、ありがたい話ではあるのだが、タイミングが悪い。
折角話しかけてくれているのに、無視したり、気のない返事を返すわけにもいかない。
仕方ないので、無線を常時オンにしておく。
正直、最低限やり過ごす方法として無線機を仕込んだので、ずっと会話をするのには向いていない。
環境音やノイズが混じってしまうためだ。
音の異常から怪しまれなければいいけど……。
でも、返事をしなければしないで、怪しまれてしまう。なんというジレンマか。
なんとか騙し騙し会話を続けていたが、とうとう昭原さんに私の声がおかしいと気づかれてしまう。
しかし、そこはまだ想定の範囲内。
探査霊体の口が動かないのを隠すためにマスクをしていたので、喉の調子が悪いと誤魔化した。
が、あまり心配され過ぎて、先生を呼ばれても困る。
というわけで、ちょっと声がおかしいだけで、元気ですよとアピールしておく。
無線越しにそんな会話をしているうちに、私の方は妖怪が出そうなポイントに到着。
周囲の気配を探っていると、割りとあっさり妖怪の発見に成功する。
向こうも、こちらに気づいて吠えてきたが、霊気放出でさくっと処理してしまう。
よし、中々好調な出だしだ。
これで後は、拉致グループを拘束すれば帰れる。
そう思っていたら、追加で妖怪が襲い掛かってきた。
しかも、一匹ではなく複数。
私はそんな群れを前に、周囲に誰もいない状態にしておいてよかったと心の底からほっとする。
これなら何の気兼ねもなく、思い切りやれる。
妖怪たちが、けたたましい雄叫びを上げて私に襲い掛かってくる。
それにしても……、マンガで描写されていた妖怪の数は一匹だけだった。
まさか、こんなに大量に襲い掛かってくるとは予想外だ。
とはいえ、数が多いだけ。この程度の妖怪であれば、手こずることはない。
私は、襲い来る妖怪の攻撃をかわしつつ、一匹ずつ確実に倒していく。
あまり派手に暴れると、周囲の物を壊してしまう。
大きい音を立てれば、教師陣が調べに来る可能性もある。
そのため、慎重な行動を心掛けた。
確実に妖怪の数を減らしていく中、背後に気配を感じて回避行動を取る。
振り向きながら、襲い掛かってきた個体を確認しようとするも、いない。
いや、見えないのだ。
だけど……。
「匂いで分かったよ。獣臭いからバレバレなんだよね」
匂いが隠せていなかったので、素早く動く個体と勘違いせずに済んだ。
私は、透明な妖怪の移動先を匂いから予測し、霊気を放つ。
すると、カメレオンと猿を足して二で割ったような見た目の妖怪が、胴体に穴を開けた状態で姿を現し、消滅していった。
警戒態勢を崩さずに気配を探るも、それ以降不意打ちは来ない。
どうやら、透明になれる個体は一匹だけだった様だ。
私は一気に攻勢を強め、襲い掛かってきた妖怪の群れを全滅させた。
しばらく待って、増援がこないことを確認し一息つく。
――まさか姿を消す妖怪が現れるとは。
あんな妖怪、マンガでは登場しなかった。
もし、日高さんが襲われていたらと考えると、ぞっとする展開である。
とにかく、これで妖怪に関しては、うまく処理できた。
次は拉致グループだ。
多分、このまま進んで宿泊施設の近くまで行けば遭遇できるだろう。
そう思って歩を進めると、おあつらえ向きの面構えをした四人組に遭遇する。
「おいおい、あれって煌爛学園のジャージだよな。しかも一人だ」
「ついてるぜ。これなら、わざわざ施設に侵入しなくて済みそうだ」
離れた位置で会話していたが、周囲が静かなせいで声が良く聞こえた。
「おい、動くな! お前を攫って身代金をがっぽりいただくぜ! ゲヒャヒャ」
「動くなつったただろうが。てめえ、どうやら痛い目に遭いたいようだな」
四人はナイフをちらつかせながら、抵抗するなと言って来る。
これは、話し合いでどうこうなる相手ではないだろう。
私は四人組に無言で接近する。
「おい、とまれ!」
と、一人が叫ぶも、当然無視。
接触するまで数歩の所までは歩き、そこから一気に加速。
距離を詰め、一番近い男に腹パンして意識を刈り取る。
そのまま、その場で回転。
隣の男に回し蹴りを頭部に叩き込む。
そして、フォロースルー動作を活かして、裏拳をもう一人の後頭部に当てた。
最後に、ナイフを持った男の腕を掴んで背負い投げ。
男を地面に叩きつける瞬間に自重も乗せる形で衝撃をプラス。
四人を手早く昏倒させた。
うん、妖怪より癖がなくて処理しやすかった。
私は一人納得しつつ、四人をロープで縛りあげていく。
拘束を終えると信号弾を撃ち、待機している家の人間に連絡。
後処理を任せた。
初めから全て家の人間に任せれば楽だが、イベントがどうなるかを見届けるには自分自身で処理するしかないんだよね。
「よし、戻ろう」
全てを終えた私は、全速で正規ルートへ戻った。
時計を確認すると、皆と別れてから三〇分ほど。
これなら、向こうでトラブルも起きていないだろう。
そう思って、意気揚々とレイちゃんとナナちゃんに戻ったことを報告したら、滅茶苦茶詰められた。
…………なぜだ、解せぬ。
妖怪だけでなく、拉致グループまで捕まえたことを報告し、安全が確保されたことを話しても、苦い顔をされるだけ。
更には、二度と探査霊体を身代わりにして行動するなと言われてしまう。
うまくいったのに、なんで?




