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そして迎えた日曜日。
本日は雲上院礼香と水族館へ行く日だ。
当初の予定では、彼女とは適度な距離を保つはずだったのに、どうしてこうなった……。
まあ、あんな状況見てられないし、選んだ選択に悔いはない。
あの日の帰宅後、学校で知り合った子と水族館に行きたいと父に説明したら、ことのほか喜ばれた。
友達になれるといいね、とも言われてしまった。
私が一人でいることを密かに心配してくれていたのだろう。
あの雲上院礼香と友人関係になる……、かぁ。
マンガのままであれば考えられない話だが、学校で実際に会った彼女となら……。
うまくコミュニケーションが取れれば、そんな未来もあるのかもしれない。
さて、今日はどんな一日になるのやら。
彼女との待ち合わせ場所には、集合十分前に到着。
それから数秒後、黒塗りの高級車が三台連なって走ってきて、目の前で停車した。
真ん中の車から、黒服サングラスの女性が降車し、後部座席の扉を開く。
「お待たせしましたわ。それでは参りましょうか」
と、ご登場したのは、雲上院礼香だった。が、降りて来ない。
「どうぞ」
黒服が乗車せよ、とサインを送ってくる。
「き、今日はお世話になります」
私は頭を下げて、乗車。く、子供同士が遊ぶって感じじゃないよ。
大統領の移動か何かなの? 滅茶苦茶堅苦しくて、緊張するわ!
車中では雲上院礼香がワクワク全開であった。
「今日は何から見に行きましょうか! 事前に本を読んだ感じですと、わたくし、アザラシが気になりますわ」
「それじゃあ、アザラシから行きますか? それとも楽しみは最後に取っておきますか?」
「ペンギンのお散歩は時間が決まっているのですよね。間に合うでしょうか」
楽しみで仕方がないのか、雲上院礼香は私の相づちを気にせず、言いたい事をドンドン話す。
「時間を確認して移動しましょう。見られるように調節すれば問題ないですよ」
「わたくし、こうやって外にお出かけするのは、とても久しぶりですの」
少し落ち着いた彼女は、窓から車外を眺めながら呟いた。
「お稽古では外に出ないんですか?」
「ええ。先生が家にいらっしゃいますの」
「そうなんですね」
こうやって会話していると、高圧的な感じはしないなぁ。
さっきから、私の方を妙に凝視したり、チラチラ視線をそらしたりして、忙しない。
何か気になる事でもあるのだろうか?
などと考えているうちに水族館に到着した。
「えっと……、これは……一体」
車を降り、いざ入場、というところで我慢できずに声が出た。
私と雲上院礼香の周りを、黒服サングラスの女性が四人で囲っているのだ。
更に、水族館の至る所に黒服サングラスの人がいる。水族館の職員より多いよ……。
全員、インカムを装着し、安全確認を行っていた。
いくらなんでも厳重すぎるよ!
利用者や通行人の視線が痛い。みんなこっちを見てる……。
そんな中、黒服さんから説明が入る。
「予定日がもう少し離れていれば、水族館を貸し切りにすることが出来たのですが、不可能だった為、警備の数を増やしました。ご了承下さい」
水族館って貸し切りにできるの!?
それっていくらなの!?
どっちにしろ厳重すぎるでしょ!
「お騒がせして申し訳ありませんの。お父様が、わたくしのことを凄く心配されていて、このような形になってしまったのですわ」
「そ、そうなんですね」
「お父様も同行すると言って聞かなかったのですが、さすがにそれはお断りしたんですのよ」
「へ、へぇ〜……」
これは……、マンガと同じで誘拐された過去があると見て間違い無さそうだ。
そのせいで過剰な警備になってしまうほど心配している、と推測する。
「そ、それじゃあ、行きましょうか」
「ええ。楽しみですわ」
ひとまず仕切りなおして、中へ入る。入場手続きは黒服さん達がやってくれていた。
黒服さんに誘導され、黒服さん達が作る通路を進む。
大統領の視察か何かかな?
が、入場してすぐに雲上院礼香が立ち止まった。
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