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帰国したら五年生になっていた。
いや、ちょくちょくは帰っていたよ? けど、気分としてはそんな感じだ。
そして、こんな時に限って出国に手間取り、春休み明けには帰れず、今は五月。
桜も散って、新学期という雰囲気は薄れてきている。
クラス替えも終わっているはずだが、自分が何組なのかも知らない。
「全然見慣れないなあ」
一体、何日間この学校に通ったのだろうか。
制服なんて新品同然だ。
成長に合わせて新調しているから、非常にもったいない。
今年は何日登校するんだろうね、ウフフ。などと考えながら職員室へと向かう。
五年生になったというのに、学校の地理に疎い。
詳しいのは、職員室への進路のみという感じ。
「やあ、久しぶりだね。今年は通学できそうかい?」
今年の担任になった先生が、フランクに話しかけてきた。
「どうなんでしょう。母は結構満足していたみたいなので、今年はそれなりに通えるかもしれないです」
母曰く、「後は体重と身長が足りないので無理」とのこと。
しばらく新しいことは覚えず、今までの復習をメインにしていくべきか悩んでいるという話だった。
復習だけなら、通学しながらでもできそうではあるんだよね。
「同じクラスに、君と同じ様に久しぶりに登校し始めた子がいるんだ。通学していない期間も君と同じ位だし、話があって友達になれるかもしれないよ」
と、先生が言う。
私があまりに登校しないから、友達を作りづらいと思って、心配してくれているのだろうか。
気持ちは嬉しいけど、どうだろう。
正直、小学校時に友達は必要ないと思っている。
いや、クール系中二病を発症して、孤独が格好良いとか思っているわけではないよ?
多分、会話が合わない。雑談とか、逆に難易度が跳ね上がりそうだ。
五年生となった今なら、多少増しかもしれないけど……。
低学年時にほとんど通学しなかったのは、こちらにとってはラッキーだった。
母はそのことについてちょっと心配して、同年代の子供と会う機会を何回か作ってくれた。
が、どれもあまり良い思い出ではない。
だからクラスに行っても、その子と話すこともないだろう。
基本、ぼっちを貫き、ひたすら霊気圧縮に努める毎日となるに違いない。
都会の小学校での友人関係が、成人した後も続くことなんてレア中のレア。
中、高と学校が変わるにつれて、小学校時の友人との接触も減っていくのが自然な流れなのだ。
交友関係を考え始めるのは、高校以降でも遅くはないくらいだろう。
そんな事を考えながら、先生に案内されて教室に入る。
クラスでの自己紹介を終え、指定された席につく。
……なんだろう。教室に入った時から異様な雰囲気だ。
クラスメイト全員が私を見ている気がする。
う〜ん、さすがに自意識過剰すぎるかな……。
こんな時は霊気を圧縮圧縮。ふぅ、落ち着くなぁ。
その後も、授業を受けるふりを維持しつつ、霊気を圧縮し霊核を拡張していく。
ああ、霊核が育つ感覚が堪らない!
どんなところだろうが、どんな一日だろうが、これをやっているだけで毎日が充実したものに激変してしまう。最高だよ。
くう、出来れば今すぐ帰宅して、本格的な拡張作業に移行したいくらいだ。
そんなわけで、休み時間もひたすら霊気圧縮に勤しんだ。
案の定、誰も話しかけてこない。
普通の生徒は、五年生に至るまでに友人や知り合いを見つけ、それぞれグループを作って一緒に行動している。
しかも今は五月。クラス替えで知り合いがいなくなった子も、新しい友達を見つけてグループ形成は終了しているはずだ。
わざわざ私に構ってくる子はいないのだ。
「ねえねえ、九白さん」
と思ったら、話しかけられた。後ろの席の子だ。名前は……、知らないな。
「何?」
「九白さんって、そんな感じなんだね。有名人の後ろの席になれてラッキーかも」
「え、私、全然学校に通ってないのに、なんで有名なの?」
むしろ知名度ゼロなんじゃあ。
「通わなさ過ぎて有名になってるんだよ? 去年なんて、全然来てなかったでしょ。病気とかじゃないのに、あんなに長期間休むなんて何してるんだろうって、よく話題になってたよ」
「へ、へぇ……」
「でさ、九白さんは学校に来ないで何してたの? 番銅君みたいに歌舞伎とか? それとも阿部さんみたいに、映画の撮影とかかな?」
「う、う〜ん、どっちも違うかな」
去年は海外で銃を撃ちまくってた、とは言えないわけで。
かといって要人警護の訓練、と言えるかといえば、言えない。
教わったことのどれもが子供向けに調整されている為、全て中途半端なんだよなぁ。
答えるのが難しい質問だし、正直に答えていいかも分からないよ。
「怪我とか病気とかが理由じゃないんだよね? そういうことなら、あんまり聞いちゃ悪いし。でも、先生も特に何も言ってなかったから、大丈夫かなと思って。あっ…………」
まだ追及しようとしてきた後ろの子が急に黙った。
何だろうと思ったら、別の子が近づいて来ていたためであった。
どこか高圧的な雰囲気を漂わせる、金髪に縦ロールが眩しい女の子だ。
その子を見ていると、妙なムズムズ感がある。
いろんな髪色を見てきたけど、縦ロールを見るのは初めてだからかな?
「そこの貴方! この私、雲上院礼香に付き従うことを許しますわ。ありがたく思いなさい!」
ビシッ、と指差され、なんかとんでもないこと言われた。
やっぱりお金持ちが通う学校だし、こういう子もいるんだねぇ。
言ってることはとんでもないけど、見た目が小学生なので可愛らしく感じるマジック。
でも、ファーストコンタクトのセリフがこんなのじゃあ、どう考えても性格が悪いよね。
「いえ、お断りします」
割と速攻で断った。つい、条件反射で言っちゃったよ。
怒ったりしないかな。
「……そ、そう。気が変わったら、いつでも声をかけてきなさい!」
あっさり引き下がって、去っていく女の子。
なんか去りながら、チラチラとこっちを見てくる。挙動不審である。
あれ? この子、どこかで見たことがあるような、ないような………………。
じっと見ていると、ひっかかりを覚えた。顔に見覚えがあるのだ。
薄っすらと記憶にある。でも、私はこの学校にほとんど通っていない。
面と向かって会うのは初めてな気がするし、どこで見たのだろう?
――それに名前にも聞き覚えがある。
雲上院礼香……一体どこで聞いた名前だろう……。
「あっ! あああっ!」
ピンときた。その拍子に、つい大声が出てしまう。
そして、クラス中の視線が私に集まる。雲上院さんもビクッとしていたよ。
そんなことよりマズイ。
マズイよ!
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