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◆九白真緒
霊気圧縮の悩みが改善されたのは、いつの日だったか……。
あれから霊核がさらに大きく育った。
霊気を無駄なく運搬し、圧縮工程が簡略化できたのだから、当然の結果だ。
というか、以前と比べると霊核の拡張スピードが桁違いに上がってしまった。
こうなってくると、また同じ問題に直面してしまう。
いわゆる、運搬量と受容量の問題が大きくなってきたのだ。
最早、どうしようもないレベルにまで到達し、大量のロスが発生してしまっている。
非常に勿体無い状況になっていた。
まあ、それだけ霊核が大きくなったのは喜ばしいことだけどね。
とにかく、インナー程度の大きさの霊装では霊気が送られてくる量が少なすぎる。
もっとドーンと一気に受け取れるようにしたい。
というわけで、服を作ってみた。ジャージである。
家の中ではインナーでパンパンに膨れあった体に、全てが金色という成金趣味全開のジャージを重ね着した。
両親からは非常に評判が悪かったが、やむを得ない。
しかし、焼け石に水だった……。
全然大きさが足りない。さて、どうしたものか……。
「普通の霊術師は武器にしてるんだっけ」
ということを思い出し、大剣を作製。
金のジャージを上下着用し、背には黄金の大剣背負ってみる。
頭部もフードを被って、オマケで金のマスクに金のスリッポンを着用。
鏡で全身を確認。そこには金色の球体っぽい何かが佇んでいた。
……うん、不審者以外の何者でもないな。
そもそも剣程度の大きさでは、あまり意味が無い。
剣として使うわけでもないし、形状にも意味が無い。
「服でどうこうできるレベルじゃなくなってきたんだよね」
こうなったら、巨大な鎧でも着るしかないか……。
などと考えていたら、突然閃いた。
そうなのだ、別に全て身につける必要は無いのだ。
要は、霊装のどこかが体に触れていればいいのである。
私は全ての霊装を一旦片付けた。
その後改めて、巨大な立方体の霊装を作り出した。
そしてその上に座る。
――おお、これはいい感じ! すごい量の霊気が送られてくるよ。
圧縮が終了した霊気も、立方体から順調に排出されている。
これならいくらでも大きくできるし、いいね。
と思ったが、すぐに問題が発覚。立方体の上から動けないのだ。
何か用事があるたびに、霊気の運搬が中断されてしまう。
これでは駄目だ。というわけでロープ型の霊装を作製。立方体と私をロープで繋ぐ。
これで、屋内ならどこでも移動可能だ。
腰に縄をつけた状態だからちょっと不便だし、親やお手伝いさんの視線が痛いけど……。
それからは、自宅ではロープに繋がれた生活になった
部屋には極大の霊装。インナーを何枚も重ね着し、上下は金のジャージ。腰には縄。
我ながら、わけの分からない格好である。
しかし、効果は絶大。霊気の圧縮が凄まじい速度ではかどる。
霊気の塊がゴロンと出てくる様は圧巻だ。
素晴らしい! この感じでドンドン拡張していこう。
霊核が育てば、部屋に置く立方体の数を増やす形で対応し、際限なく霊気を圧縮していく。
この規模で圧縮できるのは在宅時のみなので、とにかく家に居る時間を増やした。
そしてこの段階で、あることを発明する。
それは、霊装を二つにわけ、半分を霊核から霊気を呼ぶ門に使い、残りの半分を霊気を溜めこんで圧縮する容器に使うという方法だ。
そろそろ霊気を体だけで溜め込むのは難しいと感じて、色々試していたら発見した。
本来の霊術師は、霊気を呼び出す門と霊気を撃ち出す用に二つの霊装を使うと兎与田先生が話していたのを思いだしたら、閃いたのだ。二つの役割を並列で利用できるでは、と。
宇宙の中にある霊核は霊気を発している。そのせいで、霊核内で霊気を圧縮できなかった。
だけど、こちらに持ってきて霊装にすると、霊気を発しない。霊核から霊気を受け取り、体へ送っている。
つまりは器の状態。そう思い当たった時、試しに霊装内で霊気を圧縮してみたら成功した。
それからは、霊核と体をつなぐ門としての利用と、霊気を溜めこむための器という感じで、霊装のまとまりを二分割にして運用を開始した。
今までは、作り出せる塊の最大サイズが霊気を溜めこむ自身の体のサイズの影響を受けていたが、その問題も解決してしまった。
結果、大きい霊装から大きい霊気の塊がゴロンと出るという、フィーバー状態に移行したのだ。
ここで、兎与田先生から教わった霊核を大きくする方法は使用を中断した。
ここまでくると、効率が悪いんだよね。
無駄に集中力を使うから、やらない方がいいと判断した。
調子に乗った私は、霊気の塊の大量生産に乗り出した。
どれだけ早く、大量に作りだせるかを煮詰めていったのである。
排出される塊の側にマット状にした霊装を敷くことで吸収作業も簡略化。
霊気の塊が排出されてマットに触れると、自動的に霊装化され、そのまま取り込んだ塊部分だけを霊核に送り返すという技を編み出した。
これで霊気圧縮セットを展開している間は、その場から一切動くことなく作業が進む環境を構築できた。
そこから、別作業をしながら全て自動で行えるようになるまで、さほど時間も掛からなかった。
調子に乗った私は、部屋に展開する霊装の数をドンドン増加させていった。
多ければ多いほど、大きければ大きいほど、塊を生み出す速度と大きさが上昇する。
今まで直面していた障害が全て取り払われたのだ。
つい、限界まで挑戦したくなるのも仕方ないよね。
だけど、そのせいで床が抜けそうになってしまった……。
フローリングが、きしんで割れそうになる音なんて初めて聞いたよ。危ない危ない。
この一件で、父の目が厳しくなった。仕方が無いので、霊核の更なる圧縮を試みる。
圧縮に成功すれば、霊装のサイズも小さく調整できるからね。
結果、なんとかなった。以前とは比べ物にならないくらい巨大になった霊核を圧縮し、コンパクトに……、はならなかった。まあ、半分くらいの大きさにはなったと思う。
ひたすら頑張ったけど、これ以上はどうしようもない。
多分、これ以上の圧縮は不可能だろう。
そして、圧縮しすぎたせいか、霊核の色が真っ黒になってしまった。取り出した霊装も真っ黒である。
まあ、色なんてどうでもいい。些末なことだ。
それよりも、これで霊装を小さくしつつも、送られてくる霊気の量を増やすことができる。
試してみると、送られてくる霊気は、初手からカチカチの状態。
完全なる固形。霊核と変わりない。つまり圧縮の工程が必要なくなってしまった……。
湯気のようだと表現していたころが懐かしいよ。
とにかく、これでしばらくはしのげる。一旦は問題解決だ。
だけど、この部屋では耐えられなくなるのも時間の問題か……。
どこか、霊気圧縮に適した場所を探す必要がある
家から近くて、広くて、目立たない。そんな都合のいい場所、どこかにないかな。
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