第4話
「ふむ、盗ったのか。だが、彼らもそういってどこからか盗って来たのだろう。これは正当な持ち主に返すべきだ」
くるくるとパーソライトを手の中で回して、その純度を確かめる。超高純度と呼ばれる、ファイブナインと呼ばれる99.999パーセントの純度のレベルに達していることは、見た目からして間違いがないだろう。一方でこれがどのような経路でできたかによっては、アインオウルと目の前にいるペクーニアも警察機構へ出頭させる必要がある。そんなことをハイデは考えていた。
「そうだな、ペクーニア」
物思いにふけっているようにみえ、しかしながら周辺のものの中で何か高値で売れそうなものがないかと物色しているペクーニアへ、ハイデは声をかける。
「な、なんだよ。別に何か盗っていこうとか思ってないぞ」
「盗って行けるものならやってみてほしいものなのだが。そうではなくて、これを正当なる持ち主へと返す手伝いをしてほしい」
「……なんでだよ」
むすっとした憮然とした表情となった。これも当然の反応だろう。当然ちゃんとした持ち主に返すとなれば、それを盗んだ人物は罰せられてしかるべきだ。そう考えたためだ。だがそこにハイデは条件を付けた。
「君がここにやってきたあの護符魔術は、ランダム性をみせていながらその実、ここに来るようにと仕向けられていた。世界で数カ所の地点があらかじめインストールされていて、そのうちの1カ所がここだった。となれば、私は、私の職務においてその人物を探す必要がある」
「職務って、もしかして警察かよ」
「ま、似たようなものだ。昔は、ザ・ブレイバーズという組織にいた。第二次大戦のころの話だから、すでに80年近く昔のことだがね」
「はっ!?」
80年というペクーニアは思わず驚いた。見た目は40か、もしかしなくても50にいっていないと思っていたからだ。だがそれが本当だとすれば、すでに100近くになっていなければならない。立つのもやっとな、よぼよぼの爺さんでなければならない。
「おや、君は私のような人を見たことがなかったようだね。君の生まれ故郷はそこまで長生きができなかったようだ。もっとも、正確にいえば、私は魔術師の家系に生まれ、魔術師として育った。多少長命であることは自認している。おかげで、数多くの仲間を送る羽目となったが、それも私に課された義務なのだよ」
いいながらもどうやら目的の人物を見つけられたようだ。だが、少し問題があるらしい。
「……なるほどね、このパーソライトは、愛の売るが奪ったということは間違いがないようだが、盗んだのはアマーダン領内らしい」
つまりは、旅支度が必要だな、とハイデは立ち上がりながらつぶやいた。それから右手左手を交互に指パッチンで鳴らしていると、ドアにたどり着くまでにはすっかりと1週間ぐらいは優に過ごせそうな準備が整った。
「さて、君も来てもらうよ。それが私から提示する、私から訴えないための条件だ」
ペクーニアには、どうやら選択肢は内容だった。歩いてドアへとより、ハイデの横に立つ。そして、ハイデがペクーニアの頭の上で右手を3回、時計回りに回すと、みるみるまに旅装が整った。